世田谷・高級マンション管理組合と東急不動産の「不穏な定期総会」”いい加減にしろ!”の怒声まで飛び交う異常事態が起きた舞台裏
前編記事『【衝撃の泥沼裁判の行方は…】世田谷「高級マンション」の住民と東急不動産が総会で”大モメ”の一部始終』につづき、その後の住民総会で起こった珍事、さらに「管理組合」「東急不動産」双方の主張を詳しく報じる。
「異例のルール」で始まった住民総会
3月30日、渋谷区・道玄坂にある管理事務所で行われたのは世田谷区内に建つマンション「東急ドエル・アルス世田谷フロレスタ(以下、フロレスタ)」の住民・区分所有者による定期総会だった。
当日は住民のほかに49戸中、44戸を持つ東急不動産と関連会社から委任を受けた東急不動産の社員も参加。総会前には東急不動産の代理人と管理組合と担当弁護士による言葉の応酬が繰り広げられるなど、開催前から荒れ模様の様相となっていた。しかし、東急サイドの弁護士が退席後、ようやく始まった住民総会ではさらなる波乱が待ち受けていた。
「だいぶ定刻を過ぎてしまいました。定期総会のほうを始めさせていただきます」
議長のそんな言葉から無事にスタートしたフロレスタの住民総会。口上では以下の注意喚起が行われた。
・総会における発言につきましては質疑の時間を設けており、質疑の時間に挙手のうえ、部屋番号、氏名を発して発言する。
・時間が限られており、発言は議案に関連することを手短に話す。
・発言が長い場合は議長が打ち切る場合がある。
総会では組合の理事長も務める議長がこう切り出した。
「今回は東急不動産が定期総会に出席しております。フロレスタの施工不良の発覚および仮住まいが始まってからは毎年、東急不動産が定期総会の方に出席しておりました。今回2年ぶりの出席となります。
2年前の定期総会では、建て替え推進決議、事業協力協定の延長。この二つの議案について、東急不動産の社員が住民へ説明し、圧倒的多数で可決されております。そしてこの二つの議案は、建て替えに向けて東急不動産が住民の了解を得るために、議案化を管理組合へ求めたものです」
議長の説明では、フロレスタの施工不良が発覚後、住民らは仮住まいへと転居。その後、東急不動産はフロレスタの建て替えと住民で構成された管理組合との事業協定の延長を申し出て、正式に可決されたと主張。そのうえで、こうけん制する。
「ご存じの通り、東急不動産はこの議案を未だに履行しておりません。区分所有法の総会決議を不動産会社が守っていないのです。今回の定期総会を出席している東急不動産は、この議案の履行を守らないまま総会で意見を述べるつもりなのでしょうか。区分所有法を守らない者の意見に耳を傾ける必要はない。そう考えております」
この議長の提案に東急サイド以外の住民はいずれも賛成を表明。これにより当日の総会では、東急不動産、また関連会社の発言を制限するという異例のルールが設けられることとなった。
住民と東急不動産による「攻防戦」
だが、ここで待ったをかけたのが東急側だ。出席した社員が突然、挙手すると「すみません、議長。質問がございます」と言葉を投げる。そして「定期総会開催の…」と続けた。一方、議長は「まだ(発言は)認めてないんですけども」と制止。ここから幕を開けたのが管理組合とフロレスタ最大戸数を有する東急と関連会社による攻防戦だった。
以下は当日の様子を収めた動画に記録されたやり取りだ。一部抜粋しながらお伝えする。なお東急、また関連会社の発言は「東急」、組合側は「議長」「理事」「住民」と記載する。
東急「いや、管理組合員として発言の権利があると認識しております。本日、第1号議案第2号議案第3号議案が議題としてあがってございますが…」
議長「発言を認めていませんので」
住民「勝手にしゃべらないでください」
東急「申し訳ございません。組合員としての発言の権利がございますので、発言させていただきたいと思います。先日の3月24日付けの…」(東急)
議長「発言をおやめいただけますか」
東急「組合員としての発言の権利がございますので、発言させていただきます」
住民「こちらは誰も聞いていません」
議長「先ほどの説明(注意喚起)を聞いておりました?」
東急「第三号議案につきましても…」
議長「先ほどの質問は聞いておりましたでしょうか? 挙手です」
東急「あ、はい。挙手させていただきます(手を挙げ、発言を続行する)」
議長「先ほど挙手して指名されたかたが発言できると説明しました。(あなたを)指名しておりません」
東急「管理組合員としては定期総会で発言する権利があると認識しております。議長、第3号議案のほうは修正していただいているのでしょうか」
東急の言う「第3号議案」とはフロレスタ理事会の役員選任に関する議案だ。住民の1人が語る。
「管理組合の理事に関しては今季で任期満了を予定しておりましたが、今回の定期総会の2ヵ月ほど前に東急サイドから突然『東急不動産で選任した6人の理事を選任したい。よって次総会の議題として上程したい』という旨の連絡がありました。我々はこれを理事会の乗っ取り通告だと受け止めています。
もちろん選任案については理事会で協議をしましたが、そもそも私たちとしては、東急が2024年2月に行われた定期総会でフロレスタの建て替え推進決議、また管理組合との事業協力の延長について自ら提案して可決したにもかかわらず、実行しておらず、区分所有法違反の状態にあると認識しています。
