(※写真はイメージです/PIXTA)

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本記事では、ジム・ロジャーズ氏の著書『大暴落前夜 狂宴バブル後の生き抜き方、資産の守り方』(プレジデント社)より一部を抜粋・編集。世界的な投資家であるジム・ロジャーズ氏が娘たちに行っていた金銭教育をご紹介します。また、金銭教育のエピソードとともに、ジム・ロジャーズ氏が「いかなる金融投資よりも価値があると確信している」という、若いうちに経験させるべき重要な体験についても解説します。

ニューヨーク生まれシンガポール育ち・高校はイギリスに留学した長女

若い頃は子どもを欲しいと思わなかったが、60代になってから今の妻との間に2人の娘を授かった。2人の娘は、私に、「父親であることがこれほど楽しいものであるとは思ってもみなかった」と言えるほどの喜びを私に与えてくれた。これを知らずに人生を終わらなかったことに本当に感謝している。

長女は2025年6月にアメリカのコロンビア大学を卒業し、9月からアパートを借りて、ニューヨークで働き始めた。高校時代には俳優を志していた時期もあったが、現実的な道を選び、現在は国際舞台で活躍している。彼女の中国語の流暢さは、職場でも大きな強みとなっている。高校時代をイギリスで過ごし、海外生活の厳しさや楽しさを体験したことも、現在の自立心を育む土台となったようだ。

働き始めた長女の姿を見ると、親としての誇りと同時に感慨深さを覚える。娘はニューヨークで生まれたが、シンガポールで育っている。それまでと異なる国で生活するということは簡単なことではない。治安や文化の違い、生活や日常の細かい問題に直面することも多い。しかし、彼女はそれを前向きに捉え、自分の力で問題を解決している。こうした経験は、いかなる金融投資よりも価値があると私は確信している。

若者に人生の教訓を伝えようとしても、彼らは必ずしも親の話を聞きたがらない。世界中の多くの若者がそうであり、私自身もそうして育ったのである。

アメリカの治安問題やニューヨークの生活費上昇…懸念はあるが大きな心配もしていない

ニューヨークの生活費は劇的に上昇しているが、長女が自分の給料だけで生活費を賄えているかはまだ確認できていない。判断するにはまだ早すぎるが、スタートダッシュは順調に進んでおり、すぐに仕事を辞めたり、解雇されたりもしていない。

私が2007年にシンガポールに移住して以来、アメリカでは銃関連による死者数が驚くほど増加しており、これはアメリカにとっていいことではないと思う。銃暴力を含むアメリカの治安問題については懸念しているが、だからといって夜も眠れないほど心配しているわけではない。アメリカでは建国当初から銃が身近にあり、憲法で武器を所持する権利が保障されているため、そのことについてはあまり考えていない。

長女と同じくイギリスの高校に留学し、海外の大学への進学を予定している次女

次女は今、イギリスの寄宿学校で学んでいる。現在通っているのは、イギリスの伝統ある名門女子高であり、留学生も多く、教育環境も素晴らしい学校だ。

「海外に行くのはいいが、まだ早すぎるのではないか」という私と妻の反対を押し切って長女がイギリスの高校に進学したとき、次女は、自分はシンガポール国内の高校に行くと言っていた。が、結局姉と同じ道をたどって海外に出ることになった。

そして、2026年には再度、長女の足跡をたどる形でアメリカなど海外の大学への進学を予定している。17歳という年齢で自分の道を決めることは簡単ではない。しかし、彼女自身の意思による選択を、私は全力でサポートする。親として、才能ある子どもたちに恵まれていることは、非常に喜ばしいことだと思う。娘たちの学ぶ姿や積極性を見ると、教育が単なる知識の蓄積ではなく、生きる力を育むものであることを実感する。

次女も、長女と同じくとても幸せそうで、非常に優秀である。将来は素晴らしい人間になると期待している。たとえば、彼女は学校の演劇で「ロミオとジュリエット」のジュリエット役を務めたことがある。いつも主役に選ばれるほど才能が豊かなのは、本当に驚くべきことである。

これほどまでに変化の激しい時代、将来何が起こるかは誰にもわからないが、学校が時事問題への取り組みに熱心であるため、最近のイギリスにおける反移民デモや抗議活動についても、学校で議論されている可能性はある。

彼女はまだ将来の進路をはっきりと決めていない。自分が何をしたいのか、まだわからない状態なのだ。数年後に、どの道を選ぶべきかを私に尋ねてくるだろう。私も21歳の頃は、自分自身や世界について多くの誤解を抱えていた。次女がどんな考えを持っていようと、私はおそらく間違っていると思うであろう。しかし、彼女は非常に賢く、さまざまな経験を積みながらこれから成長していくはずである。

若いうちに異文化を体験することは、その後の人生に大きなプラスになる

なんにせよ、家族のもとを早く離れることは、子どもにとって非常にいい経験である。

海外での学校や生活は孤独を伴うこともある。しかし、その孤独こそが子どもたちの自立心を育む。一つの国に留まっていたならば得られなかった視野や経験を、自らの力で手に入れられる。自分自身や世界について多くを学べる。多くの人は生まれ育った家を出るのを嫌がるが、早かれ遅かれ、それを経験することは必ずプラスになるはずだ。

特に世界を実際に見ることは重要である。母国語の通じる場所だけで過ごし、どこにも行かず何もしないのは良くない。それは歴史的にも証明されている。非常に安定した社会ではそれでも問題ないかもしれないが、世界は常に興味深く、変化に富んでいる。若いうちに外の世界を体験することは、その後の人生において大きな視野と判断力を育むのである。

