【塩地 優】入園者数はなぜ「半年間で55万人」止まりなのか…刀・森岡毅氏「ジャングリア沖縄」開業1年の通信簿

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投資額が少額すぎた?

ジャングリア沖縄が1周年を迎えようとしている。開業直後こそ入園者が殺到したものの、それ以降は奮わず、開業から半年間のパーク単体の入園者数は55万人に留まった。採算ラインは半年間で約75万人とも見られているから、これを下回っている。

それ以降も下降線を辿り、現在に至るまで開業当初の勢いを回復できていない。悪評に対し、運営会社がさまざまな対策を打った、と宣伝しているにもかかわらず、である。

なぜ改善を行ったにもかかわらず、集客は上向かないのか。その理由を考えていこう。

ジャングリア沖縄は「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)をV字回復させた」立役者が主導する、“沖縄初の大型テーマパーク”というアピールとともにオープンした。こうした打ち出し方をすれば、多くの人はUSJや東京ディズニーランド並みの施設が沖縄にできると想像するだろう。

しかしながら、現代にそうしたテーマパークを作れば1兆円規模の投資が必要になるところ、ジャングリア沖縄の投資額は約700億円だ。通常の遊園地に比べれば非常に大きな額だが、大手テーマパークとは比較にならないほど少額である。

その結果、多くの入園者や、開業前後の報道に触れた人たちは「想像とは違った」という印象を抱き、ネガティブなレビューやコメントが多数書き込まれる状況に陥った。

では、なぜそこまで過剰なアピールをする必要があったのか。その理由は、ジャングリアが必要とする集客数にある。

年間150万人が現状「無理な数字」といえる理由

ジャングリアは、美ら海水族館の半分程度の集客で採算が取れるとされている。つまり年間150万人程度だ。東京ディズニーランドやUSJは年間1500万人を超える人を集めるから、それらと比べれば非常に少なく、美ら海水族館の半分というのも現実的な数字に見える。

しかしながら、実はこの数字は極めてハードルが高い。仮にジャングリアが、沖縄観光の一部として数時間程度の滞在で楽しめ、沖縄らしさのある施設であれば、「せっかくだから」という需要を生み出せるので、150万人というのは無理な数字ではない。問題は、ジャングリアが沖縄らしさを極力排した“テーマパーク”であることだ。

テーマパークである以上、集客できる人数は、商圏人口に対してテーマパークの集客力を掛け合わせた値になる。ジャングリアの商圏人口は、年間1000万人の入域観光客数と140万人の沖縄県民だ。この1140万人の中から150万人、つまり商圏人口の13%以上を集客しなければならないことになる。

その上、観光客の沖縄での滞在日数が4日程度と短いことを勘案すると、一般的なテーマパークと比較する場合は、さらに高い割合に相当するだろう。

投資ではなく「人で補う」戦略の落とし穴

これを東京ディズニーリゾートの2パークと比較してみよう。ディズニーの場合、東京観光のついでではなく、それ自体が目的地となる。つまり商圏は全国とインバウンドの一部で、商圏人口はあわせて1.2億人以上。これに対して年間2700万人が入園している。商圏人口の22%程度を集客している計算だ。

一般的な遊園地の場合は、商圏の捉え方にもよるが10%前後になることが多い。ジャングリアは、東京ディズニーリゾート相当とは言わないまでも、その半分を大きく上回る必要があり、そして通常の遊園地よりも高い割合で集客しなければならないことになる。

つまり、ジャングリアは沖縄観光という文脈を捨てた時点で、ディズニーやUSJに次ぐレベルのテーマパークを作らなければならなかったのだ。にもかかわらず、投資額は大手テーマパークと比べて一桁小さい。

この少なさを、ジャングリアは人を使うことでカバーしようとした。

例えば「ダイナソーサファリ」では、自動で動く乗り物ではなく人が運転するジープを導入し、ヒト型ロボットの代わりに演者を使った。「ファインディングダイナソー」も乗り物を使う代わりに人が案内するガイドツアーになっている。ハード投資を抑え、演者などの人に頼ることで、少ない投資で魅力を増そうとしたのだ。

一見すると、アトラクションの投資額を抑えて人で魅力を生み出す、という戦略は正しいように思える。しかしながら、コスト構造をよく考えると、この戦略の穴が見えてくる。

明らかに魅力不足な「アトラクションの造形」

大手テーマパークのアトラクションを魅力的にしているのは、乗り物とロボットだけではない。造形や音響、照明、映像などが複雑に組み合わさって、楽しいアトラクションに仕上がっている。これらのどれが欠けても魅力的なアトラクションにはならない。乗り物やロボットが高価なことは間違いないが、それ以外の部分にも大きなコストがかかっているのだ。

