【NHK連続テレビ小説「風、薫る」】見上愛さん(一ノ瀬りん役)インタビュー
連続テレビ小説「風、薫る」。明治の時代にトレインドナース(訓練された看護師)として道を切り拓いた大関和と鈴木雅をモチーフとした、2人の女性の物語です。
看護婦の仕事を辞め、新潟で新たな道を歩み始めたりん。そんなりんを演じる見上愛さんに、これまでとこれからのりんのこと、そしてりんのバディ・直美についても語っていただきました。
※『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 風、薫るPart2』より、見上愛さんのインタビューの一部をお届けします。
デジタルマガジンでは画像タップで商品ページへ
直美たちの後押しで新潟へ
りんは新たな仕事に邁進します
りんは父親の信右衛門がコロリで亡くなり、亀吉との結婚生活は破綻し、娘の環を連れて上京するも当てはなく……と、若いころから試練の連続です。ただ一方で、元は家老の家柄で、両親の愛情を受けて育ったりんは、東京ではその育ちのよさを清水卯三郎さんにかわれて瑞穂屋で雇ってもらいました。さらに母の美津と妹の安の応援を得て看護の道へと進み、バーンズ先生の授業や看護実習をとおして多くのことを学んできました。実は恵まれている面もたくさんあって、りんはそのことにわりと無自覚だったと思うんです。
ところが、いざ看護婦になって「看護婦取締」という責任ある仕事を任されると、自分1人の力では何もできないことを思い知らされます。看護の仕事は、病気やけがの症状や、患者さんの思い、患者さんの家族の思い、病院の方針、当時の医療の技術、看護婦自身のコンディションなど、さまざまな要素を多面的に捉えて判断を下さなければなりません。りんはそこで迷ってしまいます。患者の気持ちが安らぐようにと思って取った行動が、かえって患者のためにならなかったのでは、という思いにもさいなまれます。人として「正しくありたい」と生きてきたりんが、「人としての正しさ」と「看護婦としての正しさ」は決して同じではない、正しさは一つじゃないと痛感するんです。つらいシーンが続きましたが、いろいろなことがうまくいかない悩みや苦しみを丁寧に演じたいと思いました。りんがぶつかった壁は、実際に看護の仕事をされている方々が経験していることかもしれません。看護のシーンは看護指導の先生がリハーサルや撮影に入っていて、「この病気はこういう痛みがあります」などと教えてくださるので、体を支えたり、立ち上がるのを手伝ったりと、台本を読んだだけでは想像できなかった看護の動作が自然とできるようになってきました。「それこそがりんたちが看護婦養成所で学んだ“観察”の第一歩」という看護の先生の言葉を胸に、これからも演じていきたいです。
本音をぶつけられる直美はもはやりんの本当の家族のよう
看護の仕事への自信を失ってしまったりんは、直美や捨松さんに背中を押されて新潟の女学校で舎監兼教師として働くことになります。新潟行きの決断に際して直美から「この家の本当の家族になる。環ちゃんの2人目のお母さんになる」と宣言されるシーン(第76回)は、りんと直美が本音をぶつけ合うやり取りも含めてとても心が動きました。りんは人に対して「優しく元気でいなきゃ」という気持ちが強い人だと思いますが、直美には言いたいことが言えるし、不機嫌な顔もできる。もはや家族のような関係になっていると感じます。上坂樹里さんのすてきなお芝居もあって、直美が環の本当のお母さんに見えるときもあります。
環の将来のため、家族の暮らしのため、新潟で新たなスタートを切ったりんは、女学生たちの指導に邁進します。看護婦取締として看護婦見習生や看病婦たちをうまく導けなかった分、ここではうまくやらなきゃと考えたはずです。りんが帝都医大附属病院で指導したのは、社会の偏見がまだ残る中で使命感を持って看護婦を目指す女性たちでした。だからこそ、患者に寄り添い過ぎるりんの看護に疑問を持ったり、りんが思う優しさや正しさにむしろ追い詰められてしまったのだと思います。一方、新潟の女学生たちは、お嫁に行くのが当たり前の価値観の中で暮らしているので、りんの自立した生き方に刺激を受けることも多いと思います。新潟でのりんは年齢も経験もそれなりに重ねているので、これまでよりも落ち着いた雰囲気を意識して演じています。
この続きは、『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 風、薫るPart2』でお楽しみいただけます。
本書は見上愛&上坂樹里撮りおろしグラビアや登場人物関係図、名場面グラビア、出演者紹介、美術企画、タイトルバックの世界紹介、りんをとりまく3人の男たち~シマケン・虎太郎・横沢~特集などなどドラマをより深く楽しめる独自企画も収載。朝ドラファン必携の1冊です。
取材・文=髙橋和子 撮影=山田大輔
ヘア&メイク=下山さつき スタイリング=豊田健治
見上 愛(みかみ・あい)
2000年生まれ、東京都出身。近年の主な出演作に、映画「不死身ラヴァーズ」(主演)、「国宝」「正直不動産」、劇場アニメ「ALL YOU NEED IS KILL」、ドラマ「恋愛バトルロワイヤル」(主演)、「119エマージェンシーコール」「喧嘩独学」など。第49回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。NHKでは、大河ドラマ「光る君へ」、「きれいのくに」などに出演。

