2大話題作『VIVANT』に主演する堺雅人(左)と『GTO』に主演する反町隆史

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 開始前から話題だったTBS日曜劇場『VIVANT』(日曜21時〜)の続編が7月26日にスタートし、ようやく各局の7月期ドラマが出そろった。恒例となった “カリスマドラマウォッチャー” の2人、ペリー荻野さんと桧山珠美さんによる各局を代表するドラマの「第1話」対談を今回もお届けする!

――まずは最大の注目作『VIVANT』から。2023年に大ヒットした第1作の直後のエピソードとして、続編第1話は「第11話」という形で放送された。

桧山:シーズン2が「11話」で、3年前の続きからスタートするというのは新しい試みでしたね。子役の女の子がずいぶん大きくなったなあと思ったら、しれーっと別人に代わっていました(笑)。とはいえ、この3年のAIの進化はすさまじく、微妙にアップデートされていて……。別班のAI「ハヤト」の声は『名探偵コナン』でコナンを担当している、声優の高山みなみさんで、そのあたりの話題作りもうまいなあ、と。もう、一気に『VIVANT』の世界に引き込まれました。

ペリー:そうですね。前作と同じテンション、重量感、おもしろさをキープできるよう、とても周到に考えられて作られています。急増する配信ドラマを意識しているのかはわからないですが、地上波でどれぐらいのドラマが作れるのか、というTBSの情熱を感じます。

桧山:いまは視聴率が10%いけばすごい、と言われるなか、18.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区。世帯平均)と、もう違う世界です。まだ数字は取れるんだという、意地ですよね。

ペリー:地上波のドラマで育った身としては、日曜劇場にはプライドみたいなものを持ち続けていてほしい、がんばってほしい。そんな視聴者の気持ちの入った18.8%だと思いますね。文字どおり、地上波ドラマ界の “別班” です。

――もう一作、今期の話題作なのが『GTO』(フジテレビ系・月曜22時〜)だ。反町隆史が型破りの教師である鬼塚英吉を演じて大ヒットしたドラマが、28年ぶりに復活を遂げた。50代となった鬼塚と、令和世代の生徒たちとの交流を描く。

桧山:オープニングのタイトルバックがよかったですよね。生徒の部屋の壁を巨大ハンマーで壊す、懐かしの名場面がちりばめられていて、28年前に見ていた人たちは「こんなシーンがあったな〜」と当時を思い出しますね。反町隆史という俳優の歴史を感じます。いいかたちで年を重ねてきたんだな、と。テレビが文化の中心にあった時代のドラマだから、変に考察する必要もなく、まっすぐ見られるのもいいです。

ペリー:生徒に理解されない先生がこれからどう理解され、一致団結していくのか。嫌な感じの教頭先生がいて、ぼんやりしている校長先生がいて……。学園ドラマの神髄というか、定石はそろっています。安心して見られるドラマです。それに、松嶋菜々子との「コントかよ」と思わせるシーンがよかったです。あれができたのは、脚本が遊川和彦さんだからでしょうね。遊川さんの脚本の流れに信頼を置いて、身を委ねながら、しっかりやろうという反町隆史の “人柄のよさ” をあらためて感じました。

桧山:水谷豊の “相棒” を演じるなど、俳優として円熟味を増した反町隆史が、再び28年前と同じ役に戻ってくる。その覚悟に、胸が熱くなります。スタッフもほぼかつてのメンバーで、現場も当時の雰囲気のようですよ。それに前作からは、小栗旬や窪塚洋介、池内博之といった若い俳優が巣立っていきました。今回も “未来の小栗旬” が出てくるか、というのも見ものです。

――ミュージシャンのGACKTが連続ドラマ初主演ということで話題になっているのが『ブラックトリック〜裁きを操る弁護人〜』(フジテレビ系・月曜21時〜)。敏腕弁護士と一級建築士の資格を持つ異色の主人公が、でっち上げの “嘘” を武器に、真実を暴くリーガルドラマだ。

ペリー:これは一度、2時間ドラマなどでやっていたら、よかったような。そのほうが視聴者も落ち着いて観られたような気がするんですよね。弁護士ものは、主人公が負けないであろう、という着地点が見えているから、いかにトリッキーにするかがドラマの肝。しかも、違法ギリギリのブラックなことをやっていくという。第1話でかなりトリッキーなことをやってしまったので、今後、もっと刺激を求める視聴者にどう見せていくかですかね。複数の方が脚本を担当しているのも、そういったアイデアを集めるためかもしれません。

桧山:悪徳弁護士のドラマでいうと、長谷川博己主演の『アンチヒーロー』(TBS系・2024年)がすばらしかったので、GACKTがあの作品を超えられるかどうか。第1話は主人公のセリフが、よく聞き取れなかったという意見もネットにはありました。

ペリー:日本の俳優界は「この人ならこういう演技をする」という人が多いので、GACKTには独特の存在感で、得体の知れないおもしろさを見せてほしいです。

――趣里にとって、出産後初主演のドラマとなった『大空港〜GATE24〜』(テレビ朝日系・木曜21時〜)。風変わりな税関職員が、各省庁から集められた新設ユニット「GATE24」で、国境で起こる案件に立ち向かう。共演は板垣李光人、眞栄田郷敦ら。

桧山:これはシリーズ化を狙っているでしょうね。空港にはこういう仕事があるのか、というのも新鮮だったし、内容がわかりやすかった。

ペリー:なんでもAIでわかっちゃう時代に、趣里が自分の観察力をもとに推理するシーンは、ミステリーファンとしてはおもしろかったです。組織の対立も描かれていますが、そこより趣里の名探偵ぶりを見ていたほうがおもしろいかも。ぜひとも日本の空港の各所に、趣里を置いてほしい(笑)。

