「転職する気はないのか」はま寿司店長、労組移籍した部下に“圧力”…「不当な支配介入」と都労委に救済申し立て
大手回転寿司チェーン「はま寿司」が、企業内組合以外の労働組合(産業別労働組合)やその加入者に対し、組合間差別や支配介入を行ったとして、産業別労働組合「回転寿司ユニオン」が26日、都内で記者会見を開いた。
同ユニオンは、会社側の行為が労働者の団結権を保障する労働組合法に違反する「不当労働行為」にあたるとして、20日付で東京都労働委員会に救済を申し立てたことを明らかにした。
一方、はま寿司の親会社であるゼンショーホールディングスは、「当社としては、不当労働行為に該当する組合間差別を行った事実はないと認識しています」と説明。今回の申立について「遺憾です」とコメントした。
店長から「なぜ回転寿司ユニオンに入ったのか」回転寿司ユニオンは2022年に結成された、企業の垣根を越えて回転寿司業界で働く人たちが加入できる産業別組合。結成当初は「スシロー」の従業員が中心だったが、2025年からはま寿司の従業員の組織化も進んできた。
会見でユニオン側が問題視したのは、主にはま寿司による「組合間差別」と「支配介入」だ。
「支配介入」の具体例としては、2つのケースが挙げられた。
まず、2025年9月から10月にかけ、都内店舗のエリアマネージャーが、企業内組合から回転寿司ユニオンに移籍した組合員に対し、「あそこは会社の組合ではない」「なんでそんなところに頼んでいるんですか」などと発言したとされる事案だ。
もう一つは、ユニオンの執行委員である横田さんが自身の勤務する店舗で受けた言動だ。2025年12月、横田さんは当時の店長から「なんで回転寿司ユニオンに入ったのか」「(企業内組合に)戻ってくる考えはないのか」「スシロー主体の組合だから、他社に転職する気はないのか」などと、ユニオンから脱退するか、脱退しない場合には退職することを促すような発言をされたという。
横田さんは、会見で当時の心境を「本当にびっくりしましたし、当然怖かったです」と、振り返った。
ユニオン側によれば、会社側は横田さんに対する元店長の発言の事実は認めているものの、「店長は企業内組合員でもある。企業内組合員としての発言で、会社としては関知できない」という趣旨の説明をしているという。
これに対し、ユニオンの代理人である藤原朋弘弁護士は、会見で次のように反論した。
「いずれの言動も、業務時間中に、極めて会社側に近い立場の職制である店長からなされている。判例上も、そうした言動は、たとえその店長が別の組合の組合員であったとしても、会社の意を体した言動とみなされ、会社の支配介入にあたるとされている」
新入社員・アルバイトは“自動的”に企業内組合へこうした支配介入が行われる背景には、会社が特定の組合を不当に優遇する「組合間差別」があるとユニオン側は主張する。
具体的には、会社が企業内組合には組合掲示板(バインダー)を貸与しているにもかかわらず、回転寿司ユニオンからの貸与要求を拒否したことや、会社が新入社員や採用が決まったアルバイト・パートらに対して、回転寿司ユニオンの存在は知らせずに企業内組合のチラシだけを配っていることなどを挙げた。
ユニオンの吉田帆駆斗(ほくと)書記長によると、はま寿司で社員・アルバイト・パートとして採用されると、企業内組合への加入を断る選択肢が示されないまま加入させられ、毎月組合費として200円が給与から天引きされる仕組みになっているという。
藤原弁護士は、はま寿司の企業内組合が実質的に会社側の言いなりになり、労働者の利益を守る自主性を失った「御用組合」であると指摘。そのうえで、本件は組合同士の対立(労労対立)ではなく、本質は会社による組合への介入(労使対立)であると強調した。
また、弁護団の川口智也弁護士は「会社の中に複数の労働組合が存在する場合、使用者はそれぞれの組合に対し中立的な態度を保たなければならないという『中立保持義務』が判例上確立している。特定の組合だけを有利に扱うことは許されない」と述べた。
目指すは「労使関係の正常化」ユニオンは、今回の申し立ての目的は、単に個別の不当労働行為を是正するだけでなく、その先にある「労使関係の正常化」だと話す。
吉田書記長は、はま寿司の職場では、従業員本人の同意なきシフトカットが頻発しているほか、1店舗に正社員が1人もいない「責任者不在」の運営によってさまざまな問題が生じていると指摘。さらに、賃金交渉を申し入れても、会社側から「賃金交渉しても意味がない」と平然と言われるなど、労働者の声が反映される仕組みがないのが現状だと話す。
「会社が組合潰しのような行為をやめ、健全な労使関係のもとで交渉を進められるようにしたい。そうして初めて、シフトカットや賃金制度といった現場の問題を解決できると考えている」(吉田書記長)
一方、はま寿司の親会社であるゼンショーホールディングスは、弁護士JPニュース編集部の取材に対し、以下のようにコメントした。
「当社としては、不当労働行為に該当する組合間差別を行った事実はないと認識しております。
申立組合に対しては労働組合法に則り、誠実に交渉を積み重ねてきたものであり、今回の申立は遺憾です。
今後も引き続き、労働組合法に則った誠実な対応を継続していく所存です。」

