6月29日に発表された 「Osmo Pocket 4P」

待ちに待ったデュアルカメラ

DJI Osmo Pocketの次期モデルはデュアルカメラになるのではないかという噂が出たのは、昨年9月頃のことであった。リーク写真も出回ったことから、Osmo Pocket 4はデュアルカメラなのは確実と思われた。

だが4月に発売されたOsmo Pocket 4は、シングルカメラだった。やっぱりリーク情報はあてにならないな、と多くの人が思ったことだろう。

筆者は6月上旬に深圳にあるDJI本社の見学および新製品発表会に出席する機会を得た。その時にデュアルカメラモデルである「Osmo Pocket 4P」の説明も受けたが、情報公開前だったので詳しい話はできなかった。日本での公式発表は6月29日となり、ようやく詳細が語れるようになった。

価格は本体ほか、補助ライト、ハンドル、キャリーポーチ、USB-C to USB-Cケーブルをセットにしたスタンダードコンボが99,000円。加えてMic Mini2ワイヤレストランスミッターやミニ三脚などをセットにした「Vlogコンボ」が113,300円となっている。

すでにDJI本社取材の際にスタンダードコンボを提供いただき、取材もOsmo Pocket 4Pで行なっている。今回は深圳で撮影したサンプルも交えながら、Osmo Pocket 4Pの性能や特徴を紹介しよう。

4に近い設計と構造

Osmo Pocket 4Pの「P」は、「Pro」の意味であるという。とはいえアクションカメラでは「Osmo Action 5 Pro」というモデルがあり、Proを略すのか略さないのかで製品名にブレがある。まあ以前からDJIはActionシリーズで「Osmo」が付いたり付かなかったりしているので、モデル名のブレは今に始まったことではない。

ボディはOsmo Pocket 4とほぼ同じで、搭載ジンバルカメラがデュアルになっている。液晶モニタを回転させると2つの物理ボタンが出てくるのも、4と同じだ。

サイズ感は従来モデルとほぼ同じ

まずはカメラのスペックから確認していこう。メインカメラはレンズ35mm換算20mm/F2.0で、センサーは1インチ。Log収録ではD-Log 10bit、およびD-Log2 10bitに対応し、最大17ストップのダイナミックレンジを持つ。

特徴的なデュアルカメラ

もう一つの中望遠カメラは焦点距離が3倍となる35mm換算60mm/F1.8で、センサーサイズは1/1.28インチ。最短撮影距離は30cmで、テレマクロ撮影に対応する。ただしこちらはLog収録には対応しない。

どちらもデジタルズームに対応しており、メインカメラは3倍の直前までズームしたのち、自動的に中望遠カメラに切り替わる。そのまま中望遠カメラもデジタルズームに切り替わり、メインカメラからの倍率で12倍までズーム可能だ。このあたりは複数カメラ搭載のスマートフォンと同じ動きなので、ユーザーには馴染みやすいだろう。

2つのカメラは、収納時には横向きだが、撮影時には縦積みとなる。このあたりが撮影にどのような影響があるのか、カメラを横に積んだInsta360 Luna Ultraと比較してみたいところである。

撮影時は縦に2段のカメラとなる

ハイスピード撮影は、メインカメラで最大4K240fps、中望遠カメラでは最大1080p240fpsで撮影可能だ。

ジンバルの背面には、4と同じくアクセサリ用端子があり、LEDライトが使用できる。

ジンバル背面に端子があり、LEDライトが装着できる

Pocket 3や4では、収納時にはカメラが内向きになることでレンズを保護していたが、4Pではレンズ面を内向きにすると平たくならないことから、レンズが背面を向いて収納される。

3の時は収納用のハードケースが付属していた。また4の時は収納時にジンバル部を固定するためのジンバルクランプが付属していた。

一方4Pではそうした治具は何も付属しない。またケースも柔らかい布製のポーチだ。持ち運び時にジンバルが痛むのではないかと心配になるところである。

付属の布製キャリングポーチ

この点を開発者に質問したところ、4Pではジンバルの強度を上げたので、保護用の治具は不要になったとのことであった。おそらくヘッド部が重くなったことで、ジンバルの軸やモータートルクなどもシングルカメラより強化されているものと思われる。

そのほかいつものように、グリップの延長パーツが付属している。例によってUSB-C端子の延長や三脚穴がある。とはいえ、これぐらいのことは多少本体を長くすれば解決できたのではないか。

底部に装着する延長グリップ

開発者に聞いたところ、Osmo Pocketシリーズは胸ポケットにちょうど入るという長さ・サイズにこだわっており、長くすると胸ポケット内で安定性が悪くなるのでこの長さになっている、とのことであった。

新感覚のジンバル撮影

Osmo Pocketシリーズは、Vlog市場の拡大とともに成長してきたカメラである。よって街歩きや自撮り撮影といった用途に特化している。

メインカメラの20mmは、広角ではあるが周辺が歪むほどの超広角ではない。多くのスマートフォンのメインカメラが24mm程度、ワイド側が16mm程度であることを考えれば、20mmはその中間ということになる。

それに60mmの中望遠がついた。スマホの望遠側カメラの多くはメインカメラの4倍から5倍程度なので100mm前後になる。それに比べると3倍は、メインカメラからのデジタルズームで繋ぐことを考えれば、悪くない倍率だ。

