渡邊は「選手ミーティングをしてチームワークが深まったとかじゃなくて、選手一人ひとりが感化されただけだと僕は思う」と語る。まずは思っていることを主張して、仲間に認識してもらう。その一つが、どうしても一人ひとりが本来の特長をピッチ上で発揮できていないことだ。

「この間のような試合が最低限できれば、そこからコンビネーションプレーとかになっていくのかなと、試合をやりながら思いました」と渡邊が語るように、柏戦は結果に向き合いながらも、そのために一人ひとりが自分の特長を出すというところは、東京V戦より引き上がったことは明らかだった。

「まだ個人個人の力が引き出されない感じで、不完全燃焼で90分を終えることって、めちゃめちゃ今シーズンはあったと思うので。それをなくしながら、最後にチームとしてこうしていくべきだよねっていう会話ができれば、良い位置にいられるんじゃないかなって」

 柏戦は後半アディショナルタイムのPKで勝利という辛勝ではあったが、ミーティングで選手たちが発信した今の浦和、これからの浦和に求められるもの、その芽がところどころに見えるような試合だったことも確かだ。

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 ただ、そうした個人の良さが出てきただけでは、継続性のある強い勝ち方は望めないだろう。渡邊も認めるように、結局はチームとしてまとまっていく必要があるからだ。

 浦和のアカデミー出身で、欧州での挑戦期間を挟んで在籍10年目となる関根貴大は、選手ミーティングについて「それぞれ感じることは違うと思う。こういう状況でも。誰の言葉がどう響くのかは人それぞれだと思ってた。そのなかで、いろんな選手が発言してくれたことが良かった」と振り返る。

 関根が仲間たちに発信したことは「ピッチ上にリーダーがいない現状がある」ということだった。「方向性が定まらないというか、ピッチの中で解決できないのが、今一番の問題だなっていう感じなので。そこは伝えました」。

 つまり関根が言うところのリーダーとは、チームリーダーというよりも、スコルジャ監督の戦術的な意向を落とし込みながら、相手の出方を読んで、方向付けができるリーダーのこと。それは関根のようなアタッカーより、中盤から後ろの選手が担っていくべきだと彼は考えている。

 サミュエル・グスタフソンなのか、安居海渡なのか、原口元気なのか。「ピッチ上にリーダーがいないと、僕が言うのはそこにつながるんですけど、ゲームをコントロールするところで、そういう選手は必要だなと。ピッチの中でああしたい、こうしたいとコミュニケーションを取ることが大事」と関根は語るが、基本的にはボールを持って出していく選手が、方向性を握る部分は大きい。
 
 言い換えると、そこがしっかりしていないと、いくらアタッカーがゴールに矢印を向けていても、そこに線が引かれていかない。ポジション的に使われる側、活かされる側の関根ではあるが、だからこそピッチ上のリーダーを助けていくための働きかけが、周りの選手にも必要であることを認識している。

「そこは自分が今、足りてないなと感じる部分でもあるし、うまく使うじゃないけど、それぐらいポジションを取らせるシーンがあってもいいと思うんですよ。自分がここで受けたいから、ボランチがそこで受けてくれ、サイドバックがそこで受けてくれっていうのは、もっと要求してもいい」

 この現状をどうにかしたいという選手たちの思いが、こうして表に出ただけでも大きな前進だが、浦和が本当にタイトルを争えるチームになるために、来年のクラブワールドカップで世界での躍進を目ざすにふさわしいチームになるために、監督交代から必要なプロセスの第一歩を踏んだにすぎない。

 まずは目の前にあるJ1残留を確かなものにして、良いシーズンの締めくくりができるか。理想からかけ離れてしまったリアルを受け入れながら、あるべき場所へ着実に昇っていくしかない。

取材・文●河治良幸