問題は転売や価格高騰だけじゃない…「トレーディングカード」が“資金洗浄”に使われている? “持ち運びが楽”で“金属探知機”にも引っかからない
都心の繁華街にあった空き店舗が、気づいたらトレーディングカード(以下、トレカ)の販売店になっていた――そんな光景を目にしたことがある人は多いのではないだろうか。
そうした一部のトレカ販売店が、反社会勢力の資金洗浄の拠点になっているという指摘がある。反社会勢力や外国人が、資金洗浄(マネーロンダリング)の拠点とすべく、店を経営している事例もあるのだという。【取材・文=宮原多可志】
【写真】小さな空き店舗が瞬く間にトレカ屋に…資金洗浄の新たな舞台にもなりかねない「秋葉原」の今
トレカ専門店で資金洗浄
一時期、社会問題にまでなった「ポケモンカード」の品薄騒動や著しい高騰は比較的落ち着いた印象があるが、人気が高いことには変わりがない。また、「週刊少年ジャンプ」が完売するきっかけにもなった「ワンピースカード」も人気が高まっており、転売屋が付録にカードがついた「週刊少年ジャンプ」を買い占めて売り切れが続出、騒動になったことは記憶に新しい。

転売屋が買い占めて品薄感を煽り、一般のファンが買いにくくなるなど、トレカを取り巻く問題は数多い。なかでも、気になるのは、トレカが反社会勢力や外国人の資金洗浄の温床になっているとの指摘であろう。このことが、中古、すなわち二次流通のトレカ市場がダークなイメージで見られてしまう要因にもなっている。
資金洗浄の方法は極めて簡単である。例えば、詐欺などで得た金があったとしよう。その金で高額なトレカを購入するだけだ。そのままずっと所有してもいいし、別の店で売って現金化してもいい。値上がりするのを待ってから現金化する手段もある。
近年、一枚当たり数百万円というプレミアがつくトレカは珍しくない。専門店はそうしたトレカが毎日何枚も売れるという。そのため、高額なものを複数枚購入しても怪しまれにくい。しかも、専門店は、都心はもちろん地方にもたくさんあるため、購入も換金も容易にできてしまう。資金洗浄に極めて有利で、便利な状況にあるのだ。
金属探知機も“スルー”
トレカが資金洗浄の手段として好まれる理由は、ほかにもたくさんある。まず、保管が楽で、持ち運びも簡単で管理がしやすい点である。金塊などと違って場所をとらないぶん保管が容易であり、資産隠しも簡単にできる。持ち運びが簡単であり、万が一の際もポケットに入れてすぐに持ち出すことができる。
現物資産として従来資金洗浄に使われてきたアンティークコインや腕時計と違い、トレカは紙なので金属探知器にも引っかからない。税務署が調査に入った際に隠していてもわかりにくいし、空港の税関でもスルーされやすいので、海外への持ち出しも簡単にできてしまう。そのうえ、人気が高いトレカは、海外でも換金ができてしまうのだ。
海外でも換金できるほど、市場価格がはっきりしていて、安定している点も長所である。資産管理もしやすいし、換金するうえでも大きな魅力だ。現代アートのような一点物と違い、トレカは一定の流通量があるため相場がわかりやすく、取り引きもしやすいのである。市場価格は常に変化しているものの、ネットですぐに調べることができる。
かつて資金洗浄に使われていた絵画、金塊、腕時計などは、現在はシリアルナンバーで管理されているものが多く、来歴を探ろうと思えば探れてしまう。ところが、トレカはコンビニでも販売されている“おもちゃ”に過ぎない。カード自体にそういったシリアルナンバーは存在しないのである。
トレカは誰でも扱える商材
このように、トレカはその特性ゆえ、資金洗浄に使いやすいもっとも身近な製品の一つといえるのである。そのため、ショップそのものを反社会勢力や外国人が営業し、資金洗浄の拠点にする例も増えているとみられる。
トレカは、おそらくもっとも扱うのが簡単なコレクターズアイテムである。一点物のアートと違い、審美眼は必要ではない。真贋鑑定はさておき、データを作れば、買い取りや販売ははっきり言って誰でもできるのだ。
データさえあれば、「ポケモン」や「ワンピース」などの作品に愛情がなくても、扱えてしまう商品である。実際、都内の繁華街にあるトレカショップに行き、店員と話をしてみるとわかる。中小規模の店は、店員がポケモンの名前や、カードゲームのルールそのものを知らないケースも珍しくない。それでも問題なく扱えてしまう。
さらに、狭いスペースで営業ができるため、家賃が格安で済む。一時期、タピオカ専門店が増えたのもそのためだが、トレカは買い取りだけならさらに狭いスペースでも営業できる。高額であるにもかかわらず、商品の回転率も高く、右から左へと流しているだけでお金になってしまう。こうした点も、資金洗浄の温床になりやすい要因なのである。
トレカ業界の解決すべき問題は多い
7月23日、自民党の有志議員が中心となってトレカの議員連盟が設立された。その際にヒアリングを行った業界団体に、トレカを製造販売するメーカーが含まれていなかったことも、大きな話題になった。ヒアリングされたのはむしろ、トレカの二次流通を担い、少なからず資金洗浄の場になっている側が中心だったのである。
昨今、世界的にトレカの市場規模が拡大している。しかし、その人気が高まれば高まるほど、資金洗浄に使われやすくなってしまう負の側面がある。トレカ議連には、こうしたトレカの闇の部分を解決し、子供も大人も楽しめる“おもちゃ”にすることに本気で取り組む姿勢が求められる。
ライター・宮原多可志
デイリー新潮編集部
