「本当はやったんだろう」自白迫られ体重激減か、逮捕・不起訴の16歳少女が死亡…母親が国と県に1億円超請求
暴行容疑で逮捕された少女(当時16歳)が、違法な取り調べや留置場での不適切な対応によって心身に不調をきたし、摂食障害になって死亡したとして、少女の母親が6月17日、国家賠償法に基づき、国と兵庫県に計約1億921万円の損害賠償を求める訴訟を神戸地裁に起こした。
原告側は「最も悲惨な形で『人質司法』の犠牲になってしまった」と主張している。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●障がい者施設で働いていた16歳、突然の逮捕
訴状などによると、亡くなったAさんは、母親が運営するNPO法人(障がい福祉事業所)でスタッフとして働いていた。
2025年2月15日、その障がい福祉事業所でバレンタインデーのイベントが開かれ、Aさんも参加した。
同年4月、このイベントに参加した知的障がいのある元利用者が、Aさんらスタッフ2人による別の元利用者への対応について、「虐待ではないか」と行政に相談した。
これを受けて捜査した兵庫県警明石署は同年6月17日、Aさんら2人を暴行容疑で逮捕したという。
●2度の勾留延長、取り調べで自白強要か
原告側によると、Aさんは身に覚えのない容疑で逮捕されたうえ、勾留が2度延長され、計18日間にわたり身体を拘束された。さらに接見禁止処分が付いたことで、家族との面会も許されなかったという。
また、取り調べでは、捜査員から「本当はやったんだろう」「少年院に行きたいんか」などと言われ、自白を迫られたとしている。
●逮捕前の体重37.5キロ→釈放直後27.7キロに
原告側によると、Aさんは逮捕後、極度の精神的ショックから食事をとれなくなった。逮捕前に37.5キロあった体重は、処分保留で釈放された日の翌7月5日には27.7キロまで減少していたという。
Aさんはその後、急性ストレス障害やPTSDと診断された。
不起訴処分となったものの体調は回復せず、2025年12月14日、低栄養状態で死亡した。原告側によると、死亡の約2週間前にあたる同年12月1日時点の体重は20.2キロまで落ちていたという。
●「違法な逮捕や勾留が娘の死を招いた」
訴状によると、Aさんの死後の2026年3月、虐待を申告した元利用者が「オーバーに言ってしまった」と告白したという。
母親は、県警の警察官や神戸地検の検察官によって、十分な裏付け捜査がないまま違法な逮捕や勾留、取り調べがおこなわれたほか、留置場でも十分な健康管理がなされなかったことが、Aさんの死を招いたと主張している。
国と兵庫県に対し、連帯して約1億921万円の損害賠償を求めて提訴した。
●代理人「人質司法による重大な人権侵害が常態化」
原告代理人の向井義博弁護士は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、次のようにコメントした。
「母の背中を見て、ただひたむきに障がい者支援の道を歩んでいた16歳の少女が、最も悲惨な形で『人質司法』の犠牲になってしまいました。
本件では、安易な身体拘束、家族から断絶させ自白を強いる強引な取調べ手法といった刑事司法に蔓延する『人質司法』による重大な人権侵害の常態化に対し、これを白日の下に晒すとともに、国家による人権侵害の責任を厳しく問うていきたいと考えています」
●神戸地検「コメント差し控え」
弁護士ドットコムニュースの取材に対し、神戸地検の福田尚司・次席検事は次のようなコメントを出した。
「ご遺族が国賠訴訟を提起される旨の報道は承知しているが、個別事件の捜査の具体的内容に関わる事柄であり、訴状の送達も受けていない現時点において、コメントすることは差し控える」
兵庫県警の大上健二・監察官室長は、以下のコメントを発表した。
「訴状が送達されていないことから、コメントできない」
