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近年は住宅価格や家賃の高騰を背景に、住居費を抑える選択肢としてシェアハウスを選ぶ人が増えています。しかし、家賃の安さだけで契約すると、共同生活のトラブルや契約内容の見落としから、思わぬ出費につながることもあります。わずか1ヵ月でシェアハウスを退去し、想定外の出費を背負うことになった31歳会社員・ユウキさんの事例をもとに、後悔しない住まい選びのポイントを辻本剛士CFPが解説します。

「半年以内に出て行って」…手取り25万円・実家暮らし31歳男性が選んだ〈シェアハウス

IT企業に勤務するユウキさん(31歳・仮名)は、社会人になってから一度も実家を離れたことがありませんでした。年収は450万円、毎月の手取りは約25万円。

実家には生活費として3万円を入れているものの、家賃や光熱費の負担はなく、経済的に不自由のない生活を送っていました。仕事から帰宅すると、夕食は母が用意してくれています。洗濯や掃除も親任せ。日用品の補充なども両親が行っており、家事全般を親に頼る生活が当たり前になっていました。

そんなある日、母から突然こう告げられます。

「半年以内に、この家を出て行ってください」

両親は来年、定年退職を迎えて年金暮らしとなる予定で、今後は収入が大きく減少します。限られた年金での老後の生活費を考えると、いつまでも息子と同居するのは難しいと判断したのです。また、この機会に息子には自立してほしいという思いもありました。

実家を出ることになったユウキさんは賃貸物件を探し始めます。しかし、都心部は家賃が高く、手取り25万円では生活に余裕を持つことができそうにありません。

そんなとき、同僚から勧められたのがシェアハウスでした。

ユウキさんはいくつか物件を調べてみたところ、どれも家賃は月6万円ほど。家具・家電付きの物件も多く、初期費用も抑えられそうです。

「これなら住居費を節約できるし、一人暮らしよりも経済的だ」

そう考えたユウキさんは、シェアハウスで新生活を始めることを決意したのでした。

「こんなはずじゃなかった…」共有スペースの私物化とルール無視の惨状

ユウキさんが選んだのは、全12室のシェアハウスでした。家賃は月6万円、キッチンや浴室、トイレ、リビングは入居者全員で共有するタイプです。

家具や家電はあらかじめ備え付けられており、初期費用も一般的な賃貸より安く済みました。入居者も20〜30代が中心と聞き、「同世代ばかりなら楽しく暮らせそうだ」と新生活に期待を膨らませていました。

ところが、入居して間もなく、その期待は裏切られます。

冷蔵庫に名前を書いて保管していた飲み物や食品が、いつの間にかなくなっていたのです。さらに、共有リビングではフリーランスの女性が深夜までオンライン会議を行い、リビングを長時間占拠することも珍しくありませんでした。

そこに追い打ちをかけたのが、掃除やゴミ出しです。当番制だったにもかかわらず、担当日を守らない住人が相次ぎ、トイレや洗面所は汚れたまま。誰も片付けようとせず、不満だけが積もっていきました。

住み始めてわずか2週間ほどで、ユウキさんは「こんな生活が続くのか」と大きなストレスを感じるようになります。

隣人に逆ギレされ限界に…わずか1ヵ月で退去し「実家へUターン」

入居から約1ヵ月が経ったある夜、隣室の住人が友人を招いて大騒ぎしていました。翌日の仕事を控えたユウキさんが注意すると、酔った相手に「自分の部屋だから別にいいだろ」と逆ギレされ、口論に発展しました。

ルールが曖昧なシェアハウスでの共同生活ストレスに、ユウキさんは限界を迎えます。この出来事が決定打となり、退去を決意。

しかし、契約には最低入居期間が設けられており、それ以前に退去すると短期解約違約金が発生する仕組みになっていました。

結局、入居時の敷金や引っ越し費用で約12万円、退去時には短期解約違約金として2ヵ月分の家賃12万円に加え、クリーニング代5万円が発生。合計29万円もの出費となってしまいました。

こうしてユウキさんは、わずか1ヵ月でシェアハウスを退去し、実家へ戻ることになります。住居費を節約するつもりが、結果として大きな出費を招く、苦い経験となってしまったのです。

【CFPが解説】「家賃の安さだけで決めるのは危険」シェアハウスで後悔しないためのポイント

近年は住宅価格や家賃の高騰、価値観の変化などを背景に、シェアハウスを選ぶ人が増えています。

シェアハウスとは、一つの住宅を複数人で共有して暮らす賃貸住宅です。家賃や光熱費を抑えやすく、家具や家電が備え付けられている物件も多いため、初期費用を抑えて気軽に新生活を始められる点がメリットです。

一方で、住み始めてから後悔するケースも少なくありません。少し古いデータになりますが、国土交通省が公表した資料によると、シェアハウスの入居者の約50%が1年以内に退去しており、共同生活ならではの難しさがうかがえます。

出典:国土交通省 貸しルームにおける入居実態等に関する調査 結果概要

シェアハウスの主なリスクとしては、次のような点が挙げられます。

・生活時間帯や生活習慣の違いによるストレスが生じやすい

・共用スペースが多く、一人で落ち着ける時間や空間が限られる

・短期間で退去すると違約金が発生するケースもある

特に、ハウスルールが曖昧な物件では、掃除やゴミ出しの当番が守られなかったり、騒音や私物の管理をめぐるトラブルが起こったりすることもあります。

また、見落としやすいのが短期解約時の違約金です。シェアハウスでは最低入居期間が3〜6ヵ月程度に設定されているケースも多く、その期間内に退去すると違約金が発生することがあります。

住居費を抑えられるという理由だけで安易に契約すると、ユウキさんのように結果的に大きな出費につながる可能性もあります。シェアハウスを検討する際は、家賃だけで判断するのではなく、ハウスルールや契約内容、最低入居期間の有無なども事前に確認したうえで判断することが大切です。

遠回りをして気づいた「自分に合った住まい選び」の大切さ

ユウキさんはシェアハウス退去の旨を両親に説明し、もう一度だけ半年間の猶予をもらうことになりました。

今度は家賃の安さだけで判断するのではなく、通勤時間や住環境、契約内容なども含めて慎重に物件を探します。その結果、都心から少し離れた郊外のアパートに入居することを決めました。

都心ほど便利ではありませんが、その分の家賃は抑えられ、落ち着いた環境で一人暮らしを始めることができました。

「少し通勤時間は長くなるけれど、自分にはこちらのほうが合っている」

そう納得したユウキさんは、新たな生活をスタートさせたのです。

シェアハウスは、住居費や初期費用を抑えられる魅力的な選択肢ですが、すべての人に向いているわけではありません。家賃だけに目を向けるのではなく、自分の生活スタイルや価値観に合った住まいを選ぶことが、後悔しない住まい選びにつながるでしょう。

辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP