《エリート検事・性的暴行事件》「検事の仕事を奪われ…侮辱された」「ハニートラップ説まで流された」被害女性が検事退職、元同僚の副検事を告発

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大阪地検検事正だった北川健太郎被告(66)が部下の女性検事への準強制性交罪に問われた事件で、2024年に大阪高検が内偵捜査を始めた直後に、同被告の元秘書の副検事の女性が捜査情報を北川被告側に漏えいしていたことが分かった。

〈画像〉「ハニートラップ説を拡散された」と会見で退職に追い込まれた無念を話すひかりさん

 

さらに副検事は被害女性の情報を複数の検察幹部に拡散。これらを確認した検察庁は副検事を懲戒処分にしたが、犯人隠避や名誉毀損で起訴しなかった。これを被害女性は不服として検察審査会に申し立てをしている。

「なぜ被害者である私が仕事を奪われ、職場を追われなければならないのか」

被害女性のひかりさんは第三者委員会を設置し事件の全体像を調べるよう求めたが、検察庁は拒み、ひかりさんは4月に辞表を提出、8月末に退職手続きが完了した。

9月1日に都内で記者会見したひかりさんは冒頭から嗚咽し「8月末で検事バッジも返却し、検事の仕事を失いました。言葉にできないほど悔しいです。なぜ被害者である私が仕事を奪われ、職場を追われなければならないのか」と無念を吐露した。

起訴事実では北川被告は検事正だった2018年9月、ひかりさんや今回問題のB副検事ら計6人で酒を飲んだ後、泥酔したひかりさんを官舎へ連れ込み、性暴行した。

ひかりさんの説明では、その直後からひかりさんは「上級庁へ申告する」と抗議した。北川被告はその後「組織、職員のために口外するな。口外したら自死する」との趣旨の直筆の手紙を返し、これによってひかりさんは一度は被害申告をあきらめたという。

しかし被害の記憶から心的外傷後ストレス障害(PTSD)となったひかりさんは体調を崩して休職する。北川被告がすでに退官し弁護士になっていた2024年3月になって被害を検察庁に訴えた。訴えを受けた大阪高検は捜査の末、同年6月25日に北川被告を逮捕。起訴された被告は同年10月の第1回公判で起訴事実を認め謝罪している。

だが、北川被告の弁護士は同年12月、被告は起訴事実を否認すると表明。その後公判は開かれていない。

「副検事にハニートラップ説を拡散された」

その後ひかりさんは、北川被告の逮捕前後にB副検事が捜査を妨害し、「ひかりさんがハニートラップを仕掛けた」と被害者情報を検察庁に拡散していたと訴え、こうした行為は犯罪なのに検察はまともに捜査していないとも主張している。現在は大阪第2検察審査会に証拠隠滅や名誉棄損、同教唆などでB副検事と北川被告に対する「起訴相当」の議決をするよう求めている状態だ。その経緯をこう話す。

「北川は逮捕前、私に『被害申告を取り下げろ』と脅してきました。私が検察にそのことを伝えるとBの漏えいを誰かが疑ったようで、最高検がBに北川との通信履歴を見せるよう求めています。

Bが拒否したため検察は携帯電話を差し押さえ、削除されたデータを復元しました。すると北川との不貞関係を示すやり取りや、(北川の)弁護士を通じて捜査情報を漏えいしていたことが発覚したんです」(ひかりさん)

ひかりさんはこれらの情報を、元同僚らから聞いたとしている。いっぽう検察庁は復元されたデータから不貞関係を示すものが見つかったと明らかにしたことはない。

ただ検察は、B副検事が2024年5月下旬以降、北川被告側の弁護士に自分が聴取されたことを伝え、自分のスマホにあった北川被告や弁護士との通信履歴を削除したことは確認しており、これを理由の一つとして2025年3月にB副検事を戒告処分にしている。