仮にディズニー並みの造形が安価に作れるのであれば、各地の遊園地やテーマパークは、ローラーコースターなどにこぞって魅力的な造形を加えているはずだ。それをしないのは、造形というものが非常に高価だからである。

例えば、東京ディズニーシーに2005年にオープンした「レイジングスピリッツ」は、総投資額が80億円とされている。しかし同程度のローラーコースター自体は、ディズニー向けのカスタムを含めても当時の金額で10〜20億円程度で設置できると思われる。つまり総投資額の大半は、造形や周辺エリア、待ち列の整備などにあてられているのだ。設備投資を削れば、アトラクションの重要な構成要素である造形が大きく削られてしまう。

実際、ジャングリアは歩道やアトラクション内を含めて、造形が極めて弱い。「ダイナソーサファリ」でも、ただ木々があるだけのエリアを通過する時間が印象に残る。恐竜も木々の中にポツポツと置かれているだけで、それぞれの恐竜が好む生息環境などを再現しているわけではない。演者が登場するシーンも、不自然にコンテナが積み上がり、その間に体験者が集うスペースが広がっている。

こうした造形が弱いために、どんなに人を使っても、体験者に大手テーマパーク並みのリッチな体験だと感じさせることはできていない。

つまり、東京ディズニーリゾートやUSJに準じるレベルのテーマパークにしなければ十分な集客が得られないにもかかわらず、投資額が一桁小さいことで肝心の造りこみができなかったため、パークの魅力が必要な水準に達していないのだ。

商圏人口が小さく投資を抑えなければならない一方で、それだと投資額に見合う集客を生むような造りこみができない。この矛盾こそが、ジャングリアが抱える最大の問題点だ。

この矛盾を残したまま、大手テーマパークを思わせるようなアピールを行い、さらに設備投資を削って人に頼るアトラクションを多数用意したことが、初期の悪評へとつながっていった。

過大なPR戦略にパークの魅力が見合わないことで、多くの入園者が不信感を抱くことになる。一度パークと入園者の信頼関係が崩れると、入園者はアラに目がいき、次々と問題点が見出されることになる。

「待ち時間」は改善したけれど

アトラクションに人を使うと、どうしても運営効率が下がる。機械であれば毎回まったく同じ動作をするため発車間隔を限界まで高められるが、人の場合はムラが生じるため回転率を上げにくい。加えて、動線設計やキャパシティ設計に問題のあるアトラクションも多く、どんなにスタッフが習熟してもキャパシティには限界がある。

2025年から2026年の年末年始には、「昨夏の開業直後と同程度の人数が訪れた日もあったが、オペレーションの改善によって待ち時間が大幅に短縮された」とされている。確かに、お盆のハイシーズンだった2025年8月10日は、ダイナソーサファリの待ち時間が日中240〜290分だったのに対し、同年12月26日の日中は100〜130分と、大きく改善している。

とはいえ、それでもディズニーやUSJの人気アトラクション並みの待ち時間だ。短い待ち時間で楽しめるアトラクションが少ないことも相まって、これを「長すぎる」と感じる人は多いだろう。

雨の日に楽しめないパーク設計

設備投資を削った結果、日陰や屋内が少なく、暑さや休憩場所の問題も生じた。「パワーバカンス」とバカンスを冠した言葉で訴求したにもかかわらず、バカンスらしくゆったりできる場所がほとんどなかったのだ。

近隣の名護特別地域気象観測所のデータでは、1970年から現在までの平均で、降水が観測されるのは年間110日程度と1年の30%程度。東京は40%程度雨が降るから、これと比べれば降水率は低い。ただし、強い雨の基準である1時間あたり20mm以上の雨が降る日は約3.5%ある。これは東京の1%程度と比較すると非常に多い。雨は降りにくいが土砂降りになりやすい土地だ。

これほど土砂降りの多い土地で、気候に対する配慮がないパークは、多くの機会損失を生むうえ、雨の日の満足度も低くなってしまう。

ジャングリアは、こうした問題点に対して迅速に対策を打っていった。アトラクション運営効率の改善、日傘の無料貸し出し、コンテナ型休憩所の設置、テント屋根付き休憩所の設置などである。

しかしながら、これらはいずれも根本的な対策にはなっていない。ジャングリアが抱える「投資額と集客の関係」という大きな矛盾を解消するものではなく、口コミなどから見えている事象への対症療法にとどまっているからだ。

これこそが、集客が上向かない理由である。

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【つづきを読む】『森岡毅氏も「相当厳しい」と認めた苦境のジャングリア沖縄 生き残る唯一の道は「テーマパークでなくなる」ことだった』

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