全編AI映画「死肉の男」“AI声優”の伊藤潤二氏「一生の宝物」 曽根監督「AIでなければ難しかった」
怪奇漫画家・日野日出志氏(80)の名作を全編生成AIで映像化した「怪奇!死肉の男」(監督曽根剛)が24日、東京・池袋シネマロサで公開初日を迎え“AI声優”を務めた漫画家の伊藤潤二氏(62)が登壇した。
「富江」「うずまき」など海外でも人気のホラー漫画で知られる伊藤氏は、若手医師の声を担当。「小学6年生くらいで日野先生の漫画に初めて触れて、ずっとファンでした。今回こうして携わることができて一生の宝物になりました」と喜びを語った。
劇場公開される映画を全編生成AIで製作するのは極めて異例。漫画原作の生成AI映画は国内初となる。今作は実写のような映像に、実在の俳優の声を基にしたAI音声をあてているが、長編映画でこれを行うのも国内初となる。
原作は「蔵六の奇病」「地獄の子守唄」などで知られる日野氏が1986年に発表した同名漫画。腐臭を放ち、ウジの沸く“死体”となった男が、意識を持ったままさまよう。腐敗が進む体で家族を思う描写が切ない。当時、体を壊した日野氏が、家族への思いを込めた作品とされる。命の輪廻(りんね)や生物の進化を思わせるイメージの世界が展開されるラストシーンが印象的だが、これもAI映像で美しく再現されている。
曽根監督は「今作はAIでなければ表現が難しいと思う場面もある。AIだったらできると思ったのが(製作の)始まりだった」と強調。昨今の生成AIの急速な進化があって提案したものであったと明かした。
熱烈な日野ファンで、過去には日野作品を監督・日野氏、撮影監督・曽根氏で実写化する企画も持ち上がったこともあったが「それがなかなか上手く進まなかった。コロナ禍もあり、日野先生が体力的に監督をやるのが難しい状況になったが、どうしても今作を作りたい思いがあった」と懸ける思いを熱弁した。
日野氏は昨年11月、膵臓(すいぞう)がんと闘病中であると公表している。
若手医師の声を担当した伊藤氏も思いは曽根氏と同じ。「原作は日野先生の心情がすごく反映された作品。死生観、愛する人に別れを告げなければいけないとき、どんな気持ちになるかなど考えさせられる。最後に恐竜や銀河が流れるラストも流れ、非常に深みのある作品だと思った」と手応えを示した。
日野氏はこの日、会場には来られなかったが、MCを務めたヘビメタバンド「人間椅子」ナカジマノブ(59)がメッセージを代読。「(死肉の男を)映画化させるのをずっと夢見ていたので感無量です。僕はこの映画を通して永遠になれた気がします」と読み上げられた。

