記事のポイントナイキは新CEOのエリオット・ヒル氏が掲げる「スポーツオフェンス」戦略のもと、2026年ワールドカップを成長の重要機会と位置付けている。米サッカー連盟や全米女子サッカーリーグと連携し、若年層の競技参加促進やサッカー文化の拡大に取り組んでいる。製品、マーケティング、販売チャネル、カルチャーを一体化し、熱狂的ファンからライト層まで取り込む「フットボールの世界観」構築をめざしている。
サッカー・ワールドカップ北中米大会は、スポーツウエア大手のナイキ(Nike)にとって大きな意味を持つ大会である。新CEOのエリオット・ヒル氏のリーダーシップのもと、ナイキは「スポーツオフェンス(Sport Offense)」と呼ばれる新戦略を実行してきた。これは、スポーツ、チームウエア、スポーツ関連商品を再び主役の座に据えるものだ。サッカーは世界最大のスポーツであり、2026年のワールドカップはナイキの母国である米国でも一部開催される。そこでナイキは総力を挙げている。その計画には、ジャクムス(Jacquemus)のような大物とのコラボレーションという形での新製品や、ズラタン・イブラヒモビッチ、ロナウジーニョといった数十人のサッカーレジェンド、さらにトラヴィス・スコット、チャニング・テイタム、ジェイソン・サダイキス、レブロン・ジェームズといったセレブリティを起用した華やかなマーケティングキャンペーンが含まれる。Glossyは、先日開催されたナイキのイベントで、ナイキのフットボール(サッカー)部門グローバルバイスプレジデントであるカミロ・アンドラーデ氏に、2026年の大会がもたらす特別な機会と、ナイキがこの瞬間にどう向き合うかという彼の哲学について話を聞いた。

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今回のワールドカップは、特に一部が米国で開催されるという点で、ナイキにとって何が特別なのか?

「最大のチャンスは、我々が米国を信じているということだ。米国には、幼少期にフットボールを後押しするすばらしいインフラがある。しかし10代になるとプレーをやめてしまい、この競技への参加から離脱してしまう。この瞬間は、関心を一気に高め、次世代のフットボール選手を育てる助けになる。だからこそ我々は、パートナーである米サッカー連盟(U.S. Soccer)や全米女子サッカーリーグ(National Women's Soccer League)と協力し、この瞬間をめぐるあらゆるエネルギーをどう生かすかに取り組んでいる。それはまた、トマ(Toma/ナイキのユース向けストリートサッカー大会プログラム)のような取り組みにスポットを当て、ロサンゼルス、アトランタ、ダラス、マイアミ、ニューヨークで我々が展開していることを大きくアピールする絶好の機会でもある。この瞬間は関心の高まりを生み出し、人々を引き込む。そして彼らはこれからも関わり続けてくれると思う」。

ワールドカップ戦略において、製品とマーケティングのどちらが重要で、どちらを優先すべきなのか?

「このポートフォリオを動かすには、すべての要素が本物であることが必要だ。だから我々にとっては、両方の側面がうまくかみ合っているようにしなければならない。マーケティングと製品は連動して機能する必要がある。我々は製品のイノベーションを先頭に立てる。新製品はよいものでなければならず、そのうえで市場で展開する。つまり、プロダイレクト(Pro Direct)やペレ(Pele)のような小売店での体験がすべてよいものであるようにするということだ。ただし、それらがすべて同じように感じられるべきではない。そしてマーケティングは、フットボールの動向を常に把握しているブランドであること、それに尽きる。だからこれは非常に難しいバランスを取る作業だ。しかし理想的には、これらすべてがこの競技そのものを取り囲み、その競技への参加を増やすことにつながる」。

ナイキは、バスケットボールのようなほかのスポーツに対しても同様のアプローチを取っているのか?

「スポーツオフェンスは実のところ、独立した事業部門を運営する能力を生み出している。つまり、それぞれのスポーツに対して独立した戦略、独立したアプローチを持っているということだ。スポーツごとに異なるチームがある。我々はリソースを共有せず、各部門が最初から最後まで一貫した責任と説明責任を負っている」。

スポーツへの関わり方の多様性にどう対応すればよいか? ワールドカップには熱狂するが、大会が終わるとサッカーから心が離れてしまうかもしれない人々もいるのではないか。

「我々の戦略は、まさにその点を中心に作られている。我々は、あらゆる関心のレベル、そしてエコシステムのあらゆる部分に向けた入り口を備えた、フットボールを取り巻く1つの世界を作ろうとしている。だから、もしあなたが熱狂的とまではいかないファンなら、トラヴィス・スコットを知っていて、彼の世界を通じてこれに出会うかもしれない。あるいは、究極のサッカームーヴメントをけん引するキム・カーダシアンを通じて、またはドラマの『テッド・ラッソ(Ted Lasso)』を通じて出会うかもしれない。もしあなたが熱狂的なフットボールファンなら、選手を知っていて、マーキュリアル(Mercurial)を買い、とことんのめり込むだろう。そこまで熱狂的でないなら、マッド90(Mad 90)コレクションがある。これはどちらかというとスニーカーヘッズ向けで、フットボールにインスパイアされただけのものだ。製品、各販売チャネル、マーケティング、そしてワールドカップをめぐる我々のあらゆるストーリーテリングを通じて、我々はさまざまな視点からより多くの人々をこの競技に引き込む1つの世界をまるごと作り上げたのだ」。[原文:'We believe in America': Nike global vp of soccer Camilo Andrade on the brand's all-out World Cup strategy]Danny Parisi(翻訳、編集:藏西隆介)