そんな会社の社員が理事会を運営するなんてこちらとしてはもってのほか。また現在、フロレスタの問題について係争中であり、被告(東急不動産)が原告(管理組合)を乗っ取るなんてことは倫理的にあり得ないという見解。その理由を持って東急サイドの選任案は却下し、現理事による留任の議案を管理組合として提出し、東急サイドにも書面で通達していました。そういった状態での3月の定期総会開催となりました」
現理事たちによる続投を目指す組合と新メンバーでの役員選任を求める東急サイド。当日はこの『第3号議案』を巡り、押し問答が続く。
「いい加減にしろよ!」
議長「議事の進行を妨げるかたはご退席いただくことになりますが、よろしいでしょうか」
東急「私が申し上げているのは第3号議案のほうは…」
議長「発言の許可をしておりません」
東急「組合員としての権利に基づいて発言している次第でございます」
議長「発言の許可をしていないのに色々と話をされても前に進みません」
東急「議長がおっしゃっているのは組合員としての発言の権利は最終的にはなくなってしまうということでしょうか」
議長「発言の許可をしていないかたの発言に答える義務はございません。もうお帰りになったらどうですか」
東急「それはできません。本日、組合員として審議していただきたい事項がございますので、私としても発言させていただこうと思います。改めて…」
議長「(発言の)許可していないと…」
東急「第3号議案の修正はなしということで…」
議長「すみません。耳がお聞こえにならないんでしょうか」
東急「いえ、聞こえております」
注意する議長と議長の発言を続行する東急サイド。せめぎ合いが10分以上続いた頃、東急サイドの別の組合員がおもむろに立ち上がり、「(第3号議案についての)修正の議案をお配りいたします」と資料配布を始め、現場はさらに混乱を極めていく。
理事「こんなものは許されてませんよ」
議長「何をやってるんですか。(資料は)いらないですよ」
理事「勝手に配らないでください!」
住民「いい加減にしろよ!」
議長「なにを勝手なことをやってるんですか」
東急側の突然のアクションに荒れに荒れる総会。ここから議長と東急代表の双方が同時にそれぞれの議決を始めるという異様な光景が繰り広げられていく。
そして「同時強行採決」へ…
東急「今、お配りしたのは…」
議長「第1号議案。第26期事業活動および…」
東急「〇△◇×★♯(議長と声が重なり、音声が不明瞭)」
理事(挙手し、議長から指名を受ける)「みなさん、静かに聞きませんか。定期総会が進まないです。何勝手に喋ってるんですか。勝手に立ってものを配ったり、いいかげんやめましょうよ。ルールはちゃんと守りましょうよ。いいですか、普通の話をしていますよ」
東急「はい。では…」
理事「いや、そもそもそれで発言していることがおかしいんです」
東急「いや、あの…」
理事「発言しないでください」
東急「組合員としての…」
理事「発言しないでください! 私が発言しています」
議長「ここはあなたの会社じゃないんです」
東急「別に勝手に発言して…」
理事「発言しないでください。今、私がバトンを受け取ってるんです。勝手にバトンは渡しませんよ」
(中略)
議長「私は1号議案を進めますよ」
理事、住民「賛成!」
東急「そうしますと…」
議長(東急側に発言を遮り)「1、事業活動報告。事業期間、2025年1月1日から…」
東急(議長の発言に被せるように)「当社のほうも私どもで第三号議案のほうを取り上げていただけないので、不信任動議を挙げさせていただきたいと思います。私どもの発言を継続させていただきます。ただいま議長により、議事進行が…」
ここから双方が発言に耳を傾けないという議案の「同時強行採決」が決行。およそ10分にわたり、組合、東急が言葉を重ねて、理事会が進められていった。
総会の様子は三身氏らが運営するYouTubeチャンネル「アルス世田谷フロレスタ管理組合」でも公開されている。
なぜこんな事態が起こってしまったのか。その理由についてフロレスタの別の住民はこう語る。
「これまでの数々のトラブルを受け、すでに住民たちは東急に対して不信感を抱いています。そこにきて新役員の乗っ取り通告を受けた。こちらとしては警戒の度合いを高くするほかなく、総会でも強固な対応に出ざるを得なかった」
取材に対して双方の主張は…
改めて管理組合、東急の双方に真意を尋ねると、東急不動産は文書で「係争中のため回答は控えさせていただきます」としたものの、議長からの発言許可がないままの採決については「当社としては正当な手続きを経て上記採決を行ったものと認識しております。そのため、『強引で無効な採決』という主張は根拠がないと考えております」、また総会で役員の選任が行われ、管理組合として現理事らの継続が採決された点については「ご指摘にある『現理事らの継続が採決された』という事実はありません」と回答。
一方の管理組合は「現在係争中の事案に関する内容のため、回答を控えさせていただきます。我々原告は引き続き、建替え履行を求めた裁判において正当な主張を行い弁護団と共に戦っていく所存です」とコメントした。
1つのマンションを巡り、対立を深める管理組合と東急不動産。フロレスタの施工不良発覚からおよそ5年。双方の主張は今なお平行線を辿っている。
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