「全面解決」は遠い

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 NHKは今年の「紅白歌合戦」で、一年の最後を飾るにふさわしい“サプライズ”を準備しているという。それが「ジャニーズ枠の復活」とされるが、そのもくろみに影を落としかねない、新たな難問が浮上中なのだ。

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 大みそかに放送される「第75回NHK紅白歌合戦」の司会者は、タレントの有吉弘行に俳優の橋本環奈、伊藤沙莉、同局の鈴木奈穂子アナウンサーが務めることが発表された。

「朝ドラの前・後期のヒロインが共演するのは“紅白史上初”のこと。過去35年で最低の視聴率を記録した昨年の雪辱を果たそうとの強い意気込みが伝わってきます」(放送ライター)

各局が起用に前向きな理由

 実は司会陣だけでなく、出演者についても「異例の仕掛けを考えている」と話すのはNHK関係者だ。

「全面解決」は遠い

「旧ジャニーズ事務所(現スマイルアップ)がジャニー喜多川氏による性加害を認め、謝罪した昨年9月以降、同事務所のタレントの起用は控えていましたが、いよいよ“解禁”の環境が整ったと判断しています」

 NHKだけでなく、フジテレビも昨年は中止された「ジャニーズカウントダウンライブ」を年末、ジャニーズの名称を使わない形で放映する意向と伝えられる。

 芸能プロ幹部の話。

「旧ジャニーズ事務所所属タレントのマネジメントなどを行っているSTARTO社とフジの間で、開催に向けた話し合いが進んでいると聞く。また滝沢秀明氏が立ち上げたTOBE所属の元『King&Prince』メンバー平野紫耀、岸優太、神宮寺勇太による『Number_i』が今年、TBSの日本レコード大賞に出演するとの話も浮上しています」

 各局が旧ジャニーズタレントの起用に前向きとなった理由の一つに、被害者らでつくる「ジャニーズ性加害問題当事者の会」が先月、解散したことが挙げられる。これにより、「一定のみそぎは済んだ」との認識が共有され始めているという。

調停の行方

 性加害問題を巡ってはスマイルアップに対し、これまで999人が被害を申告。うち504人と補償内容で合意に達した(9月末時点)。一方で折り合いがつかず、調停へと移行した被害者も4人いる。

 NHK側が注視しているのはこの調停の行方だと話すのは、先の同局関係者。

「紅白で起用するとなれば、地ならしに加え、補償問題に解決のめどが立つことが前提になる。実は9月末にNHKスペシャルで性加害問題の検証・総括番組を放送する予定でしたが、自民党総裁選や、10月初旬に被害者の一人と調停が開かれる関係から延期になった経緯があります」

“18億円以下は受け取らない”

 なぜNHKは調停を気にかけているのか。「当事者の会」関係者がこう明かす。

「10月8日に行われた調停で、被害者の一人に対してスマイルアップ側が従来より200万円を上乗せした2000万円の補償金を提示。ところが当の被害者はいまなお、億を超える金額を要求していると聞きます。そもそもスマイル側の当初の提示額1800万円に対し、“18億円以下は受け取らない”と話したといい、調停が進むにつれ要求額は4億、さらに2億円近くにまで下がったものの、金額の隔たりは埋めようのないほど大きなままとされます」

 先のNHK関係者が言う。

「調停がこれ以上もめて、訴訟にまで発展したら、性加害問題に再び注目の集まる事態が予想される。そうなれば、旧ジャニーズタレントを起用したテレビ局にも騒動が飛び火しかねないことを恐れているのです」

 NHKに紅白への旧ジャニーズタレント起用の有無などについて尋ねると、

「個別の番組の制作や編成の過程についてはお答えしていません」(同広報局)

 と回答した。NHKの覚悟と信念が問われている。

「週刊新潮」2024年10月24日号 掲載