「覚醒ホルモン」が少ないと「睡眠」にどのような影響が現れるかご存知ですか?
「昼寝」が覚醒ホルモンに与える影響とは?メディカルドック監修医が覚醒ホルモンと昼寝の関係について解説します。
監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。内分泌代謝・糖尿病内科専門医。
「覚醒ホルモン」とは?

「覚醒ホルモン」は医学的に1つのホルモン名を指す言葉ではありません。一般的には、日中に目を覚まし、集中力や活動性を保つために働くホルモンや神経伝達物質をまとめて表す言葉として使われます。代表的なものには、朝に分泌が高まりやすいコルチゾール、覚醒を安定させるオレキシン、交感神経を活性化するアドレナリン・ノルアドレナリンなどがあります。
睡眠と覚醒は、「眠気をためる力」と「体内時計による覚醒の力」のバランスで調整されています。昼寝はこの眠気を一時的に下げるため、上手に使えば午後の集中力を助けます。一方で、長すぎる昼寝や夕方以降の昼寝は、夜の睡眠を妨げることがあります。
覚醒ホルモンの働き

脳と体を活動モードに切り替える
覚醒ホルモンの大きな役割は、朝から日中にかけて脳と体を活動モードに切り替えることです。特にコルチゾールは、起床前後に分泌が高まり、血糖や血圧、代謝を調整して、体が動き出す準備を助けます。コルチゾールは「ストレスホルモン」と呼ばれることもありますが、悪者というわけではなく、朝に適切に高まり、夜に下がるリズムが大切です。
覚醒状態を安定させる
オレキシンは、脳の視床下部という場所で作られる神経ペプチドで、覚醒状態を安定させる働きがあります。オレキシンの働きが低下すると、強い日中の眠気や突然眠ってしまう症状が出ることがあり、ナルコレプシーという睡眠障害との関係が知られています。つまり、覚醒ホルモンは単に「目を覚ます」だけでなく、起きている状態を保つためにも重要です。
注意力や反応速度を高める
アドレナリンやノルアドレナリンは、交感神経を通じて心拍数や血圧を調整し、注意力や反応速度を高めます。緊張した場面で目が冴えるのは、この仕組みが関係しています。ただし、夜遅くまで強いストレスや光刺激を受けると、覚醒系が高まりすぎて寝つきが悪くなることがあります。覚醒ホルモンは「高ければよい」のではなく、時間帯に合った適切なリズムで分泌されていることが重要です。
「昼寝」が覚醒ホルモンに与える影響

午後の眠気や集中力低下を改善する
短い昼寝は、脳にたまった眠気を軽くリセットし、午後の眠気や集中力低下を改善する可能性があります。特に10~20分程度の昼寝は、深い睡眠に入りにくく、起きた後のぼんやり感が少ないとされています。短時間の昼寝により、覚醒ホルモンそのものを急激に増やすというより、「眠気の圧力」を下げることで、覚醒系が働きやすくなると考えるとわかりやすいでしょう。
昼寝が長いと頭がぼんやりする
昼寝が長くなると、深いノンレム睡眠に入り、起きた直後に頭がぼんやりする「睡眠慣性」が起こりやすくなります。30分以上寝た後に、かえってだるい、頭が重い、作業効率が落ちると感じるのはこのためです。覚醒ホルモンが不足したというより、脳が深い睡眠から急に起こされた状態と考えられます。
タイミングによって寝つきの悪さや夜間覚醒につながる
夕方以降の昼寝や長時間の昼寝は、夜に必要な眠気を減らしてしまい、寝つきの悪さや夜間覚醒につながることがあります。すると翌日の日中に眠くなり、また長く昼寝をするという悪循環に入ることがあります。昼寝は夜の睡眠の代わりではなく、あくまで補助的に使うことが大切です。
昼寝はどれくらいすればいいの?

一般的には、昼寝は10~20分程度、長くても30分以内を目安にするとよいでしょう。時間帯は午後早め、できれば15時頃までがおすすめです。短い昼寝は、仕事や勉強の集中力を回復させる助けになります。
一方で、1時間以上の昼寝を習慣的にしている場合は、夜の睡眠不足、睡眠時無呼吸症候群、うつ状態、薬の影響、生活リズムの乱れなどが隠れていることもあります。昼寝をしても眠気が取れない場合は、昼寝の長さだけでなく、夜の睡眠の質を見直しましょう。
日中に眠くなる・覚醒ホルモンが減少する原因

睡眠不足や生活リズムの乱れ
最も多い原因は、睡眠不足や生活リズムの乱れです。成人では、健康維持のために十分な睡眠時間を確保することが推奨されています。睡眠時間が短い状態が続くと、朝のコルチゾールリズムや体内時計が乱れ、日中に眠気、集中力低下、頭重感、イライラが出やすくなります。まずは内科、睡眠外来、心療内科などで相談できます。強い眠気で運転中に眠りそうになる場合は、事故につながるため早めの受診が必要です。
睡眠時無呼吸症候群
いびき、睡眠中に呼吸が止まる、夜間に何度も目が覚める、朝の頭痛、日中の強い眠気がある場合に睡眠時無呼吸症候群を疑います。睡眠中に酸素が下がることで睡眠が分断され、十分寝たつもりでも脳が休めません。耳鼻咽喉科、呼吸器内科、睡眠外来で検査できます。高血圧、肥満、心疾患がある方では特に注意が必要です。
過眠症
ナルコレプシーなどの過眠症では、覚醒を保つ仕組みそのものに異常があることがあります。強い日中の眠気、笑った時に力が抜ける、金縛り、寝入りばなの幻覚、短い睡眠で一時的にすっきりするなどが特徴です。疑われる場合は、睡眠専門医や脳神経内科を受診し、終夜睡眠ポリグラフ検査や反復睡眠潜時検査などで評価します。
覚醒ホルモンが減少すると睡眠にどのような影響がある?