桧山:第1話は、夫婦を偽装して入国しようとする人身売買のブローカーを阻止する、という内容でしたが、視聴者の推理を裏切る展開がよかった。あのどんでん返しには、次回も食いつきますね。

ペリー:小さいヒントから大きいものを発見していく洞察力と推理力は、ミステリーの定番で、小さいことに気づく杉下右京的な『相棒』を連想させるんですよね。右京、つまり水谷豊の子どもは趣里。親子2代で、ちっちゃなことに気がつくとは(笑)。

桧山:そのうち、紅茶を飲むみたいな、小ネタを感じさせるシーンもやってほしい。『相棒』と同じテレビ朝日だし、なんなら水谷豊に出てほしいです。ドラマのスタート直前に、夫のスキャンダルで水を差されましたが……。

ペリー:伊藤蘭さまが出る、という “秘策” もありますよ。「すったもんだイメージは私が払拭する!」って(笑)。

――2人が「すごくおもしろかった」と声をそろえたのが『さよならノワール』(フジテレビ系・火曜21時〜)と、『Tシャツが乾くまで』(TBS系・金曜22時〜)。前者は、小池栄子が演じる犯罪被害者支援室所属の元刑事と、北香那が演じる心理学者がバディを組む、ヒューマンドラマ。後者は、ある事故に巻き込まれた2組の夫婦の愛と秘密を描き、蒼井優と松山ケンイチが、中島歩と夏帆が、それぞれ夫婦を演じている。

桧山:小池栄子は6月末まで『ムショラン三ツ星』(NHK)で、刑務所の管理栄養士をコミカルに演じていました。今作では、落ち着いて抑えた演技を見せていて、対照的です。北香那の演技もいいですよね。

ペリー:脚本は井上由美子さん、演出が河毛俊作さんというコンビ。井上さんは事件ものに関してはすごく手練だから、ちょこちょこ裏切ってくる内容に、巧みだなあと思います。小池栄子がしゃべりすぎないのがいい。河毛さんのこだわりかもしれないけど、そこが大人のドラマとして成り立っています。

桧山:刑事ドラマだったら、犯人を追って捕まえるのが仕事ですが、犯罪被害者支援室は、被害者にとっていちばんつらい数日間に寄り添うのが仕事。そこをきちんと並行して描いているから、ドラマに厚みがありますよね。

ペリー:被害にあった人がどう感じるかを軸に置いて、そこから目を逸らさず、真相を解明していく。二重構造になっていて、構成としてはすごく難しいと思います。真相を解明してそれで終わりではない、という視点は、解剖医を描いた石原さとみ主演の『アンナチュラル』(TBS系・2018年)に近いと思います。

桧山:しかも、その被害者の心がちゃんと立ち直って、一歩前に進んで自分も再生する、という感じで終わるところが、カタルシスというか。2話めも観たいと、素直に思いました。『Tシャツが乾くまで』も、セリフがよかった。脚本が『silent』(フジテレビ系・2022年)の生方(うぶかた)美久さんで、演出は映画『花束みたいな恋をした』(2021年)の土井裕泰さん。ふたりのみごとなマリアージュだと思います。蒼井優は、山里亮太の嫁をやってる場合じゃないっていうぐらい、演技がうまい(笑)。

ペリー:微妙に揺れる男女関係が好きな人には、たまらないドラマでしょう。でも第1話で、蒼井優が夫の好きなところをずっと話しているのには、ちょっとびっくりしました。私は、自分の夫のいいところを羅列できる人に出会ったことがないので……(笑)。

――松村北斗主演の『告白-25年目の秘密-』(日本テレビ系・土曜21時〜)も、評価が高かった作品だ。主人公が、小学生のときに助けてもらった女性を25年間、思い続け、同じ職場で働くようになり……というラブサスペンスで、2人は「松村北斗の絶妙な演技がいい」と声をそろえる。

桧山:純愛かストーカーか。松村北斗が、いい意味で気持ち悪いんです。女性からすれば、25年間ずっと見守ってくれたというのは、優しいのか、それとも気持ち悪いと感じるのか。その、本当に絶妙なところを演じているんです。

ペリー:第1話では、地味なハンサムという印象でしたが、だんだん「不気味」なほうのパーセンテージが上がっていきそうですよね。

桧山:そこが、松村北斗だから見られるという。刑事役の玉山鉄二も、NHK連続テレビ小説『マッサン』(2014年)で主役までやったのに、悪そうな役を嬉々として演じていて、それがすごくハマっていて。

――今期のドラマには「続けて観たい」と思うおもしろい作品が多かったと語る2人。とくに、40代、50代向けの大人のドラマに、光るものが目立ったという。猛暑が続くなか、涼しい部屋でドラマ三昧、という夏休みもいいかもしれない。

【プロフィール】
ペリー荻野
コラムニスト・時代劇研究家。脚本家・三谷幸喜氏との共著『もうひとつ、いいですか?』が絶賛発売中。
「今期、ほかにおすすめしたいドラマは『名探偵のままでいて』(テレビ朝日系・金曜23時15分〜)。私はミステリー好きなので、奥田瑛二がいろいろなミステリー作家の話をしてくれるのが、とてもおもしろかった。お香を焚いて謎解きをしていくんですが、これがなかなか。ミステリー好きの方には見ていただきたいです」

桧山珠美
コラムニスト。「日刊ゲンダイ」などでコラムを連載中。ギャラクシー賞選奨事業委員会テレビ部門委員長。
「今期、ほかにおすすめしたいドラマは『夫婦と16歳〜狂気の隣人〜』(テレビ東京系・木曜24時30分〜)。本人は16歳だと思っているけど、実際は61歳という女性を演じるかたせ梨乃が、本当に怖いです。よくぞ、この役を受けてくれました、という感じです」