また「税金の無駄遣い」で終わるのか?巨額投資の国産AIが、企業の「データ出し渋り」で過去の日の丸プロジェクトと同じ失敗を繰り返す理由
日本独自の「AI基盤モデル」実現を目指す、産官共同プロジェクト「ノエトラ」が国内外で大きな期待を集めている。
ノエトラは元々、経済産業省とNEDOが進めるフィジカルAIの研究開発プロジェクト「FRONTia(フロンティア)」に端を発し、ソフトバンクやソニーなど国内44社が、総額で100億円規模の資本金を拠出して共同設立された企業だ。
これまでの生成AIとは異なる「現実世界で自動運転車や人型ロボット、ひいては自動化工場などを動かす」ためのフィジカルAIを開発するという。
フィジカルAIの時代を見据えれば、米国企業のAIに依存せず、日本国内で基盤技術を確保するという構想には一定の合理性があるものの、初年度約3800億円、5年間で最大1兆円規模という巨額の公的資金を、なぜ民間企業がほとんど負担しないのかという疑問も残る。果たして「国産AI」は、日本の産業競争力を高める切り札となるのか。
【前編記事】→「1兆円の税金投入」も失敗覚悟?ソフトバンクら44社が主導する「国産AI」プロジェクトで、企業の本気度が疑われる決定的な理由
最大5年で1兆円という予算規模で十分か?
国と企業の負担割合は今後調整が可能として、その総額は十分と言えるだろうか。
昨今のメディアが報じているように、グーグルやアマゾン、メタをはじめ米国のビッグテック各社は軒並み年間数千億ドル(数十兆円)の予算を先端AI開発に投じている。そこにはもちろんデータセンターの建設など巨額のインフラ整備費も含まれるが、それを差し引いたとしても日本とは桁違いの資金と言えるだろう。
そこにノエトラの「最大5年で1兆円(年換算で2000億円)」という予算で立ち向かうことができるのか? これは誰しも抱く疑問であろう。ただ、この点は必ずしも無理とは言えないだろう。
と言うのも、かつてOpenAIが大規模言語モデル(LLM)の初期ヴァージョン(GPT1,2等)を開発する際は、基本的に2019〜2020年にかけてマイクロソフトが同社に投資した約10億ドル(当時の為替レートで1100億円前後)の資金で賄っていたからだ。
因みに、その資金の大半はマイクロソフトのデータセンターを使った機械学習に投じられた。データセンターの使用料金は当然OpenAIからマイクロソフトに支払われたので、いわゆる循環投資の先駆けと言えるだろう。
これら黎明期の生成AI(LLM)と現在のフィジカルAIが同じフェーズにあるとすれば、ノエトラの「5年で1兆円(年2000億円)」という予算は十分と見ていいのではないか。
「極秘データは出さなくていい」で済むのか?
むしろ問題はフィジカルAI(の基盤モデル)の機械学習に使われるデータだろう。このデータはノエトラに参加するファナックやソニー、オムロンなどメーカー各社が持ち寄って提供することになっている。
この点についてノエトラの丹波社長は次のように語っている(以下、日本経済新聞電子版・2026年8月21日に転載された日経クロステック「国産AI開発ノエトラ・丹波社長の焦燥『失敗したら、もう後がない』」より引用)。
「例えば産業用ロボットにしても、一般的な産業用ロボットを学習させるためのデータと、各企業が持つ熟練の技、匠(たくみ)の技のような極秘のデータは別です。後者をわざわざ開示していただいても仕方がなく、その企業固有のデータです。
ノエトラがまず必要としているのは、ロボットがどのように動いているか、動いている様子からものを判定するために必要な情報とは何か、といったもう少し一般的なデータであり、それであれば開示していただけるだろうと考えています」
要するに「メーカー各社が大事にしている極秘データは提供する必要がなく、一般的なロボットの動作データなどを出してくれればそれでいい」という主旨だが、これで本当に大丈夫なのだろうか?
そもそも「物作りニッポン」を代表するメーカー各社がまさに「熟練の技、匠の技」の凝縮された極秘データを持ち寄り、それを機械学習させてフィジカルAIを作り出すから、世界に立ち向かうことのできる強い国産モデルを実現できる、というのが、この産官共同プロジェクトの大義名分ではなかったのか?
それなのに実際は「一般的な動作データを出してくれればいいですよ」と言うのでは、そもそも、この共同プロジェクトの存在意義自体が失われてしまう。世界と競える強いフィジカルAIを作り出すための「匠の技」の学習データをメーカー各社が門外不出とするのであれば、結局は各社が独自にそれを開発するしかないだろう。
過去の産官共同プロジェクトは成果らしい成果を出せずに幕を閉じたことも少なくない。それらと同じ轍を踏まないために、今回経産省や参加各社はより厳しい姿勢で望むべきではないか。
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