「避難所で下着も洗えない」災害時の“洗濯”が課題に…熊本地震でも支援 少ない水で洗える備蓄用洗浄剤
地震など災害への備えと聞くと、水や非常食を思い浮かべる人は多いと思います。しかし、見落とされがちなのが「洗濯」です。能登半島地震では断水が長期化し、川や雪解け水で衣類を洗う人もいました。そうした被災者の経験をきっかけに開発されたのが、少ない水で洗濯できる「災害時備蓄用洗浄剤」。暑さが続く、熊本地震の被災地でも需要が高まっています。
災害では、水や電気などのライフラインが止まり、普段当たり前にできていた洗濯も難しくなります。
自宅や避難所で汚れた衣類がたまり、衛生面だけでなく精神的な負担を感じる人も少なくありません。
愛知県名古屋市で防災用品の製造・販売を行う「Ethical Japan」は、岩手県、宮城県、福島県、熊本県、石川県に住む被災経験のある20~60代の男女1000人を対象に、「災害に対する危機意識と備え」に関する調査を実施(2024年12月17日~19日)しました。
その結果、「災害時に洗濯ができないことに不安がある」と答えた人は約7割に上りました。
また、実際に被災経験がある人の約7割が「洗濯で困った」と回答。
困った内容として多かったのは「洗濯に使える水が確保できなかった(81.5%)」、「洗濯ができず着る服が不足してしまった(20.4%)」で、水不足が洗濯の大きな課題になっていることが分かりました。
能登半島地震の経験が開発のきっかけ
こうした課題を受けEthical Japanが開発したのが、少ない水でも洗濯できる「災害時備蓄用洗浄剤」です。
開発のきっかけとなったのは、能登半島地震の被災地支援でした。
認定災害備蓄管理士の犬塚耀規さんは、当時の状況について次のように振り返ります。
「能登半島の地震では、断水が長期にわたって半年続いたことがあり、洗濯問題で皆さん非常に困っていた。川の水や雪を溶かした水で洗濯をするという状況を知り、『下着だけでも洗いたい』『(水が不足し)赤ちゃんの哺乳瓶を洗えない』と言った声を受け、(洗浄剤を)製造・開発しました」
酵素と酸素で汚れを分解
この洗浄剤は、少ない水でも汚れを落とせるよう開発されたのが特長です。
界面活性剤は使用せず、酸素と酵素の力で汚れを分解する仕組みを採用。
肌へのやさしさにも配慮した無添加設計となっています。
犬塚さんは、「ポイントは添加物を入れないこと」と話します。
「蛍光増白剤、柔軟仕上げ剤、着色料、香料は使用していません。最近では『香害』といって、香りが苦手な人もいるためです。また、石油が原料となっている界面活性剤を使うのをやめました。それによって環境負荷が低く、環境破壊・環境汚染をしない洗浄剤になりました」
少ない水でも汚れや菌、ニオイの原因を落とすことができるため、災害時でも安心して使えるといいます。
約5リットルの水で洗濯が可能
「災害時備蓄用洗浄剤」は、衣類の洗濯だけでなく、掃除や除菌にも使用できます。
使い方はバケツ1杯分、約5リットルの水を入れたバケツに洗浄剤1袋(20g)を溶かし、衣類をもみ洗いしてつけ置きした後、軽くすすいで干すだけです。
洗浄剤1袋で、家族3人分の下着や薄手のTシャツなどが洗える分量となっています。
一般的な洗濯では100リットル以上の水を使用することがありますが、この洗浄剤は約5リットルの水で洗濯できるといいます。
「通常の洗濯ではバケツ12杯分、120リットル程度の水が必要になりますが、洗浄剤を使えば約5リットル程度の水で、通常通りの洗濯が可能になる。高層マンションに泊まっている人など、エレベーターが止まった時、120リットルの水を階段で持っていくのは不可能です。5リットルであれば、大きなペットボトル2本と半分ほどの水で済むため、『それぐらいなら持っていけるんじゃないか』と」
「衛生を守ることが命を守ることにつながる」
犬塚さんは、災害時は食料や水だけでなく、「衛生への備え」も重要だと話します。
「我々がやりたいのは、やはり(被災地で)綺麗な衣類を着ることで、まず衛生を確保する。トイレや水、食料などの備蓄はもちろん大切ですが、衛生を守ることが命を守ることにつながります。こういったことをメーカーとして真剣に考え、洗浄剤を開発しました。災害が起きた際、あらゆる準備が必要だということを啓発していきたいと考えています」
犬塚さんを含むEthical Japanのスタッフの方々は、8月7日から順次熊本に入り、被災者の皆さんに洗浄剤を配布する活動を行っています。
災害は、いつ起こるか分かりません。
だからこそ、水や食料だけでなく、「衛生」という視点から備えを見直してみることも大切です。
(メ~テレ 飯田莉穂)
