(※写真はイメージです/PIXTA)

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『2020年国勢調査』によると、50~54歳の未婚者のうち、親と同居している人の割合は男女ともに50%を超えています。親にとっては近くに頼れる子どもがいる安心感があり、子どもにとっては経済的メリットがあるため悪くない選択といえそうですが、親が高齢になると、同居のメリットが急にデメリットへ転じる可能性も……。CFPの山﨑裕佳子氏が、「おひとり様」の老後に向けて必要な備えについて解説します。

派遣社員・手取り20万円台でも「不安なし」…実家暮らしを続けてきた59歳娘

派遣社員のクミさん(仮名・59歳)は、地方都市にある賃貸マンションで80代後半の両親とともに暮らしています。一人暮らしの経験はなく、生まれてから今日までずっと実家暮らしです。

家賃の8万円はクミさんが負担していますが、その他の生活費は両親が月額約26万円の年金から支出しています。

クミさんは短大を卒業後、正社員として就職して働いていましたが、希望とはまったく異なる部署へ異動を命じられたことが原因で体調を崩してしまい、33歳のときに会社を自主退職。両親と同居していたため衣食住に困ることはなく、「ゆっくりすればいい」という言葉に甘え、1年ほど働かずにいました。

その後、心身が回復して就職活動をしたものの、正社員の希望は叶わず。結局、派遣社員として事務職の仕事に就くことになりました。年収は額面で約360万円(月額30万円)、手取りにすると約24万円です。

「いつまで居座る気なんだ」…還暦間近で両親に突きつけられた本音

そんなある日、ついにクミさんの父が本音を口にします。

「お前、いつまでこの家に居座る気なんだ……」

ずっと家にいる両親の「老い」を目の当たりにしていたクミさんにとって、その言葉は深く突き刺さりました。

クミさんの資産は、預貯金と投資信託で約1,200万円。実家暮らしでコツコツ資産運用し、一定の資産を築くことができました。しかし、退職金はないため、この先大きく資産が増える見込みはありません。

一方、両親の預金は約500万円。クミさんの生活費を負担していたことから、なかなかお金が貯まらず、介護や医療費などを考えると少し心もとない金額です。

「私、このままでいいのかな……」

両親が亡くなり、いずれ一人暮らしになることは頭では理解できても、これまで親に頼ってきたこともあり、具体的にどんな対策をとるべきかイメージが湧きません。クミさんは今後のことが不安になり、自身の将来の収支を計算してみることにしました。

「いつまでも親に頼ってはいられない」…「老後破産」の危機に直面し、還暦目前で一念発起

老後の暮らしについては、「今後どう暮らしたいのか」によって答えは異なります。

将来の資産推移を可視化するためには、年金を含めた収支を確認し、キャッシュフロー表に落とし込むことが重要です。ところが、両親と同居している人の場合、毎月の生活費がどれくらい必要なのか把握していないケースが少なくありません。

クミさんも、自身が負担している家賃を除いてはすべて親任せだったことから、毎月食費や水道光熱費などいくらかかっているのかまったく把握していませんでした。

慌てて世帯の支出を整理し、自分一人になった場合の生活費をシミュレーションしてみると、厳しい現実が見えてきました。

クミさんの「ねんきん定期便」によると、65歳からもらえる年金は月額13万円。対して、家賃を含めた一人暮らしの支出は月17万円程度になる見込みです。不足分の月4万円を預貯金から取り崩すと、単純計算で1,200万円の資産は90歳のときに枯渇してしまう計算です。

また、この先、両親に介護が必要になったり、クミさん自身が身体を壊したりすれば資産が尽きる時期がより早まるおそれがあります。両親の預貯金が心もとないことから、両親になにかあった場合も、クミさんの資産から捻出する可能性があるためです。

「このままでは、遠くない将来に生活が立ち行かなくなる……」と、一時は言葉を失ったクミさん。しかし、悲観するばかりではなく、ようやく重い腰を上げました。

まずは両親が管理していた光熱費や食費の明細をすべて確認し、家計のムダを洗い出すことからスタート。さらに、65歳以降も安定して働き続けられるよう、派遣会社に長期就業が可能な業務への配置転換を直訴しました。

「いつまでも親に頼ってはいられない」

還暦を前にして、ようやく自分の人生の舵を自分で握る覚悟を決めたのです。

【CFPの助言】「一人になったらどうする?」おひとり様の老後に必要な備え

「おひとり様の老後」で最も大切なのは、早くから自分ひとりで生活するイメージを持っておくことです。

両親と同居している場合には、食費や生活費などが見えにくくなりますが、まずは現在の支出を整理し、そのうえで自分一人になったときの住居費や生活費を具体的にイメージしておくようにしましょう。

「自分の年金と資産だけで生活できるのか」「できないなら毎月いくら不足するのか」「想定外の支出に対応可能か」などを確認しておくことが大切です。老後資金に不安がある場合には、細く長く働くのもひとつの手です。可能ならば65歳以降も働くことで、資産の減少を遅らせることができます。

また、おひとり様の場合、忘れてはならないのが介護や病気への備えです。あらかじめライフプランに組み込み、自分に介護が必要になったときどこに頼るか、どの程度の費用が必要か調べておきましょう。

親の介護についても、自分が経済的負担を負う可能性がある場合、自分の老後費用とは別に予算をみておきましょう。

「まだ先のこと」と後回しにせずに、元気なうちに自分一人になった場合の暮らし方をイメージして準備しておくことが、老後の安心につながります。

山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
CFP®