「正直、葛藤はありました」全てはW杯で優勝するために…理想と現実の間で戦い抜いた堂安律が築いた“日本代表新10番像”
今大会を戦ったメンバー26名が最後の取材に応じ、エースナンバー10を背負う堂安律は「本気で優勝を目指したからこそ、1ミリでも、1パーセントでも近づいたと確信している」と強調。「4年前より手応えのある大会になった」と自信をのぞかせた。
「試合が終わってから、どうやったらあのブラジルに勝てたのかを考えました。自分たちが持っている技術、フィジカル、メンバー、コーチングスタッフ、自分がどういうことをしていたら勝てたのか。他に選択肢があったのか。食事中に近い選手と話もしましたけど、大会が終わった今、優勝までの遠さを改めて感じています。昨日も誰かが『この日本代表の中で誰がブラジル代表に入れるのか?』と言い出して、『うーん』とクエスチョンになった。結局、そこが今の日本代表の答えなんじゃないかというのは、全選手が感じていることかなと思います」
これは堂安の発言だが、彼が言わんとしていることは「突出した個の力という部分で、日本はブラジルを上回れることができていなかった」ということだろう。特に攻撃面では、佐野海舟が値千金のゴールを奪ったものの、絶対的エースの上田綺世にしても、前田大然と伊東純也の2シャドーにしても、一人で局面を変えるまでには至っていなかった。
堂安自身も2018年9月のコスタリカ代表戦で日本代表初キャップを刻んでから、「点を取ってチームを勝利へと導けるアタッカー」を目指して突き進んできた。だからこそ、悔しさはひときわ強いはず。2022年のカタール大会では森保一監督からジョーカーに指名され、短時間の出場でドイツ代表とスペイン代表からゴールを奪い、ヒーローになった。今大会はオランダ代表戦でのコーディー・ガクポ封じ、ブラジル代表戦でのヴィニシウス・ジュニオールのカバーを筆頭に守備にフル回転。凄まじい貢献度の高さを示したが、攻撃で違いを見せることは思うようにはできなかった。
本人は「日本代表が優勝する可能性が限りなく高くなるやり方にトライしたので、後悔はしてません」とは言うものの、アタッカーとしては複雑な感情を抱いたこともあったに違いない。「大会中は全てを(外で)見せるわけではないので、正直、葛藤はありました。自分がやるべきことと、堂安律という自分なりの理想像と。ただ、これだけサッカー界にいれば、自分がどこまでやれて、どこまでできないのかは分かっている。その中で、最大値を発揮して、日本代表のために何ができるのかを常に考えていました。勝つための貢献をしようという意味で、やれることはやりましたし、そのうえでの敗退なので、試合後に力不足だと言ったのは本心ですね」と堂安は自分なりに折り合いをつけて、自身2度目のワールドカップで戦い抜いたという。
この姿は本人が3年半前のカタール大会の後、描いた“10番像”とは違ったものになったかもしれない。それでも、これだけ犠牲心を持って献身的に守備ができる10番というのは今までいなかった。それはそれで素晴らしいこと。堂安は右ウイングバックとして圧倒的な存在感を示したし、彼ほどの守備強度を出せる選手は今の日本代表にはいなかった。そこは称賛されるべき点だ。“新たな10番像”を体現したと言ってもいいだろう。

