[6.29 W杯決勝T1回戦 日本 1-2 ブラジル ヒューストン]

 ピッチ外からワールドカップを見たからこそ、感じたものがある。サポートプレーヤーとして北中米W杯に帯同したDF吉田麻也(LAギャラクシー)はブラジル戦の敗戦を受け、「チームは間違いなく強くなってきている」と日本代表の現在地を語った。

 日本はMF佐野海舟のゴールで先制しながら、後半に追いつかれ、後半アディショナルタイムに決勝点を献上。1-2で敗れ、またしても決勝トーナメント初戦の壁を越えられなかった。

 悔しさは隠さなかった。「ここで終わるようなチームじゃないなと感じているので、ここさえ突破できればもっともっと上に行けたんじゃないかなという気持ちはある」(吉田)。あと少しで届きそうだったからこそ、敗戦の重みは大きかった。

 試合後にはDF冨安健洋のもとにも歩み寄った。吉田自身も2018年ロシア大会、22年カタール大会で同じように決勝トーナメント初戦敗退の悔しさを味わった。「おそらくあそこで何か言っても入ってこないと思う」と多くの言葉はかけなかったというが、FWビニシウス・ジュニオール(R・マドリー)とのマッチアップには最大限の敬意を示した。

「世界有数のウインガーとほぼ90分ずっと1対1の状況でやるというのは、ものすごいこと。僕はあんな冨安がぶち抜かれるシーンを滅多に見ない。レベルの高い戦いを90分続けていたと思う」

 ブラジル戦の敗因として、あえて選手層の部分にも触れた。「自分たちの一番の強みであったシャドーのところの選手層がどうしても薄かった。選択肢が限られたのは、短期のトーナメントではかなりディスアドバンテージだった」。怪我人の影響で本来のプランが崩れたことも、勝負の細部に響いたと見た。

 5月下旬の国内活動では、アイスランド戦まで帯同。当初は負傷者が出ていたチームを支える役割と、自身の代表活動に区切りをつけるセレモニーのための参加だった。その後、本大会にもサポートプレーヤーとして加わることが決まった。

「最初の1週間は自分のためにやっていましたけど、その後は立場が変わって、チームがこのW杯で結果を出すために自分に何ができるかを考えて毎日過ごしてきた」

 離れていたA代表に戻り、改めて感じたものもあった。「このチームの一員になれたのは本当に誇り。しばらく離れたA代表に帰ってきて、改めて素晴らしい仕事だなと思った」。自分たちが積み上げてきたものが、数年を経てより強固になっている実感もあった。

「自分たちがやってきたこと、積み重ねてきたことが、数年経って帰ってきても、より強固になって積み上がっている。それは自分の仕事をやってきた意味をすごく肌で感じた」

 ただ、強くなっているという現実のほかに、もうひとつの現実も見つめる。日本は今大会で4試合を戦い、1勝1敗2分で終了。5度目の挑戦となった決勝トーナメント初戦でまたしても勝利することができなかった。

 吉田は「今回はチュニジアにしか勝っていない」と1勝に終わったことを指摘する。「予選突破した次の試合でまた勝てなかったというのは、しっかり見つめ直して、分析して、次につなげていかなきゃいけない」。自らが就いたサポートプレーヤーという新たな試みについても、「本当に正しいかどうか、フィードバックを重ねていかなきゃいけない」と冷静だ。

 18年ロシア大会、22年カタール大会、そして今回。3大会続けて“あと一歩”の敗退を見てきた吉田は、次世代への継承を強調する。

「今回は1回目、2回目の選手が多くいるので、次につながる選手たちが多くいる。この1か月を見ていても、わかりやすく成長しているなと感じる選手がたくさんいた。彼らがいいものを継承していかなければならない」

 日本の強みを引き継ぎ、欧州で得た経験を加えていく。その繰り返しが代表を強くするという。「近道はない。多くの選手がこういう緊張感のある現場で毎週試合をして、代表の試合に還元していく。これをずっと繰り返していかなきゃいけない」と力を込めた。

 今後の日本代表については、築き上げてきた基準を維持する重要性を説く。「チームは生き物なので、アップダウンは絶対ある」。その上で、「この8年間でダウンも少なかったのは、森保さんが規律をしっかり作り上げ、選手たちがやるべきことを理解していたことが大きい」と話した。

 たとえ体制が変わっても、文化は残さなければならない。「作り上げた基準は継続しなきゃいけない。仮に外国人監督が来ても、その文化は維持していかなきゃいけないし、それ以外の部分もプラスアルファで成長させていかなければいけない」。吉田は「基礎の部分は力強く根付いてきている。そこから上物をしっかり立てていくところに入る」と、日本代表の未来を見据えた。

 ピッチ外から見るW杯は、当初想像していなかった経験だった。「最初は、自分もそこに立ちたいという気持ちが強かった」と明かす。それでも時間が経つにつれ、チームとの距離は近づいていった。「僕は恵まれているなと思いましたし、いい経験をさせてもらっている」と目を潤ませた。

 代表選手としては、5月31日のアイスランド戦で花道を作られた。「(選手としては)もうきっぱり」と語る吉田。それでも3大会を戦い抜いた経験は、今大会のチームにも確かに引き継がれた。越えられなかった壁の先へ。日本代表が進むために何を残し、何を積み上げるべきか。その答えを探す作業は、ここからまた始まる。

(取材・文 石川祐介)