最近、街を歩いていたり、電車に乗ったりしているときに、水筒を持っている人をよく見かけるようになった。もしかすると以前ほどペットボトルを見かけなくなり、その代わりに水筒を持ち歩く人が増えたようにも感じる。

なにしろ日本という国は圧倒的にごみ箱が少ない。知る人ぞ知るといった場所にしかなく、そこを逃してしまうと、ペットボトルを飲み干しても捨てる場所が見つからず、そのまま自宅まで持ち帰ることも珍しくない。それだったら、かわいいボトルで冷たい、暖かい、あるいは常温で好きな飲み物を持ち歩こうという気にもなる。サステナ的にもそのほうがいい。大きなボトルで飲み物を買って、水筒に入れて持ち歩けばコスト的にも安上がりだ。水筒携行をよく見かけるのは、そんな背景もありそうだ。

先日、業界大手のサーモスが秋冬新製品の発表会を開催、新型水筒やフライパンシリーズを紹介した。同社は水筒メーカーからライフスタイルブランドへの転換を掲げ、調理用品など新カテゴリーの拡充も進めている。日本国内の魔法瓶、ステンレスボトルの市場においては、4割前後のトップシェアを持つメーカーだ。同社は世界で初めて真空断熱魔法瓶を事業化し、保温・保冷ボトルの代名詞ともいえるブランド認知を獲得した。グローバル市場においても最大手の地位を獲得している。

この秋冬向けサーモスの新製品

サーモスは水筒のメーカーから、今後はライフスタイルのブランドへと進もうとしている。新カテゴリーの拡充のチャレンジも積極的だ。今回は料理もできるお皿も発表された。このままフライパンとして使える。金属なので電子レンジがNGなのが惜しい…

同社によれば、ステンレス製魔法瓶の市場は2021年以降、年間約1300万本前後で安定していたが、2024年には物価高の影響で少し減少したものの、直近の6月は酷暑だったこともあり、需要が回復、そのニーズの高さを確認したという。秋冬新製品発表会でありながら、直近の酷暑や保冷ニーズ、さらには通年使えるラインナップが強調されていた。

トレンドは持ち運びやすさで、キャリーハンドルを搭載した商品が人気だという。また、手入れのしやすさにも注目され、食洗機対応や内側のセラミック加工などのアイテム数が増えているという。同社のセラミック加工はセラクリーンコートと呼ばれ、内部に渋などの汚れがこびりつかず、サラッときれいになって、撥水性が高くて乾きも速いのだそうだ。

知らない間に水筒のキャップがゆるんで、カバンの中がビショビショになるというのは悲劇だが、同社のボトルの安全構造は絶対的な安心感がある。ロックをはずしてボタンを押すだけで片手で飲めるような機構も便利だ。ファッショナブルなクスミカラーのものは、外から見えるようにして携行するにも抵抗がない。

効果的な水分補給の推奨温度は5〜15℃だそうだ。同社は夏場のスポーツ時の飲み物の温度として「5-15℃ PROJECT(ゴーイチゴ・プロジェクト)」としてアピールしている。冷やした飲料は常温の水よりも胃から腸への排出が早く体内に素早く吸収される。また、運動時に上昇する体内の中心温度を冷却することで、熱中症防止やパフォーマンス維持に貢献する。同社の優れた真空断熱技術により、最適な温度を長時間キープできるので、さまざまなシーンに対応できるとのことだ。

実際の暮らしの中では、ゴクゴクと一度に大量の水を飲むよりも、ほんの少し飲んでのどを湿らせるくらいの量で十分なことも多い。350mlのペットボトルでも少し多かったりするわけで、量を持て余してしまう。でも、残りをペットボトルのまま持ち歩いていれば、この猛暑ではアッという間に生ぬるくなってしまう。そうしたことを考えても、保温水筒に入れた飲み物を持ち歩くというのはサステナ、コスト、合理性など、いろんなメリットがあるといえそうだ。

真空断熱魔法瓶は、金属やガラスの二重構造とその隙間を真空状態に保つことで、圧倒的な保温・保冷力を実現した容器だ。熱が伝わるには伝導、対流、放射の原理があるが、これらのすべてを抑え込む構造になっている。かつての魔法瓶が元祖だが、当初はガラス製で割れやすかった。小学校のころ、手を滑らせて落とし、ジャラジャラと音をたてながら持ち帰った水筒が何本あったことか。

サーモスなどの各社による技術革新で、ステンレス製魔法瓶が開発されたのは1978年のことだ。そこで軽量化と耐久性が大幅に向上して現在に至っている。それからほぼ半世紀がたつ。真空断熱という原理そのものは完成度が高いが、さらに軽量化が進むのか、あるいは全く新しい保温・保冷技術が登場するのか。そろそろ次のブレークスルーも見てみたい。

そうそう、酷暑を乗り切るための暮らしの知恵をもうひとつ教えてもらった。飲み物を入れる前に少量の氷水で予冷することで、内側が冷えるため、保冷持続時間が延びるそうだ。しっかり覚えておきたい。まだまだ夏は続きそうだから。