突然の「回転性めまい」は“あの疾患”のサイン?長引く症状の違い【医師監修】

めまいの症状は疾患によって性質や持続時間が大きく異なります。正確な診断を受けるためには、自分が経験しているめまいがどの疾患に近いかを理解することが助けになります。前庭神経炎と混同されやすい「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」「メニエール病」「脳梗塞」との違いを、わかりやすく解説します。

監修医師:
大津 和弥(医師)

三重大学医学部卒業。三重大学附属病院で研修。市立四日市病院、三重大学附属病院などに勤務後、国立がんセンター東病院研修。三重大学附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 講師を務め、小松病院で一色信彦、田邊正博の音声外科医師の指導の下音声外科手術を研鑽。市立ひらかた病院耳鼻咽喉科部長、市立ひらかた病院耳鼻咽喉科主任部長、音声外科センター長などを歴任。大阪医科薬科大学臨床教授。現在は大津耳鼻咽喉科・ボイスクリニック 院長。

前庭神経炎の回転性めまいと他のめまい疾患の違い

めまいを引き起こす疾患は数多く存在し、前庭神経炎以外にも原因に応じた適切な対応が必要な疾患があります。前庭神経炎は、耳の奥から脳へ平衡感覚を伝える「前庭神経(ぜんていしんけい)」に急性の炎症などが起きる病気です。このセクションでは、前庭神経炎のめまいと混同されやすい他の代表的な疾患との決定的な違いを分かりやすく整理します。

良性発作性頭位めまい症との違い

めまいを起こす耳の疾患の中で、最も患者数が多いとされているのが「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」です。BPPVは、耳の奥(内耳)にある耳石(じせき)と呼ばれる炭酸カルシウムの小さな粒が本来の位置から剥がれ落ち、バランスを感知する三半規管(さんはんきかん)の中に入り込んで刺激することで、世界がぐるぐる回るような激しい回転性めまいが引き起こされる疾患です。

BPPVと前庭神経炎の大きな鑑別点は、めまいが持続する時間と発症のきっかけです。BPPVのめまいは、寝返りを打つ、横になる、起き上がる、上を見上げるといった「特定の頭の向きを変えた瞬間」に急に誘発され、じっと静止していれば数十秒から1分程度で自然と治まることがほとんどです。一方、前庭神経炎のめまいは頭の動きに関係なく突然生じ、数時間でおさまることはなく24時間以上(数日間)ずっとピークの激しいめまいが続きます。

また、BPPVでは安静にしていればめまいが落ち着くのに対し、前庭神経炎では横になって目をつむり安静にしていても、天井が回るような激しいめまいや吐き気が持続します。この特徴の違いを覚えておくと、受診時に医師へ状況を正確に伝えやすくなります。耳石を元の正しい位置へ戻す頭部運動手技(エプレイ法など)が直接有効なBPPVに対し、前庭神経炎では神経の炎症緩和や平衡訓練など異なる治療アプローチが必要となるため、正確な診断を受けることが極めて重要です。

メニエール病・脳梗塞との違い

メニエール病も前庭神経炎と同様に強い回転性めまいを起こしますが、最大の鑑別点は「耳鳴り・難聴・耳の閉塞感(耳が詰まったような感覚)」といった聴覚の異常を同時に伴うかどうかにあります。メニエール病は、内耳の中にあるリンパ液が過剰に溜まる「内リンパ水腫」によってめまいと聴覚機能の障害が同時に引き起こされます。また、メニエール病のめまいは20分から数時間程度で治まるものの、何度も作動して繰り返す(反復する)特徴があります。これに対し前庭神経炎では、耳聞こえや聴力への影響が全く見られず、強いめまいが一回性で数日間持続する点が明確に異なります。

さらに、最も緊急性が高く注意しなければならないのが、脳幹(のうかん)や小脳の血管が詰まったり破れたりして起きる「脳梗塞」や「脳出血」による中枢性めまいです。脳の平衡感覚を司る部位に障害が起きると前庭神経炎と非常によく似た激しい回転性めまいが現れます。脳血管障害によるめまいでは、舌がもつれてろれつが回らない、手足の痺れや脱力・麻痺、複視(ものが二重に見える)、激しい頭痛、歩こうとしても真っ直ぐ歩けず倒れてしまうといった神経症状を伴うことが多く見られます。このような症状が一つでも重なる場合は、命に関わる可能性があるため、躊躇せずただちに救急車を呼ぶなどの救急受診が必要です。

前庭神経炎は基本的にこうした脳の神経症状を伴わない点で区別されますが、高齢の方や生活習慣病をお持ちの方では、脳梗塞の初期症状としてめまいだけが単独で現れるケースもあるため自己判断は禁物です。突然強いめまいが起きた際は決して放置せず、耳鼻咽喉科や脳神経内科・脳神経外科を受診し、詳細な問診や眼振検査、必要に応じて画像検査(MRI検査など)を通じて正しく鑑別してもらいましょう。

まとめ

突然始まる激しい回転性めまいは、前庭神経炎による可能性があります。原因はウイルス感染や免疫の異常などが考えられていますが、まずは早期に医療機関を受診し、正確な診断を受けることが回復への第一歩です。治療は保険適用の範囲内で受けられることが多く、急性期の薬物療法とその後の前庭リハビリテーションを組み合わせることで、多くの方が日常生活に支障のない状態へと回復されています。めまいの症状が気になる方は、耳鼻咽喉科や神経内科への受診をご検討ください。

参考文献

日本めまい平衡医学会「前庭神経炎診療ガイドライン2021年版」

循環器病研究振興財団「めまいと循環器病」

厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」