名古屋市北区の「洋風食堂 みやちょう」。洋食店でありながら、多くの客のお目当ては毎朝市場で仕入れる新鮮な刺身です。魚屋の2代目だった店主が営む、洋食と鮮魚が自慢の人気食堂を取材しました。



■洋食店なのに刺身が人気




 名古屋市北区の住宅街に佇む、「洋風食堂 みやちょう」。自家製デミグラスソースが自慢の、「オムハヤシランチ」(1380円)が人気の洋食店ですが、多くの客のお目当ては、新鮮な刺身です。




客:
「刺身が新鮮。プリプリしていておいしいです」
別の客:
「刺身は厚みがあってすごい」

この日のメニューは、愛媛県産のタイやブリ、長崎県産のサバなどが楽しめる「お刺身ランチ」(1760円)や、三重県産のスズキのムニエルに、アンチョビソースを添えた「日替わり魚料理ランチ」(1540円)。




新鮮な刺身を提供するのは、店主の石黒洋造さん(72)。店の看板には“洋風食堂”とありますが、石黒さんが特にこだわっているのが、魚です。

石黒さん:
「魚には旬がある。季節の旬の魚を食べた方が、おいしくてお値打ちです」



■鮮魚店の2代目だった店主は毎朝市場へ




 午前8時。石黒さんが向かったのは、店から車で約10分、愛知県豊山町にある「名古屋市中央卸売市場 北部市場」。毎朝の日課である魚の仕入れです。




石黒さん:
「スズキはムニエル、刺身、フライなんかでもいい。タコももらっておこうかな。こんなに脂がのったイワシは最近ではあまりなかった。全部もらっていきます」

市場を練り歩き、魚を手に取っては次々とその日のいい魚を見極めていきます。

魚に詳しい石黒さん。今は食堂の店主ですが、もともとは鮮魚店の2代目です。10代のころから父親の手伝いで市場に通い続けてきました。その目利きには、市場関係者も一目置いています。




この日はタコやマグロといった定番に加え、旬をむかえるイワシやアジも買い付けました。

午前9時。店に戻ると、すぐに仕込みに取りかかります。

石黒さん:
「鮮度がいいとか、脂がのっているとかは当然わかります。60年魚をさばいていますから」

幼いころから父親の背中を見て育った石黒さん。小学校の卒業文集には、「レストランの経営者になりたい」という夢を記していました。




石黒さん:
「『おいしいものをみんなにたべさせたい』と書いてあった。そのころからそんな意識がありました」

「おいしいものを食べさせたい」。その思いは、60年経った今も変わりません。



■地域に愛される“洋食と鮮魚”の店を目指して




 石黒さんの父・稲造さんが、1948年にはじめたのが、「鮮魚 宮長商店」です。

石黒さん:
「こわい親父でした。とにかく暇があったら店を手伝えと」




19歳の時に父親が他界。家業を継ぎ、2代目として鮮魚店を切り盛りしました。しかし、近くにできたスーパーなどの影響を受け、店を閉じることに。

その後、以前から興味のあった洋食をふるまうカフェを開きます。たちまち人気の店となりましたが、30代に差しかかるころ、店づくりへの思いに変化が生まれました。

石黒さん:
「地域の人たちに愛してもらう店づくりを考えていた時に、そういえば俺は鮮魚店の息子だと思い返した」

そして1993年、洋食と鮮魚を看板にした「洋風食堂 みやちょう」をオープン。店を続ける中で、父親から受け継いだものの大きさにも、改めて気付いたといいます。




石黒さん:
「4世代にわたって来てくれるお客さんがいる。それぞれの思い出がこの店にはある」

地域に愛される店を目指し、味以外にも大切にしていることがあります。それは、店を休まないことです。

石黒さん:
「無休です。休みでお客さんにがっかりしてほしくない。無休で働いています」




お盆も休まず、年中無休。いつ訪れても、変わらぬ味と雰囲気で客を迎えます。

客:
「ほぼ毎日です。年間350日くらい。一途にお刺身定食です」
石黒さん:
「おいしいものを探してきて、どの年齢の方にも届けていくことが恩返し。私のやるべきことと思っています」

「とにかく1日でも長くやっていきたい」。石黒さんは今日も、地域の人たちに愛される店を目指し、厨房に立ち続けます。

2026年8月5日放送