「老後安泰の目安は1,500万円」…支出の見直しと収入増で“投資元本”を増やし、手堅く資産を築くアプローチ【FPが試算】
老後資金に対する不安から、投資の「利回り」ばかりを追い求める投資家は少なくありません。しかし、データに基づけば、少ない元本で高いリターンを狙うよりも、一定の投資元本を確保して長期運用するほうが圧倒的に早く確実な資産形成が可能です。本記事では、投資において重要な“基本原則”と老後に向けて「1,500万円」を貯める現実的なアプローチについて、YouTubeチャンネル登録者数40万人超の人気FP・鳥海翔氏が解説します。
100万円で50年かかる成果が、20年で…リターンよりも「投資元本」がモノをいう
資産運用においては、「あわよくばより高いリターン(利回り)を求めたい」と思うのが普通でしょう。しかし、資金を早く確実に増やすために最も重要なのは「投資元本」の大きさです。
具体的なシミュレーションで比較します。100万円を年利8%で運用した場合、10年後は約215万円、20年後は約466万円、50年後は約4,690万円となります。
一方、投資元本を1,000万円に引き上げて同じ年利8%で運用した場合、10年後は2,150万円、わずか20年で約4,660万円に達します。つまり、100万円で50年かかる成果を、元本が1,000万円であれば20年で達成できる計算になります。
仮に、これより高いリターンを得られたとしても、元本が少ない場合には伸び方に限界があります。仮に300万円で年利13%だった場合、10年後は約1,018万円、20年後でも約3,456万円にとどまります。1,000万円を年利8%で運用した結果(20年後約4,660万円)に追いつくには、長期間にわたり高いリターンを維持し続けなければならず、現実的ではありません。
結論として、資産形成の速度を上げるには、リターンを追求するよりも投資額そのものを増やす努力が不可欠だということです。
「年利8%」という設定に対して非現実的だと感じる人もいるかもしれませんが、過去のS&P500(米国の代表的な株価指数)の長期データをみると、過去10年間で19.4%、20年で13.2%、30年で11.8%のリターンを記録しており、過去100年以上の超長期で均しても7〜8%程度の利回りが出ています。
また、世界的な通貨供給量の増加や物価上昇のトレンドを考慮すれば、名目上の8%という数字は決して大きすぎる数字ではありません。
「1,500万円」が老後安泰の目安
これを踏まえ、老後安泰の目安となるのが「資産1,500万円」というラインです。
仮に1,500万円のうち500万円を現金として手元に残し、残りの1,000万円を年利8%で20年間運用できれば、約4,660万円の資産が築ける計算です。
収入と支出が均衡している状態を保ちながらこの運用を継続するだけで、老後資金の不安は大きく解消されることになります。
資産運用のスピードを加速させる「支出の見直し」と「収入の増加」
ゼロから1,000万円、1,500万円という資金を作ることは容易ではありません。「なんとしてでも貯める」という強い覚悟が求められます。具体的な行動としてまず着手すべきは「支出の徹底的な見直し」です。
生命保険や医療保険、携帯電話の通信費、使用していないサブスクリプションサービスなど、毎月の固定費を見直すだけで1〜2万円、生活習慣の改善も含めれば月3万円程度の資金を新たに捻出できる可能性があります。
しかし、節約には物理的な限界が存在します。手取り収入が20万円の人が、どんなに節約を頑張っても25万円を使えるようにはなりません。投資元本をさらに増やすためには、支出の削減と並行して「収入を上げる努力」が不可欠です。
収入を上げる手段として、単純な残業や深夜のアルバイトなど「時間を切り売りする労働」は長続きせず、生活の質を低下させます。おすすめは、過去の経験や趣味など「自分の好きなこと」を副業として収入に換えるアプローチです。
インターネットやSNSを活用すれば、特別な資格がなくても、グルメや旅行、スポーツの経験などを活かして月に3〜5万円を稼ぐことは十分に可能です。
「3年ためらった人」は259万円の損…行動の遅れが致命的なロスを生む
資金形成において最も深刻なリスクは「行動の遅れ」です。投資のタイミングを見計らい、行動を先送りすると、確実にチャンスを逃してしまいます。
仮に1,000万円をただちに投資に回した場合、年利8%で運用すれば3年後には約1,259万円に成長します。一方で、投資を3年間ためらった人は、その時点でようやく1,000万円からのスタートとなり、すでに259万円もの差が生じてしまいます。
失われた時間は取り戻すことができず、この差額をあとから埋めることは極めて困難です。目標額を達成するために、早く始めれば月数万円の貯金で済むものが、遅れることで毎月10万円を超える負担になるという事実を理解し、一刻も早く行動を起こすことが求められます。
「継続」こそが、資産防衛と経済的自立への“最短ルート”
老後の安定を目指すうえで「1,500万円」という金額は一つのわかりやすい目安ですが、重要なのは数字そのものではありません。
少ない元本で高リターンを狙う非効率性を理解し、支出の見直しと収入増加によって投資元本を最大化し、時間を味方につけて直ちに運用を開始するという「本質」を掴むことです。客観的なデータに基づき、着実に行動を継続することが、資産防衛と経済的自立への最短ルートとなります。
鳥海 翔
株式会社Challenger 代表取締役
FP(ファイナンシャル・プランナー)/投資家