4Pでは背面のボタンでメインと中望遠カメラを切り替えられる。カットチェンジするわけではなく、センサーズームを組み合わせたクイックズームで切り替わる。

Osmo Pocket 4Pのズーム動作

またジョイスティックをズームに割り当てれば、等倍から12倍まで連続でズームできる。途中カメラが切り替わるので、色味やコントラストが多少変わる。

メインカメラと中望遠カメラの色味・コントラストの違い

今回のテスト撮影は、深圳と東京の2箇所で行なった。あいにくどちらも曇天であったが、2つのカメラの違いがわかりやすく出た。

まず、ノーマル10bit撮影では、メインカメラの方が若干低コントラストになっている。レンズもセンサーも違うのでなかなか同じにはできないところだが、ズーム時に画質でも画角でも若干ショックを感じるところだ。

深圳で撮影した4K/30p動画サンプル

注目は中望遠の表現力である。これまで撮れなかった遠景が気軽に撮影できる。12倍(中望遠4倍)のセンサーズームも、それほど画質は悪くない。センサーは1インチ未満だが、F1.8と明るく、背景もちゃんとボケるので立体感のある撮影が可能だ。

メインカメラで撮影

中望遠カメラで撮影

また美肌モードが中望遠カメラでも使えるので、人物撮りも良くなった。美肌モードは「滑らかさ」で5段階、「明るさ」で5段階の調整ができる。また「肌トーン」はオリジナル、日焼け、ウォーム、色白の4種類から選べる。

美肌効果なし

滑らかさ(5)

明るさ(5)

オリジナル

日焼け

ウォーム

色白

フィルムトーンは、なし、CCフィルム、NCフィルム、パステル、ウォームトーン、ムービー、レトロの6種類から選べる。こちらもメインと中望遠どちらでも使える。

なし

CCフィルム

NCフィルム

パステル

ウォームトーン

ムービー

レトロ

ただ残念なのは、これらの機能は写真モードでは使えないことだ。今回中望遠になったことで写真もちゃんと撮れるカメラなのだが、静止画は16:9か1:1しか撮れない。また解像度も標準8Mピクセルの上は急に33Mピクセルのスーパーフォトモードにジャンプする。

写真は16:9か、1:1しか撮れない

写真は16:9か、1:1しか撮れない

写真機能のプアさについて開発者に確認したところ、開発期間と製品リリースのタイミングを優先した、とのこと。確かにちょうどInsta360 Luna Ultraの発売とぶつかったわけだが、今後ファームアップなどで強化されることを期待したい。

17stopを誇るメインカメラ

夜間に低照度撮影も試してみた。深圳の夜景はそこそこ明るいこともあって、S/Nも良くパリッとした絵が撮れる。今回付属ライトは使用していない。

低照度撮影では見栄えのある絵が撮れる

集音性能もテストしてみた。本機は同社製ワイヤレスマイクがレシーバーなしで2機使えるため、しゃべりの集音ではあまりカメラマイクを使う機会は少ないかもしれない。だが音声収録用にボーカルブースト機能も搭載されており、指向性も変えられる。

ただし指向性は前方、前方+後方、全方向の3種類のみで、後方のみの集音ができない。前向きに撮影しながら撮影者がしゃべるみたいなケースでは、前方+後方を使うしかない。

ボーカルブースト、指向性の変更など多機能な音声収録

ノーマル10bitのほか、D-Log 10bitか、D-Log 2 10bitの3つに対応している。特にD-Log 2 10bitは、今回初めて搭載されたLOFIC(Lateral Overflow Integration Capacitor)による17ストップのダイナミックレンジに対応するために新搭載されたモードだ。

LOFICは日本語では「横型オーバーフロー蓄積容量」ということになるが、これはフォトダイオードの横にバッファ(キャパシタ)を用意しておき、高輝度撮影時にオーバーフローした電荷を一時的に蓄積しておく。通常オーバーフローしたところは白飛びしてデータがなくなってしまうが、読み出し時にこのこぼれた電荷を元に戻して一体化させる。白飛びに強い方式として、ハイエンドスマートフォンのメインカメラ、例えばXiaomi 17 Ultraといったモデルに搭載され始めている。

今回は数カットだが、D-Log 2 10bitで撮影し、手動でカラーグレーディングしてみた。曇天ゆえにあまり光量がないが、光がある部分をかなり拡張してもノイズが出ず、広い階調領域を生かした映像となった。

D-Log 2 10bitで撮影し、HDRにグレーディングしたサンプル

総論

Osmo Pocket 4Pはプロを意識したカメラということになるが、何を以てプロなのかという点については複数の答えがある。

まず1つ目は、中望遠カメラも一体化することで、これぐらいの小型カメラであってもちゃんとした被写界深度表現が得られるようになったこと。

2つ目は、20mmから240mmまでのズーム領域を持つカメラとして、1台で様々な画角で撮影できること。

3つ目は、17stopのダイナミックレンジを持つメインカメラで、デジタルシネマのサブカメラとして使えるようになったこと。

もちろん従来のVlogユーザーにとっても、美肌モードや内蔵マイク性能の向上は嬉しいところだろう。

一方で気になるところが2点ある。今回は曇天だったためにシャッタースピードがそれほど速くならなかったが、晴天時に被写界深度を生かした撮影をするには、NDフィルタがいるだろう、ということである。おそらくフロントカバーが交換できそうなので、ここにはまるNDフィルタの登場が待たれるところだ。

もう一つは、せっかくいい絵が撮れるのに、静止画機能がプアなところである。これまでのメモや記録といった用途ではなく、ちゃんと構図を決めてじっくり撮影したいというニーズもあるだろう。カメラとしてのポテンシャルはあるが、機能がないのが惜しい。

先に4を買って悔しい思いをしている人も多いと思うが、シングルカメラとデュアルカメラでは用途がかなり違ってきている。ワイドアングルの動画しか撮らない人は、3または4で十分だ。

4Pはこれまで「ジンバルカメラってどうなの?」と懐疑的に思っていた人を、後ろからドロップキックで物欲の崖に突き落とす的なカメラだ。