【圓岡 志麻】コンビニという「甲子園」を勝ち抜いて…完全栄養食「BASE FOOD」が大ヒットした背景
日本の国民食、ラーメン。おいしいが塩分や脂質が高くなりがちなので、ダイエットや健康を意識している人にとっては、食べる時になんとなく罪悪感を覚えてしまう禁断のメニューだ。
しかし今、罪悪感を覚えなくてもいい、健康に良いとされるラーメンが、コンビニやスーパーで手軽に入手できるようになっている。
発売元はベースフード株式会社。「完全栄養食」と言われる、必要な栄養素をバランスよく配合したパンや麺、スイーツなど、その名も「BASE FOOD」を開発・販売しているスタートアップ企業だ。
ベースフードを世の中に投じる狙いや目標について、引き続き同社代表取締役の橋本舜氏に聞いた。
前編記事はこちら『ラーメン1杯がたったの307kcal…「罪悪感ゼロ」のカップ麺はこうして生まれた』
「甲子園」を勝ち抜いて
世の中の潜在的ニーズを先取るように生まれたベースフード。2021年以降、コンビニエンスストアでの販売を開始して以降、徐々に知名度も高まっていく。
驚いたことに橋本氏は、「コンビニでの展開を最初から想定していたわけではなかった」という。
28歳で起業した当初は、細かい販売戦略まで考えていたわけではなかった。しかし世の中に広げていくためにはどこででも買えた方がいいうえ、ネット販売とコンビニの客層は近いため、相性がいいのではないかと考えて、コンビニでの展開に踏み切った。
また橋本氏にとって限られたコンビニの販売スペースは、「甲子園のようなもの」。商品力やブランド認知を世に問う舞台でもあった。そして無数にあるライバル商品に勝ち抜いて売り場を確保し、物珍しさで終わらず、今では定番と化すまでになった。
「今振り返ると、我々からしても展開スピードは速い方だったと思います。そして、日本はスタートアップにとって、決して悪い環境ではない。起業するときに必ず言われるのが、『日本人は保守的だから、新しいものに厳しい』という一言。でもコンビニさんが我々の商品を置いてくれたり、お客様が買ってくださったりする。これ一つとっても、フェアな社会だと感じます」
現在のチャネル別売上高は、約72%がEC(自社サイトでの定期購買が中心)、残りの店頭販売はほぼコンビニが占めている。コンビニへの営業が一巡したところで、今後はスーパーやドラッグストアでの展開を強めていく方針だ。
完全かつ、おいしい
このように同社が認知度と売り上げを順調に向上させてきた理由の一つに、「おいしさの追求」がある。
例えば2026年5月にリニューアルした「BASE RAMEN」は、「健康だから食べる」ではなく、「おいしいからまた食べたくなる」商品にしたいという思いで開発した。
ベースフードの商品は全粒粉を基本としているので、特有の雑味やクセがある。しかしラーメンの麺ではそれらをできるだけ抑えながら、ツルッとしたなめらかな喉越しを追求。鶏ガラ醤油はより濃く深く、味噌は甘味と芳醇さを感じられるように調味した。スープとの相性も細かく調整し、一口目から最後まで飽きずに楽しめる味わいを目指した。
実はラーメンについては、袋麺タイプを2018年末にすでに発売していた。2025年にはカップラーメンとして発売し、今回のリニューアルに至った。
立ち上げ当初から橋本氏は、「日本人がラーメン、アメリカ人がハンバーガーを食べて健康になれるのが理想」と考えており、ラーメン、しかも即席でできるカップラーメンの商品化は、悲願でもあったのだ。
「当社にとって、おいしさの追求は常に原点だ」と橋本氏は語る。定期購買ユーザーはもちろん、他社サイトにおける購入者から直接のフィードバックを受けて、味をブラッシュアップすることも欠かさない。
「おいしさの限界を考えることは、いつでも簡単なんです。たとえば玄米の食感をもちもちにするのはけっこう難しく、工夫が必要です。だからと言って、もちもちしていなくていいと妥協してしまうと、そこで終わってしまう。我々が目指すのは食のイノベーション。世の中で無理と言われることに挑戦していきます。おいしさもコストダウンも、ずっと追求し続けていきます」
そして、ベースフード社では健康的な食事について、栄養素だけではなく食材も大切にしており、味の調整には化学調味料ではなく、発酵や、不快な味を感じにくくする「味覚のマスキング」といった自然な手法を用いている。
例えばゴーヤを鰹節で和えると苦味が和らぐのは、苦味を感じる神経と旨みを感じる神経が同じところにあるため、相殺し合うから。この原理を用いて、食物繊維が豊富でもクセのない味を目指している。
また、食感のよさも同様の方法で追求している。
肉は酵素に漬けるとやわらかくなるが、これはたんぱく質を酵素が分解するから。この原理を用いて、たんぱく質を多く含んでいても、やわらかい食感を実現した。
「起業して10年以上、おいしさの追求を続けてきました。売上の成長は緩やかになっていますが、おいしくなるスピードはむしろ加速していると感じています。ラーメンも今よりももっとおいしくなりますし、そうなれば売上は後からついてきます」
今後の目標も、10年前と変わらず「普通の商品と比較してもおいしい商品」。例えばパンなら、生地自体がおいしくなるよう、改良を続けてきた。今後は商品バリエーションを増やしていく予定だ。そうすれば、定期購買して毎日飽きずに続けられる。
大人の給食と考えれば、すべての成人に月に15食程度、ベースフードの商品を食べてもらうのが理想だ。
今、購買層のボリュームゾーンは30代~50代。男女比は4:6だが、家庭内で女性の方が購入していることも考慮し、トータルでは男女が半々ぐらいと見られる。しかし一人暮らしの高齢者の低栄養も、フレイル(心身の活力が弱まり、健康と要介護の中間に至った状態)や要介護につながるとして社会課題となっている。シニア層への拡大も将来的に考えているそうだ。
目標は、栄養バランスに悩まず健康を維持できる社会。
健康寿命の延長、社会保障費の縮小という大きな目標に向け、ベースフードは着実に進んでいく。
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