(※写真はイメージです/PIXTA)

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今年も夏休みシーズンが到来しました。子どもにとっては楽しみがいっぱいの時期。しかし、共働き家庭では祖父母が子どもの預かりやレジャーの付き添いなどを担うケースも多く、その負担が想像以上に大きくなることも。祖父母世帯と子世帯の適切な距離感や、お金・時間との向き合い方とは? トータルマネーコンサルタント・CFPの新井智美氏が解説します。

「今年もよろしくね」の一言で始まる夏休み

「今年もまた始まるな……」

神奈川県に住む坂本和夫さん(71歳・仮名)は、カレンダーを見ながら、そう呟きます。

和夫さんは妻の洋子さん(70歳)と2人暮らし。夫婦の年金収入は月約24万円、年間では約288万円です。退職金などを含めた金融資産は約2,300万円ありますが、物価上昇もあり、老後はできるだけ取り崩しを抑えて暮らしたいと考えています。

しかし、夏休みになると生活は一変します。

近くに住む長男夫婦は共働きで、小学2年生と小学5年生の子どもがいます。7月下旬になると決まって届くのが、長男の妻からの「夏休み中、またお願いできますか?」というラインでのメッセージ。断りにくく、毎年のように平日は朝8時から夕方6時頃まで孫を預かる生活になります。

「思い出づくり」も祖父母の役目に

子どもたちは家にいるだけでは退屈します。「プールに行きたい」「水族館に行こう」「かき氷を食べたい」など、夏休みならではのおねだりが続きます。洋子さんも「せっかくなら思い出を作ってあげたい」と考え、つい財布の紐が緩みます。

昨年の夏休みだけでも、


・レジャープール:約12,000円
・水族館・映画・ゲームセンターなど:約17,000円
・昼食代・おやつ代:約18,000円
・ガソリン代・駐車場代など:約10,000円

その他の雑費も合計すると約6万円になりました。

さらに自宅で食べる昼食やおやつ、飲み物代も増え、食費は1ヵ月で約3万円も増え、夏休み全体では、9万円近い追加負担。長男夫婦から「いつもありがとう」とお礼は言われますが、お金を受け取ることはありません。

「子どもたちも住宅ローンがありますし、請求する気にもなれません。でも年金生活では、9万円は本当に大きな出費なんですよ」

「来年は塾の送り迎えも…」負担増の予感に下した“決断”

体力面の負担も年々大きくなっています。朝から子どもたちの相手をし、公園へ出掛け、宿題を見て、お昼ご飯を用意する。夕方になる頃には夫婦とも、ぐったりです。

「孫はかわいいに決まっています。ですが、本音では“夏休みなんて来なきゃいいのに”と思う気持ちもありました」

しかし、そんな“毎年恒例、孫どっぷりの夏休み”は、今年で終わろうとしています。

きっかけは、長男夫婦から「来年は上の子も小学6年生。今年の冬から塾に入れる予定で、来年の今頃はみっちり夏期講習になるだろう」と言われたことでした。

和夫さんは、ここで区切りをつけないと塾の送り迎えまで自分たちの仕事になると瞬時に悟りました。これ以上の負担はもう無理だ――。

その場で「孫たちを毎日預かるのは今年まで。来年からは面倒見れないから、そのつもりで」と、きっぱり宣言したのです。

「残念な顔をされましたが、思い切って言ってよかった。今後もときどきは手伝いますが、子どもを育てるのは親の役目。私たちにも、やれることの限界があります。今年は最後だと思って、思い切り孫たちとの時間を楽しもうと思っています」

老後のお金は「余っている」とは限らない

内閣府「令和7年版高齢社会白書」(厚生労働省「国民生活基礎調査」をもとに作成)によると、高齢者世帯の平均所得は年間304.9万円となっています。年金を中心に生活している世帯も多く、決して経済的な余裕がある家庭ばかりではありません。

さらに近年は食料品や光熱費の値上がりも続いており、年金生活者ほど支出増加の影響を受けやすい状況です。そのため、「孫のためだから」と毎年数万円から十数万円の支出が続くと、将来の医療費や介護費用として準備していた資金を取り崩すことにもつながりかねません。

祖父母世代には、「子ども夫婦の役に立ちたい」という気持ちが強くあります。しかし、その優しさが積み重なることで、自分たちの生活が後回しになってしまうケースも少なくありません。

専門家の視点|「善意」が家計や健康を圧迫する前に話し合いを

祖父母が孫を預かることは、子育て世帯にとって大きな支えになります。一方で、預かる側の時間や体力、さらには家計にも負担が生じていることは見落とされがちです。

特に年金生活では、毎月の収入がほぼ一定です。夏休み中の食費やレジャー費、交通費などで5万~10万円程度の臨時支出が発生すると、その分を貯蓄から取り崩すことになります。「たった数万円」と思っていても、それが毎年続けば10年で50万~100万円もの差になる可能性があります。

また、お金だけではなく、暑い時期に長時間子どもの世話をすることは、高齢者にとって熱中症や体力低下のリスクも高めます。「まだ元気だから大丈夫」と無理を重ねるよりも、自分たちの健康を守ることが、結果として孫と長く楽しい時間を過ごすことにもつながります。

大切なのは、祖父母が我慢し続けることではありません。「週に何日なら預かれる」「レジャー費は親世帯も負担する」など、できることと難しいことを家族で共有しておくことです。

家族だからこそ遠慮してしまうものですが、お互いが無理なく支え合える関係を築くことが、これからの長い付き合いを続けるためには欠かせない視点といえるでしょう。
 

新井智美
トータルマネーコンサルタント
CFP®