写真はイメージです
「かわいいから」「少しくらいなら」--そんな軽い気持ちでの餌付けが、野生動物と人との距離を少しずつ縮めてしまうことがあります。何気なく与えたひと口が、思わぬ“悲しい結末”につながることも……。今回は、山で目にした「ある親子」の出来事をご紹介します。

◆「おいで!」野生動物にお菓子をあげる親子

 ある休日の午前中。関谷結花さん(仮名・32歳)は、人気の低山で一人登山を楽しんでいました。

「天気も良くて、鳥のさえずりが聞こえる気持ちのいい日でした」

 途中、休憩できる広場に差しかかると、小さなリスが姿を現したそう。

「すると近くにいた親子連れの、小学低学年くらいの男の子が『かわいい! おいで!』と、お菓子を取り出してリスに差し出したんです」

 すると父親も笑いながら「ほらほら、食べろ! 手に乗ったところを写真に撮ろうぜ」と、一緒になってお菓子を投げ始めました。

「えっ……野生動物にエサをあげちゃうの? と驚きました。周りの登山客も戸惑った表情で見つめていましたが、親子は気にする様子もなくて」

◆注意されて反論した父親の「呆れた言い分」

 その時、近くで休憩していた年配の男性登山者が親子に近づいて「すみません。野生動物には人間の食べ物をあげないでください」と注意したそう。

「すると父親はムッとした表情を浮かべ『はぁ? 別によくないですか? 食べたがってるし』と反論したんですよ」

 すると年配の登山者は穏やかな口調のまま「人間の食べ物を覚えると、自分でエサを探す力が弱くなったり、人への警戒心が薄れたりすることがあります。結果的に、その動物の命を危険にさらすこともあるんですよ」と続けました。

 その言葉を聞いた男の子は、お菓子を握りしめたまま小さくうなずき、「パパ……もうやめよう」とつぶやいたそう。

「ですが父親は釈然としない表情で、子どもの手前、仕方なくといった感じで『はいはい、分かりましたよ』とお菓子をしまい、男の子と手を繋いで先に歩いていってしまいました」

 リスはそのまま森の中へ駆けていき、広場には再び静かな空気が戻りました。

◆クマ出没のニュースから、私たちが学ぶべきこと

 近年、クマが市街地や住宅地に出没するニュースが相次ぎ、野生動物と人との距離のあり方が、身近な問題としてあらためて注目されています。クマの出没にはさまざまな要因がありますが、野生動物を人に慣れさせない、人の食べ物を覚えさせないことも、人と動物との適切な距離を保つうえで大切です。