相次ぐ「概算金ショック」で“コメ大暴落”危機…「離農が加速して、生産量も激減しかねない」新潟のコメ農家が嘆く「国の本音は“足りない分はカリフォルニア米で補う”ではないか」
8月16日から18日にかけて、複数のブロック紙や地方紙は共同通信の記事を元に「高知ショック」が起きたと報じた。記事は「コメ市場がパニックの様相を呈している」との書き出しから始まり、7月に高知県のJAが提示した早場米の概算金がコシヒカリで60キロ1万4000円だったことを驚きの声と共に伝えた。つまり、あまりの安さにコメ農家や卸業者など業界全体に激震が走ったのだ。(前後編の前編)
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コメの民間在庫量は6月末に243万トンに達し、これは統計史上で過去最大となっている。適正量は180万トンから200万トンだという。

共同通信の記事は他に、コメが5キロ5000円台など異常に高騰していた時期に売れていた外国産米もコメ価格の下落と共に売れ残っていることに触れている。
ただでさえコメが余っているにもかかわらず、そこに今年の新米が加わったら異次元の在庫量になる可能性が高い。大暴落説が現実味を帯びる中、高知県で概算金が発表された。
概算金とはコメ農家が出荷する新米に対し、JAなどが支払う前払い金のことを指す。コメは半年から1年をかけて、ゆっくりと売られていく。収穫をしたその年に前払いを行わないとコメ農家の運転資金が枯渇してしまうのだ。
価格は冒頭で紹介した通り、60キロで1万4000円。昨年に比べると4割減という異常事態が「高知ショック」と呼ばれた。
確かに昨年は3万円を超える概算金が続出し、コメ農家には久しぶりの朗報となった。しかし手に入れた利益は「アメリカのイラン攻撃に端を発し、円安に後押しされた肥料や資機材の高騰で雲散霧消してしまった」とコメ農家は口を揃える。
さらに8月18日、新潟県でも概算金が発表された。新潟は日本最大のコメ産地だ。
「新潟ショック」
また魚沼産のコシヒカリは日本トップクラスのブランド米として知られる。そのため新潟県の概算金も早場米で有名な高知県と同じように、全国のコメ価格を予想する“指標”として受け止められる。
結果は、新潟県産のコシヒカリは60キロ1万8500円、魚沼産のコシヒカリは2万1000円。いずれも昨年比で4割程度の下落を示した。
高知県の概算金と、ほぼ同じ下落率と言ってよく、こちらも「新潟ショック」と呼んだとしても差し支えないだろう。
新潟県内で農業を営む男性は「概算金の大幅下落は事前に覚悟していたので、実際に発表されても驚きませんでした」と言う。
「ただ分かってほしいのは、農家も消費者の皆さんと同じように物価高に苦しんでいるということです。物価高で支出が増えることで収入は実質的に目減りしますし、さらに今年の年収は4割減になるわけです。これがどれくらい大変なことか、簡単に理解してもらえるのではないでしょうか。新米価格の下落を防ぐため、『政府に備蓄米を早く買い戻してもらい、過剰在庫を解消してほしい』と期待する農家もいます。確かに備蓄米の買い戻しについて報道されていますが、高市政権は農家が思うような形で早期の買い戻しを実施することはないと予想しています。物価高対策として、できるだけコメの価格は安くしておきたいというのが本音でしょう」
カリフォルニア米で補填
コメの価格が安くなれば、消費者にとって朗報なのは間違いない。だが農家にとっては一大事だ。男性は「新潟県だけでなく、全国規模での離農が加速する可能性が高まる」と言う。
「現在のコメ生産量は約700万トンですが、これが490万トンくらいまで落ち込んでも不思議ではないと考えています。生産量が減れば、基本的に販売価格は上がります。価格に不満を覚える消費者も少なくないかもしれませんが、国の本音は『不足分は国産米より安いカリフォルニア米で補填してもらおう』だと想像しています。そもそも日本人はコメを食べなくなっています。朝はパン、昼は麺、夜にご飯を少しだけ、という家庭も珍しくないと思います。コメの需要が、この先大きく伸びる見通しは厳しいかもしれません。おまけに少子高齢化も加速していますから、担い手も減少する一方です。私たち農家の間では、『遠くない未来、外国の資本や外国人が日本国内でコメを生産する時代が来ても不思議ではないね』という話さえ出ています」
日本でもコメ農家の大規模化が必要だと多くの専門家や識者が指摘するが、平地での大規模化はすでに一定程度は進んでいる。また中山間地での大規模化は物理的な障壁が高く、そのため今後の検討課題になっている。
零細農家は税金で支援すべき
「日本のコメ生産のうち、3割程度は中山間地で行われています。しかし中山間地の水田は傾斜地にあり、物理的に大規模化するのは時間もかかりますし、莫大な予算も必要なので、結局は放棄される可能性があります。また大規模化を進めたとしても、先ほど指摘した担い手不足の問題があります。コメを作る人がいなくなれば、大規模化も絵に描いた餅です。“スマート農業”は農業の自動化を指し、コメ栽培の省人化も議論されていますが、実現したとしても多額の資金と維持費が必要で、相当に大きな農事法人でないと担えないでしょう。仮に最終形態が大規模農家の育成だとしても、現時点で大切なのは現状の生産力をなるべく維持すること、つまり大規模化が厳しい零細農家を支援することだと考えています。国が補助金を出して保護すべきだと私は考えていますが、国民の理解が得られるかどうかは分かりません」(同・男性)
後編【コメ農家は「本当に追い詰められています」 “コメ離れ”“離農者”が加速して日本人が“外国産コシヒカリ”をほおばる未来…「消費者が5キロ3500円のコメを買えない日本の経済状況が最大の元凶」】では、日本でコメ農家がゼロになり、水田維持のため外資の誘致や、外国人農業者という“移民”が解禁される可能性についてお伝えする──。
デイリー新潮編集部
