―2026年7月 米国株式市場の軌跡:S&P投資戦略部(2026年8月配信)―

●市場概況

 米国株式市場は7月、再燃した中東情勢の緊張、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策を巡る見通しの変化、ならびにAI関連投資支出に対する慎重な見方などを背景に、変動の大きい展開となりました。ハイパースケーラーによる設備投資への懸念や、大型テクノロジー企業の決算に対する市場の反応がまちまちだったことから、市場が不安定となる局面も見られました。一方で、インフレの鈍化や底堅い企業業績が支えとなり、月末にかけて市場は持ち直しました。S&P500 は月間で0.1%下落し、ほぼ横ばいで7月を終えました。

 しかし、市場の内訳を見ると、相場をけん引する銘柄の裾野は大きく広がりました。S&P 500均等加重指数は7月に1.0%上昇し、時価総額加重型のS&P 500を2ヵ月連続で上回りました。こうした傾向は2026年を通じて明確に見られており、年初来ではS&P 500均等加重指数が13.3%上昇したのに対し、時価総額加重型のS&P 500は10.1%の上昇、S&P 500 Top 50はわずか3.0%の上昇にとどまっています。均等加重指数が継続的に相対的な強さを示していることは、市場の上昇が一部の超大型株に集中するのではなく、より幅広い企業へと広がりつつあることを示唆しています。

 一方、中小型株は7月、大型株に対して出遅れる展開となり、S&P MidCap 400は2.4%、S&P SmallCap 600は1.9%それぞれ下落しました。月間では下落したものの、S&P SmallCap 600は引き続き米国の主要株価指数の中で最も高いパフォーマンスを示しており、年初来では21.5%上昇しています。これは、S&P 500の年初来上昇率10.1%の2倍を超える水準です。

●セクター別・業種別動向

 セクター別のパフォーマンスは、他の資産クラスの動向にも影響を受けました。地政学的緊張の高まりとエネルギー価格の急騰を背景に、エネルギーセクターは12.0%上昇し、セクター別で最も高いパフォーマンスとなりました。これは、7月にS&P GSCIエネルギー指数が22.5%上昇した動きとも整合的です。

 一方、米国債利回りの上昇は、デュレーションの長いグロース資産や、その他の金利感応度の高い市場分野の重しとなり、バリュー志向のセクターへの幅広い資金シフトを促しました。こうした環境下で、金融(+6.2%)、不動産(+2.5%)、ヘルスケア(+2.4%)、生活必需品(+2.1%)は、市場全体を上回るパフォーマンスとなりました。

 これに対し、AI関連の投資計画に対する慎重な見方が強まったことで、半導体企業から超大型ハイパースケーラーに至るまで、AIバリューチェーンの幅広い領域で調整が見られました。その結果、情報技術セクターは月末の最終2営業日に大きく反発したものの、月間では3.0%下落しました。こうしたセクター間のパフォーマンスのばらつきは、相場のけん引役が一部のテクノロジー株に集中する状況から、より幅広い市場要因へと移行しつつあることを示しています。

●ファクター

 セクターのけん引役の変化は、ファクター戦略にも同様に表れました。バリュー、インカム志向、ディフェンシブの各ファクターが好調で、S&P 500 Pure Value(+4.5%)、High Dividend(+3.8%)、Low Volatility High Dividend(+3.4%)、Buyback(+2.6%)、Low Volatility(+1.9%)などが、特に高いパフォーマンスを示しました。