“最強”侍ジャパンはなぜ負けたのか? コーチ陣を連続直撃「言えない色々な事情がある」まさかの敗戦のウラで起きていた“内紛”
〈《WBC惨敗の真実》侍ジャパン選手が吐露「僕らは負けるべくして負けた」、大谷翔平が「マジで笑わなくね?」戸惑った井端ジャパンの空気〉から続く
8人のメジャー組を揃え、連覇を目指した侍ジャパン。全勝でマイアミへ乗り込むも、ベネズエラに逆転負けを喫した。なぜ過去最低のベスト8に終わったのか。
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新監督の船出の前に総括すべき敗戦を週刊文春は総力取材。選手たちと“内紛”が起きていたという情報をキャッチした前編に続き、後編ではコーチたちに話を聞いた。(初出「週刊文春」2026年5月7日・14日号 前後編の前編/前編を読む)
経験の浅いコーチ陣
支えるコーチ陣にも綻びがあった。宮崎合宿でのこと。ブルペンで投手が投げているにもかかわらず、吉見一起投手コーチも、能見篤史投手コーチもいなかったことがあったのだ。
「日本代表に入るまで、吉見さんはプロのコーチ経験がなく、能見さんは選手兼任コーチが2年間だけ。2人とも経験が浅く、球種ごとの回転数など数値を見ても選手に具体的な説明ができないと囁かれていた。強化試合の途中から、ベンチの吉見さんと、ブルペンの能見さんが配置転換になる事態も起こった」(スポーツ紙記者)
投手陣では、選手選考の偏りによる弊害も生まれていた。松井裕樹や平良海馬など中継ぎ投手が怪我などで相次いで辞退したため、追加招集したのだが、軒並み先発ばかり。結果、本職のリリーフ投手は大勢、松本裕樹、藤平尚真の3人だけ。
「中日との壮行試合で、9回に守護神の大勢が足がつって降板。普段は先発の郄橋宏斗が登板することになり、『嘘でしょ』と急いで準備を始めた。中日の井上一樹監督も、『大丈夫かな』と心配していた」(同前)
1次ラウンドは打線が爆発し、大勝が続いたため、不安要素が表に出ることはなかった。それが一気に噴出したのがベネズエラ戦だ。
先発の山本が2失点するも、3回裏に森下のスリーランで逆転。3点リードで5回からリリーフ陣に後を託すことになったが……。
「第2先発の隅田知一郎がマイケル・ガルシアにツーランを浴び、1点差に迫られる。6回には伊藤大海がウィルヤー・アブレイユに逆転のスリーランを許す。さらに代わった種市篤暉が2塁牽制の際に悪送球をして、8点目を献上してしまった」(運動部デスク)

伊藤大海 ©時事通信社
ブルペン陣の崩壊はなぜ起きたのか。別の代表関係者が声を潜めて話す。
「相手の強さに首脳陣が慌てていたのか、予定にない采配が続いた。当初、第2先発は菊池雄星の予定でしたが突然、隅田に変更になった。伊藤は何とブルペンで5球しか投げられないままマウンドに向かわされた」
「もういいわ。やめましょう!」
種市は9回から登板予定だったが、急遽7回から行くことになったという。
「結果がすべてではありますが、十分な準備ができない中で戦犯扱いされ、誹謗中傷に晒される選手が不憫です。球場からホテルに帰るバスの中で種市は『マジで許せない』とコーチ陣に怒り心頭でした」(同前)
試合直後には、こんな一幕もあった。
「負けた瞬間、吉見コーチが選手に向かって『シーズン頑張ってね』と言い放ったのです。怪我でシーズンを棒に振るかもしれないリスクを背負って戦ったのにと、その能天気ぶりに選手は呆れていた」(同前)
冒頭のロッカールームの場面に戻ろう。井端監督は自分のスピーチが終わると、金子誠ヘッドコーチに話を振ったという。
「すると金子コーチは『これがいまの実力。世界との差があった』と選手に非があるような言い方をしたのです。監督がさらに別のコーチに話を振ろうとしたところで選手の不満が爆発。『もういいわ。やめましょう!』と打ち切りの声が上がった。能見コーチも『締めましょう』と言い、険悪な空気のまま、チームは解散となったのです」(同前)
これが、ドキュメンタリーでは映っていない、侍ジャパンの“内紛劇”の内幕だ。では、コーチ陣の言い分はどうか。まずは能見コーチを直撃した。
――中継ぎが打たれて逆転されてしまった。
「向こうで3日しか(調整期間が)ないということもありましたし、体調不良者も出た。選手はよくやってくれたんですが、僕らがしっかり把握しておかなければいけないというか、未熟な部分もあった」
――第2先発が菊池から隅田に変わることを、隅田には事前に伝えていた?
「言わなかったです。言ったところでちゃんとできるかはまた別ですし、どの場面で投げるかわからない。状態などを加味し、菊池より隅田という判断だった」
「皆をつぎ込む形でいきたい」
――投手陣から不満が出ていると聞いた。
「不満は出るでしょう。短期間(の練習)で勝つため、自分のチームでの立ち位置とは違うことやるわけですから。でも最初からその気持ちで入ってもらわないと、チームが回らない。自分のプライドでどうこう言っているんだったら、出ない方がいい」
金子ヘッドコーチはどう答える
次はブルペン担当の吉見コーチにも尋ねた。
――種市が急遽、7回から登板になったと聞いた。
「本当です。『後ろの方で考えている』とは本人にも伝えていました。けれど、7回とも言っていなかったですし、9回とも言っていなかった。正直、種市に『いくよ』と伝えたら『え?』という反応はありました。言葉の伝わり方の違いがあったのかもしれません」
――伊藤が5球しかブルペンで投げられなかった。
「事実です。韓国戦でも同じような球数でいっていました。伊藤にも隅田の次にいくとは伝えていた。前倒し感はありましたが、球数が少なく肩が作れなかったというのは違うと思います」
――首脳陣と選手のコミュニケーション不足?
「これはきちんと書いて欲しいのですが、台湾戦、韓国戦はしっかり勝つため、監督は『皆をつぎ込む形でいきたい』という考え方だった。どこで投げるか聞いていないという発言が、一部の選手から出ているのは聞いています。(でも)皆が行くから調整してほしいと伝えていた。明確に『ここね』『第2先発ね』とは言っていない。どういう形が良かったのかは、教訓にしないといけないと思います」
――試合後選手に「シーズン頑張ってね」と言った?
「プロ野球選手として僕はシーズンが一番大切だと思っています。そのような発言をしたのかは正直覚えていないですけれど、選手が不快に思ってしまったなら申し訳ない気持ちです」
最後に金子ヘッドコーチを直撃した。
――投手陣が敗因の1つによく挙げられる。
「よく『なんであの選手が選ばれないのか』と言われますが、俺らもみんな選びたいのが本音です。けれど言えない色々な事情がある。選ばれた選手がいまのベストメンバーだった」
――ロッカールームでの「世界との差があった」発言に選手が怒っている。
「アメリカやベネズエラはもっとパワーだけのチームだと思っていた。けれど若い選手たちは雑ではなく、野球が凄く上手だなって思ったんです。それで『世界との差』って言っちゃったのかな……」
井端監督にも所属事務所を通じて見解を求めたが、期日までに回答はなかった。
大谷は28年のロス五輪出場に意欲を示している。だが、王座奪還を目指す前に、課題は山積みだ。
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