首都直下地震への懸念が一段と高まっている(写真/PIXTA)

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令和8年熊本地震」や「令和8年8月千葉豪雨」の深い爪痕がいまなお残る状況下で、8月23日未明に新たな地震が発生した。頻発する自然災害のなかで起きたこの揺れにより、首都直下地震への懸念が一段と高まっている。

【表で丸わかり】政府が想定する首都直下地震の主な震源地、都心はマグニチュード7.3、深谷はマグニチュード7.6

「30年以内に70%」の確率で発生すると予測される首都直下地震

 深夜の静寂を切り裂くように、枕元のスマートフォンから緊急地震速報の警報音が鳴り響いた。その直後、下からドンッと突き上げるような激しい衝撃。続く大きな横揺れに恐怖で足がすくみ、ベッドから起き上がることすらできない。

 暗闇のなか、自宅がミシミシと軋む聞き慣れない音が耳に迫り、「このまま家が潰れてしまうのではないか」という、かつてない恐怖に襲われた──。就寝中に激しい揺れに見舞われた埼玉県在住のパート女性(60代)は、生きた心地のしなかった数十秒をそう振り返る。

 日付が変わった8月23日の午前2時頃、茨城県南部を震源とするマグニチュード(以下、M)5.9の地震が発生した。茨城県、埼玉県、千葉県、東京都の17市区町で最大震度5弱を観測した。東京23区(足立区)で震度5以上の揺れを記録したのは、2021年以来約5年ぶりのことだ。実は今回の震源地は、専門家の間ではかねてより「地震の巣」として警戒されてきたエリアだった。東京大学名誉教授の笠原順三氏が解説する。

「首都圏の地下は、北米・フィリピン海・太平洋という3枚のプレートが重なり合う、世界的に見ても極めて特殊な構造をしています。各プレートには常に強い力が加わっており、どこが動いても大地震につながる危険を孕んでいる。なかでも過去に地震を繰り返してきた場所が『地震の巣』と呼ばれ、茨城県南部、千葉県北西部、東京湾直下は特に活発なエリアとされています」

 今回の地震では幸いにも大きな被害は報告されていないが、この揺れが未曽有の巨大地震の前触れである可能性も指摘されている。

「今年に入り茨城県南部では、4月1日、6月16日、そして今回の8月23日と、約2か月おきに震度5弱の地震が相次いでいます。地震活動がこれほど規則正しく続くのは極めて異例で、地下で地震活動が活発化しているのは明らかです。この不気味な動きは、いよいよ迫る首都直下地震の"先駆け"なのではないかとみています」(笠原氏)

 首都直下地震とは、東京都をはじめとする首都圏を震源としたM7クラスの巨大地震を指す。政府は「30年以内に70%」という高い確率で発生すると予測し、首都直下地震の震源となりうる19か所を選定して被害の広がりを調査。被害がもっとも大きいと予測される「都心南部直下」で地震が発生した場合、帰宅困難者は約840万人、発生2週間後の避難者は約480万人に達するとされる。

 建物の全壊・焼失などによる直接的な死者は最悪のケースで約1万8000人。さらに恐ろしいのは、避難生活中の体調悪化などによる「災害関連死」が最大約4万1000人に上ると試算されていることだ。犠牲者は最大で5万9000人という絶望的な数字に膨れ上がる。

 さらに笠原氏は、もうひとつの気がかりな地震活動に注目している。

「近年、千葉県の銚子付近から三宅島沖の海溝付近(伊豆・小笠原海溝、日本海溝)にかけても、地震活動が活発化しています。これらは政府が想定する震源地ではありませんが、茨城県南部の地震を引き起こしたフィリピン海プレート上に位置しており、互いに連動している可能性が高いとみています。

 政府の想定震源地もこのプレートの影響を受ける場所が多く、銚子付近から三宅島沖の活発な動きは、首都直下地震がいつ起きてもおかしくない状態にあることの裏付けとも言えるでしょう」(笠原氏)

生死を分ける「3秒」の行動

 では実際に巨大地震の揺れに見舞われたとき、私たちはどう行動すれば生き残れるのか。危機管理教育研究所の国崎信江氏は、「緊急地震速報後の『3秒』が明暗を分ける」と話す。今回の地震でも、警報発表から揺れが到達するまでわずか3、4秒しかなかった。

「日頃から、警報が鳴った直後の3秒で何ができるかをシミュレーションしておくことが重要です。例えば就寝中の深夜に鳴ったのなら、すぐに起きて3秒で物の少ない廊下など安全な空間へ移動してください。固定されていない机の下に潜るのはかえって危険です。トイレにいた場合は、閉じ込めを防ぐためにドアを開け、避難動線を確保する必要があります」(国崎氏)

 外出先で被災した場合には、揺れが収まった後の行動が命運を握る。

「地震直後に帰宅を急ぐ人が駅に殺到すると、過密状態による圧迫で呼吸困難に陥るなど、群衆雪崩(雑踏事故)を引き起こしかねません。人混みを避けられる場所への避難を心がけてください。また、地下にいるときに地震が発生したら、地上へむやみに飛び出すのは危険です。外へ出ると窓ガラスや外壁などの落下物に襲われる恐れがあります。揺れに対しては地下の方が安全なケースも多いため、いったん地下にとどまり、館内放送などの指示に従うのが賢明です」(国崎氏)

 被災状況によってはその先に過酷な避難生活が待ち受けることになる。7月28日に発生した「令和8年熊本地震」の被災地で支援活動にあたる国崎氏は、現場での体験から「季節に応じた備え」を強く訴える。

「夏場の災害ということで、暑さ対策の重要性を痛感しています。大量の汗で体内の水分が失われるため、熱中症を防ぐには目安とされる1日3リットルの倍、6リットルの水が必要です。あわせて塩分補給用のタブレットや飴も常備しておくべきでしょう。また、入浴できない日々は強いストレスや健康トラブルに直結します。ボディーシートや水のいらないシャンプー洗顔シートなどの衛生用品も命を守る備えの一部です」(国崎氏)

 そしてもっとも警戒すべきが前述した「災害関連死」だ。

「熊本地震の避難所でもっとも注意を払っているのが、高齢者の誤嚥性肺炎です。水不足で口腔ケアがままならないと、雑菌だらけの唾液を誤って気道に吸い込んで発症してしまうケースがある。水が使えない環境下でも歯や舌の汚れを拭き取れる"口腔ケア用ウエットティッシュ"などで予防に努めています」(国崎氏)

 巨大地震が日本列島を襲う日は確実に迫っている。いま一度、身の回りの備えを見直したい。

※女性セブン2026年9月10日号