NHK夏の音楽特番「うたであえたら」は北川景子のMCが見事 カオスと化した近年の紅白はお手本に(桧山珠美/コラムニスト)
【桧山珠美 あれもこれも言わせて】
北島三郎(2)2018年に次男が急逝「息子だけど、音楽の、とても良い仲間でもあった」
8月15日放送「NHK夏の音楽祭 うたであえたら2026」を見た。
今年から始動した新たな大型音楽特番ということで「どんなものか」とチャンネルを合わせたのだが……いい意味で肩の力が抜けた心地よい音楽番組になっていた。
最近の音楽特番は出演者をめまぐるしく登場させ、豪華コラボを連発する慌ただしいものになりがち。歌よりダンス、歌よりも演出が前面に出て肝心の「歌」は二の次、三の次。何を歌っているのか分からない。じっくり歌や歌詞を味わいたい視聴者にとっては落ち着かないことしきりだが、これは違った。シンプルにじっくり聴かせる。知っている人が知っている歌を歌ってくれる。それだけのことがこんなにも心を落ち着かせてくれるのかと思った。シンプルさがむしろ新鮮に映る。
MCは二宮和也、大森元貴、音楽番組初司会となる北川景子の3人。朝ドラ「あんぱん」に“いずみたく”役で出演し、放送中の朝ドラ「風、薫る」の主題歌を担当するなど「NHKは本当にミセス(大森元貴)がお好きなのね」という愛ある邪推はともかく、北川の適応力はすごい。
初MCとは思えぬほど堂々とした進行、番組にすっと馴染む聡明な振る舞い。しかも、前に出過ぎることもない。歌手を立て、歌を立て、軽やかにつなぐ。音楽番組のMCとして実に見事。番組中、夫のDAIGOが登場し、結婚会見以来の夫婦共演というサプライズも。感想を聞かれた北川は「一言でいえば、O・A・Gです」と見事なDAI語で返した。意味は「お付き合い、ありがとう、ございました」。
番組は3部構成、計3時間あまりの長丁場だが、休憩が挟まることでゆるやかに楽しめた。
■高田渡から純烈、だんご3兄弟まで幅広く
高田渡「生活の柄」を歌うハンバート ハンバート、「妹」「神田川」を歌う南こうせつ、「さとうきび畑」を歌う森山良子、「いのちの理由」を歌うさだまさしなどベテラン勢の名曲はやっぱり心に染みる。かと思えば、モナキと純烈によるムード歌謡「星降る街角」やM!LKのキャッチーなステージなど話題のグループもちゃんとピックアップ。ちびっ子向けのEテレ特集、「北風小僧の寒太郎」「だんご3兄弟」といった懐かしのヒット曲が並び、大人の視聴者をおいてきぼりにしない配慮もいい。
ふと思ったのは「紅白歌合戦」のこと。
近年の「紅白」は若い世代を意識するあまり、K-POPや大人数のダンスグループばかりが目立ち、番組そのものがカオスと化している。どうせ若者は見ないのだからと割り切って、大人が家族と一緒に腰を据えて楽しめる番組に戻ってはどうか。本当に一年を通してはやった歌を数曲。そして誰もが口ずさめる懐かしのメロディー。そこにちょっとした遊び心と、歌い手の人生がにじむようなステージがあればいい。
(桧山珠美/コラムニスト)
