人生を狂わせる飲酒運転 「懲戒解雇」「自宅売却」 重傷ひき逃げ事件の加害者と被害者は 飲酒運転ゼロへ①
3人の幼い命が奪われた飲酒運転事故から、8月で20年です。FBSでは、飲酒運転の撲滅に必要なことを考える企画をお届けしています。今回は、ある事故の裁判を通して、飲酒運転が人生を狂わせる現実をお伝えします。
事故が起きたのは、ことし3月8日未明のことでした。
現場は、福岡空港そばの福岡市博多区金の隈。高速道路の下を通る、緩やかなカーブの県道です。
時速およそ40キロで走行していた車は、カーブを曲がりきれずに対向車線にはみ出し、自転車をはねました。
【気がついたら病院に】
私たちは、はねられた男性に話を聞くことができました。
■はねられた男性
Q.どういう状況で事故が起きたのでしょうか?
「バイトの終わりに近くのコンビニで軽く買い物を済ませて、コンビニを出たあとから記憶がなくて、気がついたら病院のベッドの上だった。」
記憶を失うほどの強い衝撃。
事故の激しさを物語るように、自転車のカゴと前輪は、ぐにゃりと曲がっていました。
■はねられた男性
「ヘルメットが割れたり欠けたりしていて。ヘルメットをしていなかったら確実に死んでいただろうなと考えて、怖くなりました。(病室に)両親が来た時に、事故に遭ったとか、ひき逃げだったと聞いて。」
男性をはねた車は、現場から逃走していました。
しかし、事故からおよそ3時間後、車の運転手が警察に自首しました。
【発覚を免れるため逃走】
逮捕されたのは、運送会社の社員だった45歳の男です。
警察によりますと、呼気からは基準値を超えるアルコールが検出されました。
『自宅で焼酎を1.5合と350ミリリットルの缶チューハイを1本飲んだ。』
逮捕容疑は「ひき逃げ」と「過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱」でした。
飲酒運転の発覚を免れるため、現場から逃げた疑いです。
【恐怖・混乱でパニック状態に】
裁判では、自首するまでの経緯が明らかになりました。
検察の冒頭陳述によりますと、男は夜、自宅で焼酎や缶チューハイを飲んだあと、さらに飲食店で酒を飲もうと、知人に電話し、約束を取り付けました。
そして、知人と会うために、酒を飲んだ状態でハンドルを握ったといいます。
しかし、知人から急きょ会えなくなったと連絡が入り、自宅に戻る途中、さらに酒を購入しようかなどと考えていたところ、事故を起こしました。
■弁護士
『なぜ、逃げたんですか。』
■男
『その時は恐怖・混乱で、パニック状態になったのが原因です。』
【およそ3時間後に自首】
事故でパニックになったという男が向かったのは、一緒に酒を飲む予定だった知人の家でした。
そこで、知人などから警察に行くよう促された男は、事故からおよそ3時間後、現場から10キロ以上離れた早良警察署に自首しました。
【懲戒解雇・自宅は売却】
証人尋問では、男の妻から、飲酒運転が一度ではないような証言がありました。
■男の妻
『飲酒運転をしたことはあると思います。(夫がお酒を飲んで)帰ってきて、運転した?と聞いたら、ニヤッとしたことがありました。』
■弁護士
『事故後の影響はありましたか。』
■男の妻
『娘(20)は就職試験の当日で、受かるのかなって。』
飲酒運転で事故を起こしたことで、男と家族の生活は一変しました。
男は運転免許を取り消され、再取得できない欠格期間は、最も長い10年に。
勤務していた運送会社からは懲戒解雇され、退職金は支給されませんでした。住宅ローンの返済が見通せなくなり、自宅を売却することにしたといいます。
【過信があった】
なぜ、あの時、ハンドルを握ってしまったのか。
■検察官
『飲酒運転が犯罪だと分かっていたんじゃないですか。』
■男
『自分もこの立場になっていなかったので、軽く見ていたと思います。自分なら大丈夫、事故を起こさないという過信があったと思います。』
男は、欠格期間が終了しても再び免許を取得するつもりはなく、酒は「一生飲まないと考えている」と話しました。
【執行猶予付きの有罪判決】
ことし6月に開かれた判決公判で、福岡地裁の菅原光祥裁判官は。
『躊躇(ちゅうちょ)するさまなく飲酒運転に及んでいて、飲酒運転に対する規範意識の低さが著しいと言わざるを得ない。』
一方、事故発生からおよそ3時間後に自首したこと、現在は車の運転免許が不要な仕事に就き、運転を再開する予定はないことなどを挙げ、男に対し、拘禁刑1年6か月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。
【被害者は】
はねられた男性はリハビリを経て、ことし6月にようやく職場に復帰し、週1回の勤務を始めました。
■はねられた男性
「なくなった3か月が、ちょっとつらいです。」
Q.執行猶予付きの判決について
「ちょっとびっくりしました。執行猶予が付くんだと思って。同様のことを起こさないかな、大丈夫かなという怖さの方が先にあります。」
たとえ1杯のお酒でも、飲酒運転は被害者、加害者、そして家族の人生を狂わせます。
【飲酒運転に新基準】
飲酒運転をめぐっては、7月から新たな基準が設けられています。
呼気1リットルあたり0.5ミリグラム以上のアルコールが検出された場合は、酒酔い運転の適用対象になります。
さらに、人をケガさせたり死なせたりした場合は、危険運転致死傷罪の適用対象となりました。
数値基準を下回っていたとしても、「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」と判断された場合は、適用対象となります。
※FBS福岡放送めんたいワイド2026年8月11日午後5時すぎ放送
