「危険」か「過失」か 危険運転法改正 基準具体化も残る課題 富山県
飲酒運転や大幅なスピード違反などによる交通事故で適用される「危険運転致死傷罪」についての法律が改正され、今月21日に施行されました。これまで基準があいまいだとされてきた「飲酒の程度」や「スピードの超過」に具体的な数値基準が盛り込まれました。しかし危険運転で大切な家族を失った人たちは、まだ不十分だと訴えます。県内の遺族や元裁判長が感じた危険運転適用の壁を取材しました。
砺波市で家族と暮らしていた心誠くん。7年前、交通事故に遭い、9歳で亡くなりました。
心誠くんの母
「明るくて可愛くて面白くて、ちょっといたずらで。でも好きな食べ物を家族に分けてくれるような優しいところもあって、本当にみんなの宝物でした」
事故は2019年、滋賀県大津市の国道で起きました。家族で京都に向かっている途中に、逆走してきた車に衝突されました。後部座席で眠っていた心誠くんは、頭を強く打ち死亡しました。警察の調べで当時30代の加害者の男性は「飲酒運転」を認めました。男性は当時勤めていた滋賀県内の宿泊施設でオーナーと酒を飲んだ後、近くの駅まで車を運転し、スナックでさらに酒を飲みました。そして、50キロ余り離れた京都市内まで運転。オーナーを下ろし、宿泊施設への帰り道で事故を起こしました。
交通事故で人を死傷させた場合、「過失運転」か「危険運転」に問われるケースがあります。「過失運転」は不注意で、「危険運転」は故意に人を死傷させた場合に適用され、処罰の重さも大きく異なります。心誠くんの事故で、検察は「危険運転致死」で起訴しました。これに対し弁護側は「事故は飲酒の影響ではなく、過労による居眠りが原因」で「危険運転致死の適用にはあたらない」と主張しました。
加害者の男性はKNBの取材に応じ「自らの運転が危険運転に該当するかどうか分からなかった」と話しました。
加害者男性
「条文を見ても分からないんですよね。自分がお酒を飲んでいるし危険だと思うんですよ。それは危険な運転だと思うんですけど、ただその条文と照らし合わせると、それが果たして危険運転なのかどうか、本当になかなか分からないというような内容なんですね」
心誠くんの父
「普通であれば、やってはいけない、禁止された行為ですよね、飲酒運転。飲酒運転はしたけれども、事故はアルコールが原因ではないとか、なんか得体のしれない相手と戦っている、そんな気持ちでいました」
当時警察が調べた加害者の呼気1リットル中のアルコール濃度は、事故から3時間半後で0.05ミリグラム。酒気帯び運転の基準の0.15ミリグラムを下回っていました。基準値に満たない量でしたが、大津地方裁判所が言い渡した判決は「危険運転致死」。
大西直樹 元裁判長
「証拠調べも苦労したり判断にも悩んだあげく、最終的には自信を持って判断しましたけれども、そういうプロセスを経たので非常に印象に残っています」
判決を下した大西直樹・元裁判長です。判決から5年、今回KNBの取材に応じました。
大西直樹 元裁判長
「証拠調べをたくさんしたんですが、なおそれらをしても確信をもってこれが危険運転致死だといえるかどうか、若干こころもとないところがありました」
大津地裁は独自に現場検証を行い「カーブが多い道で居眠り状態では運転は難しい」としました。また事故発生時の血中アルコール濃度を独自に算出し、「危険運転致死罪」で判決を下しました。
大西直樹 元裁判長
「法律を読んでもなかなか何が条文にあたるのかあたらないのかというのが、国民一般の人から見ても分かりにくいし、裁判官の目にとっても、検察官、弁護人、被告人の目から見ても分かりにくい法律じゃないかと思います」
この事故のように「危険か」「過失か」で争われるケースは多く、大分県では、一般道で時速194キロで交差点に進入した死亡事故が、一審では「危険運転」、二審では「過失運転」とする判決が出るなど、司法の場で判断が揺らいできました。
大西直樹 元裁判長
「ばらつかないためには、適用する法律が明確に、何をもって犯罪とするかどうかを定めていないといけないと。残念ながら今の法律が明確に『これは危険運転で、これが危険運転じゃない』ということが分かるような話はないと。そこがやはり今の状況を生み出しているのかなと思います」