午前中から頭が働きにくくなる
朝に覚醒系がうまく立ち上がらないと、起床後も眠気が残り、午前中から頭が働きにくくなります。これは単に「気合いが足りない」のではなく、睡眠不足、体内時計のずれ、ストレス、病気などが関係することがあります。
夜に自然な眠気がたまりにくくなる
日中の活動量が落ちると、夜に自然な眠気がたまりにくくなります。その結果、夜になっても寝つけない、眠りが浅い、朝すっきりしないという悪循環が起こります。覚醒と睡眠は別々ではなく、日中の過ごし方が夜の睡眠を作っています。
睡眠の質が下がる
覚醒ホルモンのリズムが乱れると、夜に目が冴えやすくなることもあります。特に夜間のスマートフォン、遅い時間のカフェイン、強いストレス、夜遅い運動などは、体を活動モードに傾け、睡眠の質を下げる原因になります。
「覚醒ホルモン」を上手にコントロールする方法

朝起きたら光を浴びる
朝の光は体内時計を整え、日中の覚醒と夜の眠気のリズムを作る重要な刺激です。可能であれば起床後にカーテンを開け、朝食をとり、軽く体を動かすとよいでしょう。
早めの時間に短い昼寝を
昼寝のおすすめの時間は10~20分程度です。眠気が強い日は、昼寝の前にコーヒーやお茶などで少量のカフェインを摂る「カフェインナップ」が合う方もいます。ただし、カフェインに弱い方、不整脈や不安症状がある方、夕方以降は避けましょう。
夜は脳を休息モードに切り替える
夜は覚醒系を下げる環境作りが大切です。寝る直前のスマートフォン、夜遅い食事、飲酒、激しい運動は控えめにしましょう。寝床で長時間考え事をする習慣がある方は、就寝前に予定や不安を書き出す、照明を落とす、入浴で体を温めるなど、脳を休息モードに切り替える工夫が有効です。
「覚醒ホルモンと昼寝」についてよくある質問

ここまで覚醒ホルモンと昼寝について紹介しました。ここでは「覚醒ホルモンと昼寝」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
昼寝は何分くらいが覚醒ホルモンの働きに効果的ですか?
久高将太(医師)
10~20分程度がおすすめです。短い昼寝は深い睡眠に入りにくく、起きた後のぼんやり感が少ないため、午後の集中力を助けます。30分を超えると睡眠慣性が出やすくなるため、仕事や運転前は特に注意しましょう。
休日の長時間の昼寝は覚醒ホルモンのバランスを崩しますか?
久高将太(医師)
たまに疲れを補う程度であれば大きな問題はありません。ただし、毎週のように数時間寝てしまう場合は、平日の睡眠不足や睡眠の質の低下が隠れている可能性があります。夕方まで寝ると夜の寝つきが悪くなり、体内時計が後ろにずれやすくなります。
昼寝の前にカフェインを摂るとスッキリ目覚めるのは本当ですか?
久高将太(医師)
本当です。カフェインは摂取後しばらくしてから眠気物質であるアデノシンの働きを抑えるため、短い昼寝と組み合わせると目覚めがよくなることがあります。ただし、効果には個人差があり、午後遅くのカフェインは夜の睡眠を妨げることがあります。
まとめ昼寝は短く上手に使い、日中の強い眠気は病気の可能性も念頭に相談しましょう
「覚醒ホルモン」は単一のホルモンではなく、コルチゾール、オレキシン、アドレナリン系など、脳と体を日中の活動モードに保つ仕組みを指す言葉として理解するとよいでしょう。昼寝は、短く上手に使えば午後の眠気や集中力低下を改善する助けになります。一方で、長すぎる昼寝や夕方以降の昼寝は、夜の睡眠を妨げることがあります。
日中の眠気が強い、十分寝ても眠い、運転中に眠くなる、いびきや無呼吸を指摘される、突然眠ってしまうなどの症状がある場合は、生活習慣だけで片づけず、睡眠外来、脳神経内科、呼吸器内科、耳鼻咽喉科などで相談しましょう。昼寝は便利な回復法ですが、眠気の原因を見逃さないことが大切です。
「覚醒ホルモン」と関連する病気
「覚醒ホルモン」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
睡眠障害
ナルコレプシー特発性過眠症睡眠時無呼吸症候群概日リズム睡眠・覚醒障害
内分泌系
副腎不全
日中の強い眠気は、睡眠不足だけでなく、睡眠障害やホルモン異常のサインであることがあります。
「覚醒ホルモン」と関連する症状
「覚醒ホルモン」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
日中の強い眠気
朝起きられない
集中力が続かない
頭がぼんやりする
いびき寝つきが悪い
昼寝で一時的に改善しても、眠気が長く続く場合は、夜の睡眠の質や病気の有無を確認することが大切です。
参考文献
健康づくりのための睡眠ガイド2023|厚生労働省
不眠症|厚生労働省 e-ヘルスネット
眠れない理由|厚生労働省 こころの耳