娘たちが幼い頃から、「ブタの貯金箱」で金銭教育

私は子どもたちに、幼い頃から「ブタの貯金箱」を渡し、お金の管理について教えてきた。特に決まった額の小遣いを与えることはせず、ベッドメイキングなどの小さな仕事をするたびに、お金を渡し、貯金箱に入れるシステムを取っていた。

私は「お金は貯めるものだ」ということを、娘たちだけではなく、多くの人に学んでほしいと思っている。私の実家はどちらかというと貧しかったから、父は私と兄弟たちに「親として何も与えることができないが、自分でしっかり稼いできちんと貯金するように」と教えてくれた。

多くの人は、お金を手にするとすぐ「どうやって使おうか」と考えるものである。「投資すればもっと増えるかもしれないけれど、それは馬鹿げている」と思う人もいるだろう。

しかし、それはまだ「どう使うか」を考えている段階にすぎない。本当に大切なのは「貯蓄や投資が先で、消費はその後である」という考え方である。これを理解し実行することが、将来の生活の安定につながる。何かを買うつもりなら、それに本当の価値があるかどうか、考えてからにすべきである。

かつて私が結婚していた女性は、常に新しい家具や家電を欲しがった。私は「そのお金を貯蓄して、適切に投資すれば将来何倍にもなって返ってくる」と説得したが、聞く耳を持ってもらえず、結婚生活は破綻した。今の妻はその点はしっかり理解していると思う。

娘たちに伝えてきたもう一つのこと「やらなければならないことは、きちんとやる」

あと一つ、娘たちに伝えたのは、「やらなければならないことは、きちんとやる」ということだ。宿題をしっかりこなし、学校で成果を出すことが重要だと教えてきた。

学生時代、私はクラスメイトが「自分はこの科目を何時間勉強した」と自慢するのを聞いて、びっくりした。自分が勉強するときは、内容をすべて理解できたと思うまで学び、その後で確認のためにもう一回復習してみるというやり方を、当たり前にやっていたからだ。

もともと私の家族はとても勤勉で、「後でやる」「怠ける」などということはまずなかった。亡くなった父は化学工場で朝から晩まで働いていた。兄弟たちもとても働き者だった。「大切な仕事は暇な人より忙しい人に頼め」と言われてきたが、それは今でも非常に理解できる。

娘たちが38歳になるまで、遺産にアクセスできない仕組みを用意

自分の子どもたちも銀行口座や投資口座を開設し、実際に投資を始めることができる年齢になった。しかし、娘たちはまだあまり興味を示していない。もし興味を持てば、私は全力でサポートするが、無理強いはしない。「株って何?」と聞いてくれたら、それだけで嬉しいのである。興味を持たなければ、そこに価値はないのだ。

財産や遺産についても、彼女たちが適切な年齢になるまでは管理される仕組みを用意している。具体的には、38歳になるまで遺産にアクセスできない計画である。これは、彼女たちが経済的に自立し、成熟した判断力を持つ頃に、初めて自由に活用できるようにするためである。

海外で生活する娘たち…寂しいけれど、戻ってきてほしいとは考えていない

娘たちが海外で働くことになれば、私がシンガポールを離れ、近くに住むことも考えたが、今も私はここでとても幸せに暮らしている。シンガポールは住みやすく、都市機能も非常に整っているからである。

もちろん、長女が住むニューヨークは、長年私も住んでいた場所で、魅力的な都市である。ただし、劇場やレストランは豊富であるが、生活はシンガポールほど快適ではない。タクシーを捕まえるのですら大変なのだ。住みやすさという点では、シンガポールのほうが圧倒的に優れていると感じる。だから、今の段階では娘たちを遠くで見守る方向で考えている。

まったく寂しくないわけではないが、娘たちにシンガポールに戻ってきてほしいとは考えていない。彼女たちは非常に自立心が強く、おかげで私自身も親として成長を続けることができたと思う。時折り、その変化を受け入れるのが難しいこともあるが、それが現実である。

家族から離れて暮らすと、孤独を感じることもあるだろう。しかし、それも成長のためには必要な経験である。私は、娘たちが成長し、独り立ちする姿を見守っていく。

娘たちが安全かつ自由に挑戦できる環境を提供することこそ、親としての重要な責任だと考えている。家族がそばにいることも大切だが、彼女たちには自分自身の道を歩んでほしいと願っている。数十年前、私が若かった頃と比べても、子どもたちはすでに自分の道を歩んでいるのだ。

未来は誰にもわからない。私自身も21歳の頃は自分が世界でもっとも賢いと思っていたが、実際には自分が知っていると思っていたことのほとんどが間違っていたのである。

だからこそ、娘たちにも自分の状況や世界で起きていることを理解させたいと思っている。ただし、彼女たちはまだ完全には理解していない。私の役割は、彼女たちを支え、助けることである。もちろん、彼女たちは間違いも犯すであろう。

娘たちには彼氏が…いつの時代も父親心は複雑

一つだけ困ったことがある。今、娘たちは2人とも彼氏がいることだ。「男の子たちについては常に注意するように」と言い続けてきた私自身は、彼らを認めていない。しかし、もちろんそんなことは聞いてもらえるはずがない。

女の子がボーイフレンドを持つことに反対する親は多いが、現実はどうしてもそうなってしまう。いつの時代も、若い人はなかなか大人の言うことは聞かないし、それを止める方法も見つからない。

ジム・ロジャーズ

投資家