復活した三菱 新型「パジェロ」と岸浦恵介社長

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一度廃止された「パジェロ」 復活した紆余曲折の理由とは?

 三菱自動車工業(以下、三菱)は2026年9月2日、新型フラッグシップクロスカントリーSUV「パジェロ」を世界初公開しました。日本では2026年度中の投入を予定し、以後世界約100か国に展開する予定です。
 
 国内では2019年の終売以来、およそ7年ぶりに復活したかたちで、グローバルでも5年ぶりの復活となりますが、新型パジェロはどのような経緯で誕生したのでしょうか。

 パジェロの歴史とともに、新型登場までの経緯を解説します。

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 現在主流のSUVは、三菱であれば「アウトランダー」や「エクリプスクロス」など、前輪駆動(FF)をベースにした乗用車用のプラットフォームを使う車種が中心です。

 同様に、トヨタ「ハリアー」や「RAV4」、日産「エクストレイル」、ホンダ「CR-V」、マツダ「CX-5」なども、プラットフォームはすべて乗用車用です。

 その点でパジェロはそうしたモデルとは異なり、後輪駆動(FR)をベースにした悪路向けのシャシーを備えたSUVであることが特筆されます。

 パジェロの歴史は長く、1982年に発売された初代モデルは、当時注目されてヒット作になりました。その理由は、従来のSUVとはクルマ造りが大きく違っていたからです。

 初代パジェロが発売される前のSUVは、主にビジネスなどの業務用途で使われる悪路向けの4WD(四輪駆動車)でした。内外装は実用重視の無骨なデザインで、乗り心地も粗く、一般ユーザーには適さないクルマでした。

 しかし初代パジェロの内外装は、当時のSUVとしては上質で、運転感覚や乗り心地も乗用車風です。

 販売は好調で、初代パジェロの登場以降は、従来から用意されていたトヨタ「ランドクルーザー」や日産「サファリ」も乗用車感覚を強めました。初代パジェロはSUVの流れを変えたのです。

 その結果、当時の悪路向けSUVは販売台数を増やし、1983年に発売された初代トヨタ「ハイラックスサーフ」、1986年の初代日産「テラノ」なども好調に売られました。

 そしてパジェロの人気が最高潮に達したのは2代目です。1991年に登場して、1992年には1か月平均で約7000台を登録しました。

 この売れ行きを2026年上半期(1~6月)のSUV登録台数に当てはめると、トヨタ「カローラクロス」が1か月平均約5200台、ホンダ「ヴェゼル」は約6200台、トヨタ「ヤリスクロス」は約6400台ですから、2代目パジェロの好調ぶりが分かります。

 ちなみに2代目パジェロでは、ロングボディに直列4気筒2.8リッターディーゼルターボを搭載する上級グレード「ミッドルーフワイド スーパーエクシード」の人気が特に高かったです。

 当初の価格は400万円以上に達し、当時では相当な高価格車でしたが、2代目パジェロでは売れ筋グレードになりました。

 しかもディーラーオプションの大型フォグランプ、フロントマスクのグリルガード、スポーティグリル、ルーフキャリアなども数多く売れました。

 ユーザーによっては総額100万円相当のディーラーオプションを装着して、車両価格と合計すれば、500万円を超えることもあったのです。初代と2代目のパジェロは、三菱に大きな利益をもたらしました。

復活した「パジェロ

 1991年に登場した2代目パジェロの売れ行きは、発売直後は絶好調でしたが、その後は下がり始めました。

 1994年に初代トヨタRAV4、1995年には初代ホンダCR-V、1997年には初代トヨタハリアーと初代スバル「フォレスター」という具合に、乗用車のプラットフォームを使う“シティ派SUV”が続々と登場したからです。

 これらの“シティ派SUV”は、パジェロのような悪路向けのSUVに比べて走破力は低いですが、舗装路上の走行安定性と乗り心地、運転のしやすさ、後席の居住性や乗降性は優れています。

 実際に日本のSUVユーザーの多くは悪路を走る機会が少なく、主に舗装路上で使います。そこで“シティ派SUV”が注目され、悪路向けのトヨタハイラックスサーフ、日産テラノ/サファリ、いすゞ「ビッグホーン」、ダイハツ「ラガー」などは次々と廃止されました。

 パジェロは1999年に3代目へフルモデルチェンジしましたが、2代目デビュー時ほどの評判を集めることができませんでした。外観のデザインはボリューム感を強め、特に全幅は1875mmと大幅に拡大されたので、初代や2代目のシンプルでスマートな印象は薄れました。

 3代目パジェロは、“シティ派SUV”の台頭を含めて販売面で不利な条件が重なり、売れ行きをさらに下げていきました。

 そこで2006年に発売された4代目では、外観をシンプルに仕上げて2代目に近づけましたが、販売は回復しませんでした。三菱は2005年に“シティ派SUV”の初代アウトランダーを発売して好調に売れており、パジェロは主役の座を奪われたのです。

 2018年になると、パジェロの登録台数は、1か月平均で100台を下まわりました。1992年のわずか2%以下です。

 その結果、パジェロの国内仕様は2019年に生産を終えました。悪路向けのSUVが衰退する中で、パジェロは4代目のフルモデルチェンジにも失敗して、生産終了に追い込まれたのです。

台頭する“シティ派SUV”からの原点回帰が復活のキーに

 しかしこの後、SUVの人気は一層高まり、国内で新車として売られる小型/普通乗用車の30~40%を占めるようになりました。

 車種も増えて、パジェロが国内仕様の生産を終えた2019年以降に、トヨタはヤリスクロスやカローラクロスを発売し、「クラウン」はSUVを中心にシリーズ化されました。

 日産は「キックス」、ホンダは「ZR-V」や「WR-V」、マツダは「CX-60」や「CX-80」を新規投入しています。

 これらはすべて乗用車系のプラットフォームを使う“シティ派SUV”で、このタイプが急増した結果、ユーザーに原点回帰の傾向が見られ始めました。

 日常的に使いにくく、一度は人気を衰退させた悪路向けSUVが、再び注目されるようになったのです。

復活した「パジェロ

 この人気動向の変化により、ランドクルーザーの「250」や「300」は生産が受注に追い付かず、納期を数年に遅延させて受注を停止しました。

 スズキ「ジムニー/ジムニーシエラ」も納期が1年から2年に長引き、5ドアボディの「ジムニーノマド」は受注開始から4日後に販売活動を中止しました。

 輸入車でも悪路向けSUVのジープ「ラングラー」やメルセデス・ベンツ「Gクラス」が好調に売れています。

 この市場の変化に対応して、三菱は改めて悪路向けのクロスカントリーSUVを計画しました。

 2024年に先立って発売されたピックアップトラックの三菱「トライトン」は、耐久性の優れたラダー(ハシゴ型)フレームを備えたトラックですが、センターデフ式4WDと悪路で駆動力を高める副変速機を組み合わせた「スーパーセレクト4WD-II」、四輪の駆動力制御を綿密に行う「S-AWC」も備えています。

 これらの機能を活用して、三菱は改めて本格的な悪路向けクロスカントリーSUVの開発に着手したのです。新型パジェロの商品化は、トライトンの存在で可能になりました。

 新型悪路向けクロスカントリーSUVの開発を開始した段階では、車名は未定でしたが、ユーザーの受け止め方を考えるとパジェロの復活とするのは当然でしょう。

 以上のようにパジェロの廃止と新型の復活には、SUV市場の変化と三菱の置かれた状況、トライトンの商品化などが影響を与えています。

 そして一度廃止した車種を復活させることは、メーカーや販売会社として、相当な勇気を必要とします。

 失敗すれば、「やはり廃止した車種の復活は無理だった」という話になり、開発費用の損害も被り、二度と同じカテゴリーの車種を開発できないためです。

 つまり新型パジェロの商品化は、三菱として、失敗の許されない重要なチャレンジでした。そのために渾身のクルマ造りを行い、三菱ブランドをけん引する新たなフラッグシップモデルとして登場を果たすことになりました。