「軍艦にハワイって…」今も残る「軍艦じゃんけん」、ネットでは「不謹慎」の声も いつ、どこで生まれた? 専門家に聞いた

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誰もが知る身近な遊び、じゃんけん。かけ声にはさまざまなバリエーションがあるが、その一つが「軍艦(戦争)じゃんけん」だ。グーを「軍艦」、チョキを「朝鮮」、パーを「ハワイ」に置き換え、「ぐんかん、ぐんかん、ハワイ」などと口にしながら遊ぶ。

【画像】軍艦じゃんけんと同じ? でも“不謹慎”の声が少ない子どもの遊び

 

かけ声には地域によって違いがあるものの、現在も一部の子どもたちが遊んでいる例が確認されているという。一方で、戦争を連想させるこうした言葉を使うことに、「不謹慎だ」といった見方もある。そもそも、この遊びはいつ、どこで生まれたのか。「軍艦じゃんけん」の由来について、専門家に聞いた。

「いまだにこんな不謹慎な遊びをするとは思いませんでした」

2人の小学生の子どもを育てる都内に住む40代の父親は、子どもたちが旅先である沖縄で突然「軍艦じゃんけん」を遊び始めたと言う。

「夏の家族旅行で沖縄に行ったのですが、小学生の子どもたちが突然『軍艦、軍艦、朝鮮』とじゃんけんで遊び始めたんです。僕自身も昔遊んだことがあるので知ってはいましたが、自分の子どもたちがその遊びをしているのは初めて見ました。子どものやっていることとはいえ、周囲はどう思うかわからない、さすがに不謹慎だとおもい、焦って、すぐにやめさせました」

一方、都内の別の50代の男性からは、こんな声も聞かれた。

「軍艦じゃんけんは、子どもの頃によく友達と遊びました。懐かしいですね。『軍艦、朝鮮、ハワイ』でした。じゃんけんにもいろいろな掛け声があって、その中の一つが軍艦じゃんけんでした」

懐かしい」と振り返る人がいる一方で、「不謹慎」「不適切」との声も聞かれる「軍艦じゃんけん」。ネットやSNSの書き込みでも、同様の書き込みが目立つ。では、この遊びはいつ頃から子どもたちの間で遊ばれてきたのだろうか。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所の高橋浩徳研究員に話を聞いた。

「江華島事件(1875)、日清戦争(1894)、日露戦争(1904)、第一次世界大戦(1914)と戦争が続いた中で生まれたと考えられますが、確証はありません。とにかく遊びというのは、いつどこで発生したかというのがよくわからないものなのです」

「軍艦じゃんけん」に使われる言葉の由来については、当時の社会情勢との関係が考えられるという。

「江華島事件では朝鮮と軍艦が登場します。日露戦争直後には手まり歌で『一列談判破裂して』で始まるものが流行りました。破裂はこうした当時の流行語・歌との関連があると考えられます。ハワイは太平洋戦争の真珠湾攻撃からではないかと思われます。

ラジオや新聞、大人たちの会話などで始終これらの言葉を聞かされ読まされたことによって耳に残り、グー、チョキ、パーの代わりに使ってみようということになったと考えられます」

北海道から沖縄まで…全国に広がる「軍艦じゃんけん」

では、「軍艦じゃんけん」はどのような地域や世代で広まったのだろうか。地域によって掛け声や遊び方に違いはあるのか。

高橋研究員によると、これまでに次のような呼び方が確認されており、広まった年代は、じゃんけんを遊びとして行う「幼年層から小学生くらい」ではないかという。

グー:軍艦、戦艦(福岡)

チョキ:朝鮮、沈没、ちゅうい(中尉か注意か不明、奈良)、ちょいす(意味不明、愛媛、島根)

パー:ハワイ、破裂、はんや(意味不明、奈良)、はば(意味不明、青森、長野)

「北海道から沖縄まで採取されていますので、全国的なものと考えられます。地域性ですが、ある言葉がある県で採取されたとしても、それがその県の言い方、ということにはなりません。およそこういった言葉は隣の町、隣の学校、一つ違った学年でも異なるのが普通です。きちんと広範囲かつ広い年代から採取しないとその地域、その年代のもの、ということができません。そのため採取された地域を示すことは意味がないと考えます」

地域によってさまざまな形に変化しながらも、全国に広がる「軍艦じゃんけん」。その背景には、じゃんけん自体が持つ「遊びやすさ」があるのかもしれない。高橋研究員は、じゃんけんという遊びの魅力について次のように指摘する。

「時間が短い。瞬間的に勝負がつく。見た目がわかりやすい。遠く離れていてもわかりやすい。引き分けが少ない。年齢や体力などに関係なく勝敗は平等。

以上の理由から、一人を決めたり、順番を決めたりするのに非常に合理的なシステムだといえます。ただ昨今は、一人を決めたり、順番を決めたりする目的で行われるのがほとんどで、遊びの目的でじゃんけんをする人は少ないでしょう。それは遊びの高度化、複雑化、多様化により仕方のないことと考えます」

「子どもだけで遊ぶものに親や学校が禁止しても無理な話でしょう」

一方、戦争や軍事に関する言葉を使った子どもの遊びについて、一部では「不謹慎ではないか」「禁止すべきではないか」といった意見もある。高橋研究員はこうした遊びをどのように捉えているのだろうか。

「子どもの遊びは大人のすることを真似するものです。例えば警察と泥棒に分かれて鬼ごっこをする『けいどろ』『どろけい』という遊びがありますが、泥棒が正しいと思うわけではなく、あくまで役割を演じているわけです。

子ども用のゲームで競馬のゲームやパチンコ台などがありますが、それに熱中したからといって、子どもがギャンブラーになるわけでもありません。

戦争ゲームが流行ると好戦的な人間になるのでは、と大人は危惧しますが、子どもはけっこうわかっているものだと考えます。また、子どもだけで遊ぶものに親や学校が禁止しても無理な話でしょう」

明日、終戦の日を迎える。戦争にまつわる言葉が、思わぬ形で子どもたちに受け継がれている「軍艦じゃんけん」。その言葉が生まれた背景として考えられる歴史や、由来をめぐる説を知り、子どもたちに伝えていくことも、大人の役割なのかもしれない。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班