(※写真はイメージです/PIXTA)

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世間では「孫は無条件に可愛いもの」とされがちですが、金銭的な不安を抱えるシニアにとって「孫の帰省」は必ずしも喜ばしいものではありません。内閣府の『高齢者の経済生活に関する調査結果』によると、ひとり暮らし高齢者の約4割が家計に不安を抱えており、優先してお金を使いたい項目でも「子や孫」への支出は同居世帯の約半数にとどまっています。

「孫に会いたくない」…年金月13万円・68歳おひとりさま女性の本音

「孫が来るたびに疲れるので、あんまり会いたくないのが本音です」

関東近郊で一人暮らしをしているサチコさん(仮名・68歳)は、数年前に夫を亡くしました。現在は、遺族年金と自身の国民年金を合わせた月額約13万円で生活しています。

サチコさんの悩みの種は、年に数回帰省してくる39歳の娘と、小学3年生になる孫娘の存在です。娘夫婦は子どもの自主性を重んじる方針から「叱らない育児」をしています。そのため、孫娘がどんなにわがままを言っても、注意することはありませんでした。

サチコさんの元へやってきても、孫娘は挨拶もせずに上がり込み、買ってもらったばかりのオモチャを散らかし放題。サチコさんが大切に手入れしている庭の鉢植えを倒しても、娘はスマートフォンから目を離さずに「あーあ、だめだよ」と言うだけです。

サチコさんが見かねて注意をすると、娘から「お母さん、そういう怒り方はやめて」と逆に指摘される始末でした。

「えー、たったこれだけ?」お小遣い1,000円で孫に文句を言われ絶句

それでもサチコさんは、孫が帰る際には必ずお小遣いとして3,000円を渡していました。月13万円の年金暮らしのなかで3,000円を捻出するのは簡単ではありませんが、少しでも喜んだ顔が見たいと、日々の食費を切り詰めて用意していたのです。

しかし前回の帰省時は、急な出費が重なったこともあり、サチコさんの手元に余裕がありませんでした。申し訳ないと思いながらも、「今回はごめんね、これで少しだけ好きなお菓子を買ってね」と、ポチ袋に1,000円札を入れて孫娘に手渡しました。

すると、すぐに袋を開けて中身を見た孫娘は、露骨に嫌な顔をしました。

「えー、たったこれだけ?」

お礼を言うどころか悪態をつく孫娘の姿に、サチコさんは言葉を失いました。さらに絶望的だったのは、そばで見ていた娘の態度です。

娘は子どもを叱るどころか、「今どき1,000円じゃ、ろくなオモチャも買えないよ。お母さん、次はもっと奮発してあげてよね」と一緒になって笑っていたのです。

“孫信仰”を捨てて自分のために…データが示す「おひとりさまシニア」の実態

内閣府の『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果』によると、「ひとり暮らし(単身世帯)」の高齢者のうち、「家計にゆとりがなく、多少心配である(23.5%)」、または「家計が苦しく、非常に心配である(18.0%)」と回答し、経済的な暮らし向きに不安を抱えている人の割合は合計で41.5%に達しています。これは、同居者がいる高齢者の懸念割合(28.2%)と比較して高い水準です。

また、同調査では、ひとり暮らし高齢者の平均金融資産保有額は1,293万円とサチコさんの貯蓄額に近い数値を示しているものの、「今後の生活のために必要だと思う金融資産額」の平均は2,013万円にのぼります。約800万円もの理想と現実のギャップがあるなかで、自分の老後の身を守るためには、たとえ数千円であっても無駄な支出を抑える工夫を求められるのが、ひとり暮らしシニアの切実な現実なのです。

将来、娘たちに金銭的な迷惑をかけたくないからと、夫が遺してくれた1,200万円の貯金には一切手をつけず、毎日切り詰めて暮らしてきたサチコさん。前回の帰省の一件で、何かがプツンと切れたといいます。

「こんな無神経な娘や孫のために自分が我慢し続けるなんて、本当にばかばかしいと気づきました」

家族のために自分を犠牲にしてきたサチコさんでしたが、その日を境に娘家族への見方が完全に変わりました。現在、サチコさんは娘からの「今度の連休、そっちに遊びに行っていい?」というLINEも断るように。

「最初は孫を可愛いと思えない自分にモヤモヤしていました。でも今は、無理をして付き合うのをやめたので気持ちが楽です」

実際、同調査の「今後、優先的にお金を使いたいと考えているもの」の結果を見ても、配偶者と同居している高齢者では「子や孫のための支出(学費、お小遣いなど)」と回答した割合が31.0%に達するのに対し、ひとり暮らしの単身高齢者では16.1%と、半分近くに低下しています。

ひとり暮らしの高齢者においては、周囲への援助よりも、「医療・介護の費用(29.0%)」「食費(41.0%)」「趣味やレジャー(27.3%)」といった、自己の生活の維持や充実に予算を回したいという現実的な意識変化がデータからも見て取れます。

世間の理想的なおばあちゃん像に縛られず、毅然と距離を置くことを選んだサチコさん。残りの人生は、家族の顔色をうかがうのではなく、自分のためにお金と時間を使っていくことを決意したのでした。

[参考資料]

・内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果