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NISA開始を機に投資を始め、インデックス投信で順調に資産を約500万円まで増やしたユウカさん(仮名・30歳)。「お金に働いてもらうってこういうことか」「投資なんて楽勝!」と成功体験を得た彼女ですが、さらなる利益を求めて話題のテーマ株に350万円を一気につぎ込んだことで、状況は一変します。本記事では、初心者が陥りがちな「テーマ株投資の落とし穴」を紐解きながら、個別株投資で失敗しないための鉄則について、1級FPの桐山昌也氏が解説します。

オルカンだけじゃ物足りない…新NISA好調で手を出した「話題のテーマ株」

「あのときは、投資なんて楽勝と本気で思っていました。おとなしくオルカンの積立だけを続けていれば……」

大阪・梅田の高層ビルで大手企業の営業管理として働くユウカさん(仮名・30歳)は、後悔とともに自身の投資生活を振り返ります。

手取り月収は約30万円。独身で経済的にも余裕があったユウカさんは、2024年の「新NISA」開始を機に投資を始めました。毎月10万円を世界株(オルカン)のインデックス投信の積み立てに回し、貯金と投資分をあわせた資産は約500万円と、順調に増えていきました。

「お金に働いてもらうとは、こういうことなんだ」と投資の魅力が理解できた一方、インデックス投信の積み立て投資は、能動的に自分で取引をするわけでもなく、徐々に物足りなさを感じてきました。

そして約1年前、短期間で大きく資産を増やすべく個別株投資に挑戦を始めました。

投資に関する主な情報源は、SNSやネットニュースなどでした。当時、世間は防衛関連、新型太陽電池関連、AI・半導体といったテーマ株が話題となっていました。

「テンバガー(10倍株)候補!」という見出しに胸を高鳴らせ、「みんなが買っているから間違いない」と人気ランキングの上位から数銘柄を約350万円分購入しました。

しかし、そう簡単にうまくいかないのが個別株の世界です。

海外旅行にも行けたのに…110万円の含み損を抱えた「塩漬け株」

最初は数%上昇して有頂天になりましたが、しばらくすると株価は天井を打ち急落します。下げ足は止まらず、ネット上には一転して弱気なニュースが溢れだしました。

「今売るべきか」と迷ううちに、損を確定させるのが嫌で売却タイミングを完全に逃してしまいました。

「マイナスの数字を見るたび胸が締め付けられます。これだけの金額が残っていれば、海外旅行にも行けたし、好きな服も買えたのに……」

購入後にうまく利確できた「小さな利益」もありますが、それを圧倒的に上回る「約110万円の含み損」を抱えた塩漬け株が並んでいます。ユウカさんは、なぜ自分が買うと下がるのか理解できず、精神的に苦しい日々を送っています。

「テーマ株投資」が初心者には難しい3つの理由

ユウカさんの失敗は、初心者が最も陥りやすい典型的なパターンの一つです。まずは、話題のテーマ株を初心者が追いかけるのが難しい理由を解説します。

1.ニュースになるころには「上昇の終盤」

人気テーマ株は、いくら業績好調で将来性があっても「いくらで買ったか」が問題です。SNSやニュースの人気ランキングで一般層が大騒ぎする頃には、プロの機関投資家ははるか下の安い価格で仕込みを終えています。メディアの熱狂に釣られてきた後追いの初心者に、プロや上級者が十分な利益を出して売り抜けるため、結果的に初心者は最も高い天井で「高値掴み」のババを引かされることになりがちです。

2.株価は上昇局面でも、下降局面でも「行き過ぎる」

マーケットには「株価が上昇するときには会社の実力(ファンダメンタルズ)以上に買い上げられ、下落するときには実力以下まで大きく売られがちである」という常識があります。「もっと儲けたい」「損したくない」という群集心理に加え、現在は信用取引・オプション取引やレバレッジ型投信が多数存在し、これらが株価変動の増幅器となります。そのため、人気株の価格は本来の実力値から想像を絶するほど乖離し、上昇時も下降時も常に行き過ぎた暴走を引き起こすのです。

3.小さな利益よりも「巨大な損失」

利益が出ている銘柄もあるが損失が何倍も大きいという状況は、行動経済学の「プロスペクト理論」で説明がつきます。人は利益の喜びより損失の苦痛を約2倍強く感じます。そのため、少し利益が出るとすぐ利益確定の売却をして安心したがり、損失が出ると損を認めたくないため「いつか戻る」と現実逃避して売却せずに塩漬けにします。初心者は特にこの傾向が強く、結果、口座には「すぐに刈り取られた小さな利益」と「雪だるま式に膨らんだ巨大な損失」だけが残るのです。

【1級FPの助言】インデックスと個別株は“別モノ”…失敗から学ぶ「コア・サテライト戦略」の鉄則

では、個別株投資で成功するにはどうすればよいのでしょうか。個別株に挑戦したい方へ向けたアドバイスをお伝えします。

インデックス投資と個別株投資の「圧倒的な難易度差」を知る

たとえば、全世界株式(オルカン)のインデックス積立が「世界経済という大きな船に自動で乗り続けること」なら、個別株は「無数のボートから最速のものを探し、沈没を避けて手動で操縦すること」です。それくらいに難易度には差があります。

個別株投資に必要な基本的な知識を書籍等で学ぶことはもちろん、実践の場での経験を重ねることが重要です。この難しさをショートカットしようと、ネットの人気ランキングや他人がおすすめするテーマ株を信じて大金で買うのは非常に危険です。下がったときに「騙された」という他責の念しか残らず、失敗から何も学べない非生産的なギャンブルになってしまいます。

投資家を育てるのは「身銭を切った仮説と検証」

個別株投資で本当に重要なのは「自分で調べて納得して購入したか」というプロセスです。「この企業はこの独自性で市場シェアを拡大するはずだ」などと自ら仮説を立て、バーチャルではなく「自分のリアルなお金(身銭)」を投じて真剣に検証することです。仮説が外れても、「見立てのどこが甘かったか」を真剣に振り返ることで、初めて次につながる知識と経験が自分のなかに積み上がっていきます。

ただし、身銭を切るといっても厳しい市場で退場しないためには、以下のルールは必ず守ってください。

コアでの長期安定投資

NISAでのインデックス積立などで、長期安定的な将来の資産形成のベースは崩さないこと。

・サテライトでの積極的な個別株投資

「失っても生活に影響のない少額」の範囲で、積極的な個別株投資を数多く行い、知見を積み重ねること。

・レバレッジ利用の禁止

手元資金の何倍もの金額を取引できる信用取引・オプション取引・FX・CFD等の取引手法があります。これらはリスクが大きく、投資経験が積みあがる前に退場させられる可能性が高いものです。現物取引での成功・失敗経験を十分に積むまで絶対に手を出さないこと。

ユウカさんのような事態に陥ってしまった場合、「今回の損失は高い勉強代だった」と受け入れることもときには必要です。

塩漬け株を損切りするものと保有継続するものに整理し、少額のサテライト投資から個別株投資を再スタートすることが、投資と上手に向き合っていくための第一歩となるでしょう。

桐山 昌也

株式会社ライトオブライフ

代表/1級ファイナンシャル・プランニング技能士