また、ひかりさんは「私は北川事件(性被害)だけだったら辞職しないわけですよ。でも復職しようとしていた時にBが私の氏名や誹謗中傷を拡散したから検察が私をつぶしたわけです」と話し、B検事の行動が復職を阻んだと告発する。同僚の協力などを根拠にひかりさんが説明を続ける。

「Bは北川の逮捕前、最高検に、私が北川に好意を抱いていて飲み会の席で『チューして』などと性的な発言をしていたなどとする虚偽の“ハニートラップ説”を供述しています。

さらに、私が被害者であることは性犯罪の被害者保護システムに基づき、検察内部でも秘密にされ北川の捜査担当者以外知りえなかったのに、逮捕直後からBは北川と親しい検察幹部やOBらに私の名前やハニートラップ説を口止めもせずに拡散しました」

これも、検察庁がすべてを明らかにしているわけではないが、B副検事の戒告処分理由には「大阪地検内で被害者について詮索しないように全職員に注意喚起されていたにもかかわらず(Bは)令和6年(2024年)6月下旬から9月下旬にかけ大阪地検の職員等複数名に対して、それぞれ別の機会に被害者(ひかりさん)の氏名等を伝達した」と書かれており、少なくとも被害者名の拡散は認定している。

さらに、会見に同席した元検察官のひかりさんの弁護人・田中嘉寿子弁護士は当時、検察庁から派遣されたオランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)で勤務していたが、最高検幹部の1人が北川被告の逮捕直後、

〈元々はV(被害者の意味)のかたが北川さんのことをものすごく慕っていて、ラブラブと言い、懇親会のセッティングを積極的にしてもらった経緯があるようです〉

とのメールを送ってきたと公表。「ひかりさんが誘った」との認識が検察庁内で広がっていたことをうかがわせている。

北川被告はPTSDの原因は「過労では」と主張

ひかりさんはこうした情報を基にB副検事と北川被告を順次告訴・告発してきた。これに検察は、前述のとおり昨年3月にB副検事を戒告処分にしたが、告訴・告発に対してはすべて不起訴処分とした。

「どういう理屈で不起訴にしたのかというと『故意が認められない』というわけです。法律家としておよそ許されない論理のすり替えです。

検察はBの家宅捜索令状まで取ったのに直前で(捜索を)やめ、(北川被告とB副検事の)拘置所の接見記録の照会もしなかった。現場はしたかったけど、上から許可が出なかったと聞いております。Bの事件の隠蔽は、上からの指示でやらされていると思います」(田中弁護士)

不起訴を不当と訴えるひかりさんは、今年4月末、辞表提出と同時に強制起訴を求める申し立てを大阪第2検察審査会に行ない、7月には新たな証言などを同審査会に伝えた。その後も検察が「つぶし」にかかったとひかりさんが感じることが発覚した。

「性犯罪被害者の情報は裁判所が秘匿決定をして、できる限り加害者に見せない、保護することは法律でも検察庁の取り扱いでも決まっています。にもかかわらず私の勤務状況やパソコンのログ記録、業務パソコンでのメールのやり取りが私に無断で加害者である北川に全て(証拠として検察庁から)開示されていたことが最近判明しました」

「同意のない性交でPTSDになった」とひかりさんが主張するのに対し、北川被告はPTSDの原因は「過労では」と主張するため勤務記録の開示を求めたのだろうとみるひかりさんは、被告の有罪を立証するはずの検察も結託していると憤った。そして「私の一生懸命やってた仕事までが侮辱され汚されてるんです」と、また涙声になった。

被害者は被害を訴えたらこんな目に遭うんです。だから私は『皆さん、声を上げましょう』とはもう言えない。被害を受けても声を上げたらこんだけ後悔するから。だけど、それだとダメだから、今受けてる自分のことを全部話して検察を変えるという行動に出るしかない」

検事への復職を願い、被害者が正当に扱われる社会のために検察に第三者委員会という外部の目を入れることを願ったひかりさん。

最初の願いは潰え、次の望みもつぶされる直前まで追い込まれているとの悲壮感を口にしながら、それでも懸命に踏みとどまろうとし、支援を訴えた。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班