U12アジア選手権V 桑田真澄監督「今日食べるものがないぞ…」救った12歳の一言とは
「第12回BFA U12アジア選手権」(中国・杭州)で3大会ぶり2度目の優勝を果たした侍ジャパンU12日本代表が16日、羽田空港で帰国会見を行った。
高校日本代表に選出された85年のPL学園(大阪)時代以来、41年ぶりに日の丸を背負った桑田真澄監督は「本当にうれしかった。肩の荷がようやく下りた」と充実の表情。1週間で6試合を戦う過密日程の中、決勝は難敵の台湾を3―0で下した。オープニングラウンドから無傷の6連勝での優勝。決勝で5回無失点、7奪三振の好投で大会MVPに輝いた石井裕翔(都賀の台レッドウィングス)は「どんな状況でも厳しいコースに投げられた」と胸を張った。
激闘を制した侍ジャパンだが、グラウンド外ではもう一つの過酷な闘いがあった。現地での「食事」だ。慣れない現地の食事に、初日には多くの子どもたちから「もう帰りたい」と弱音が漏れるほど環境は厳しかった。実は、最も頭を抱えていたのは指揮官自身。「大人の僕でも、今日食べるものがないぞ……」と、ビュッフェ会場で空のお皿を手にしたまま立ち尽くしてしまう一幕もあったという。
そのレジェンドのピンチを救ったのは、なんと12歳以下の子どもたちだった。フリーズしている指揮官の元へ歩み寄ると、「監督、チャレンジですよ!僕たちもチャレンジしてるんですから!」とまさかの逆ハッパ。これには桑田監督も苦笑いしつつ、「そうだ、チャレンジだ」と我に返り、子どもたちに負けじと野菜を皿に盛った。
このユーモラスなやり取りがチームの結束をさらに強め、子どもたちも進んで食事に挑戦。過酷な暑さの中でも熱中症での脱落者はゼロに抑え、桑田監督は「あの食のチャレンジが、優勝の一番の土台になった。子どもたちに励まされました」と目を細めた。
グラウンドでは「桑田流」の緻密な改革が光った。近年、メジャーリーグなどの流行で子どもたちの間でもフライを狙う大振りが目立っていた。これに対し桑田監督は、毎晩のミーティングで「バットに当たらないと何も始まらない。繋ぐことが日本の野球の持ち味だ」と説き、フライではなく狙った方向へゴロを打つ打撃を徹底。投手陣にも「ストライクが入らなければ何も起きない」と、制球力の重要性を論理的に指導した。
悲願の頂点に立った瞬間、選手たちが提案した胴上げを指揮官は断り、一人一人と固いハグを交わしたという。「胴上げよりも、子どもたちをしっかりとこの手で抱きしめてあげたかった」。子どもたちと互いに励まし合い、愛情深く、そして緻密に導いた桑田監督が、最高の形でアジアの頂点へ上り詰めた。(柳原 直之)

