誰かがやる、はもう終わりにしよう ―フォロワーシップの時代 ―/齋藤 秀樹
フォロワーシップの時代 ― 誰かがやる、はもう終わりにしよう
「最近の若手は覇気がない」
「上司に言っても変わらない」
「どうせ頑張っても報われない」
今、日本の多くの職場で聞かれる言葉だ。
だが、これは個人の問題ではない。
時代の構造が変わったのに、組織の在り方が変わっていない──
その歪みが現場の無気力を生んでいる。
経営環境は激変し、誰もが正解を持たない時代。
にもかかわらず、多くの会社はいまだに「上司が決め、部下が従う」という旧来の構造にしがみついている。
リーダーが全責任を背負い、フォロワーは“やらされる側”として存在する。
だが、その構図では、もう現代のスピードに追いつけない。
必要なのは「強いリーダー」ではなく、チーム全員が“動かす側”になる文化だ。
その核こそが――フォロワーシップである。
■ フォロワーシップとは、「自ら動く支える力」
フォロワーシップとは、リーダーの指示に従うことではない。
むしろ、「目的に共に向かうために、支える・補う・動かす」こと。
つまり、支援的な能動性である。
現場で起きている小さな不具合を誰かのせいにせず、
「自分にできることはないか」と考える人。
上司が見落としている点を静かに補い、
仲間同士の誤解をつなぎ直す人。
そうした一人ひとりの存在が、今の社会を変えていく。
フォロワーとは、命令を待つ人ではなく、
チームのエンジンを内側から動かす“もう一人のリーダー”だ。
■ 上司も限界、若手も疲弊――「孤独なリーダー社会」
多くの上司がこう漏らす。
「部下がついてこない」「指示しても動かない」
一方で若手は言う。
「何をしても評価されない」「自分の意見なんて通らない」
このすれ違いは、世代間の価値観の差だけではない。
組織の構造そのものが“片翼飛行”になっているのだ。
リーダーシップばかりが重視され、フォロワーシップの教育は置き去り。
結果として、リーダーは孤独に燃え尽き、フォロワーは冷めていく。
Gallup社の調査(2022年)では、
日本のエンゲージメント率はわずか6%。
つまり、94%の人が「心から仕事に熱中していない」。
この現実を変えるには、
「支配と従属の構造」から「共鳴と貢献の文化」へ、
社会全体の意識をシフトさせる必要がある。
■ JTBA流(齋藤流):フォロワーシップを育てる3つの壁
フォロワーシップは、自然には育たない。
教育が必要だ。経験が必要だ。対話が必要だ。
JTBAでは、それを3つの壁で体系化している。
曖昧性の壁伝えたつもりで終わる人から、伝わるまで伝える人へ。
“理解してもらう努力”が信頼の出発点になる。 関係性の壁
利害で動く関係から、支え合う関係へ。
困っている仲間を「自分ごと」として助けられるかが鍵。 存在の壁
不平・不満を放つ側から、エネルギーを供給する側へ。
自分の感情とチームの空気がつながっていることを理解する。
これらを超えた先に、初めてフォロワーは“チームを動かす存在”になる。
■ 「支える力」を育てる3つの実践
フォロワーシップを育てる現場のステップはこうだ。
Step1:目的の共有(チーム意識)
「何をするか」ではなく「なぜそれをするのか」を全員で語る。
この対話が、やらされ感を共創感へ変える。
Step2:信頼の形成(安全な場)
失敗や弱音を話せる空気をつくる。
本音で語り合えないチームに、能動性は生まれない。
Step3:貢献の自覚(当事者意識)
「このチームを良くするのは自分だ」と思えた瞬間、
人はフォロワーではなく“仲間”になる。
■ 誰かがやる、ではなく、俺が私がやる
フォロワーシップの時代とは、
「誰かがやってくれる」ではなく、「俺がやる」「私が動く」と言える人が増える時代だ。
それは、上司でも部下でもなく、“人間としての成熟”の証。
指示されずとも動く。
責任を押しつけ合わず、分かち合う。
立場ではなく、在り方で人を動かす。
フォロワーシップが根づいた組織には、静かな熱がある。
そこではリーダーも部下もなく、
「このチームを良くしたい」という同じ炎が燃えている。
■ 結び ― 支える人が、未来を変える
この国は今、リーダー不足ではない。
フォロワーの覚醒不足だ。
本当にチームを動かすのは、
命令ではなく、支える力。
孤独なリーダーを救うのも、
次の時代を創るのも、
実は“フォロワーの一歩”である。
JTBAは、その一歩を体系化した。
3つの壁を越え、8つの要素を育み、
誰もが自分の中のリーダーシップを発揮できるように。
「支えること」が最高のリーダーシップである。
その文化が根づくとき、
組織も、社会も、もう一度、希望を取り戻す。
