全部の数字について確認しなくても、「あること」に気づけばいっきに解けます

「算数から勉強をやり直して、どうにか東大に入れた今になって感じるのは、『こんなに世界が違って見えるようになる勉強はほかにない』ということです」

そう語るのが、2浪、偏差値35から奇跡の東大合格を果たした西岡壱誠氏。東大受験を決めたとき「小学校の算数」からやり直したという西岡氏は、こう語ります。

「算数の考え方は、『思考の武器』として、その後の人生でも使えるものです。算数や数学の問題で使えるだけでなく、あらゆる勉強に、仕事に、人生に、大きくつながるものなのです」

そんな「思考の武器」を解説した45万部突破シリーズの最新刊、『「数字のセンス」と「地頭力」がいっきに身につく 東大算数』が刊行され、発売すぐに3刷と好評を博しています。

ここでは、「約数に対する感度」を計る算数の問題を解説してもらいます。

数字に強い人は「約数に対する感度」が高い

算数や数学ができる人は、「約数」に対する感度が高い場合が多いです。


約数とは、「ある整数に対して、その数を割り切ることのできる整数」のことです。10だったら2や5で割れるのでこれが約数になり、55だったら5や11が約数になります。

例えば「13/78」という数を見たときに、みなさんはすぐにこの数を約分することを思いつくことができるでしょうか? 78は13を約数に持っており、「78÷13=6」となります。ですから「13/78」は「1/6」なのです。

こういった感覚があれば、例えば「78人の参加者をどのようにテーブルに配分しようか?」といったことも考えやすくなり、実社会でもいろんなところで活用することができるのです。

そんな約分にまつわる、ちょっと面白い問題を紹介させてください。

1〜100の番号がついた箱がある。
「1の倍数番目の箱すべてにボールを入れる」
「2の倍数番目の箱すべてにボールを入れる」
……という試行を、100の倍数まで繰り返したとき、ボールが偶数個入っている箱はいくつか?

難しいですが、例えば6番目の箱で考えてみましょう。

6は、1の倍数、2の倍数、3の倍数、6の倍数のときにボールが入りますね。7の倍数以降は、6がそもそも7より小さいですから、入ることはありません。なので、これで終わりになり、合計で4個になります。

こう考えると「箱に入るボールの個数」は、「箱の番号の約数の個数」と一致します。

約数とは、先ほどもお話ししたとおり「ある整数に対して、その数を割り切ることのできる整数」のことです。この問題は、約数の個数を考えて、「1~100のなかで約数が偶数個あるものはいくつか?」という問題と答えが同じになるわけですね。

「小さい数」で実験してみる

では、いくつか試してみましょう。

2番目の箱はどうでしょう? これは、1と2が約数なので、2個ボールが入ることになりますね。同じように、10番目の箱は、1と2と5と10が約数なので、4個ボールが入ることになりますね。12番目の箱は、1と2と3と4と6と12が約数なので、6個ですね。

こう考えていくと、実はかなり、約数の数が偶数個のものが多いのではないか、ということがわかります。

なぜ、約数は偶数個の場合が多いのでしょうか? まず、約数を求めるときに重要なのは、「◯×■」の形に置き換えて、その個数を数えることです。

例えば「2・3・5・7・11・13」のような素数は、「1×2」「1×11」のように、「1×『その数』」となります。この場合、約数は「1とその数」になるわけです。11は「1と11」、13は「1と13」となりますよね。この場合は2個で、約数が偶数個あることになります。

(外部配信先では記事中の図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)


6や8のような数は、6は「1×6」の他に「2×3」、8は「1×8」の他に「2×4」とあらわせます。このとき、6の約数は「1・2・3・6」、8の約数は「1・2・4・8」の各4個となり、これも偶数です。

12は「1×12」「2×6」「3×4」になりますから、「1・2・3・4・6・12」で6個となり、偶数個になるわけです。


「◯×■」の形で表せる個数が1つのパターン(1×「その数」)しかなければ約数は2個、2つのパターンなら4個、3つのパターンなら6個となっていきます。

そう考えると、100までの数の約数は、ほとんどが偶数個あるのです。


約数が奇数個なのは、どんな場合か

ではこの問題の答えを求めるために、逆のことを考えてみましょう。約数の個数が奇数になるのは、どんなときでしょうか?

これは、「◯×■」の形で表したときに、○と■が同じ数の場合ですね。例えば、4や9を考えてみてください。4は「1×4」の他に「2×2」、9は「1×9」の他に「3×3」となります。

このとき、普通であれば「◯×■」の形で2つのパターンで表せるので4個になるはずですが、4は約数が「1・2・4」、9は「1・3・9」で、両方とも3個となります。なぜこうなるかというと、「2×2」「3×3」のように、同じ数が被っているからですね。本来4個になるはずが、同じ数同士での掛け算だから、1個減ってしまうわけです。


つまりは4や9のように、「同じ数同士の掛け算」で表せる数が、奇数個の約数を持つことがわかります。例えば16なら、「1×16」「2×8」「4×4」で、本来なら6個の約数を持つはずですが、4が被っているので約数は5個で奇数となります。

こうやって考えていくと、100までの中に問題の条件と合うのは、次の10個が該当するとわかるはずです。


ということで、100個の中からこの10個を引いて、答えは90個となります。

いかがでしょうか? 100までの数の中で、偶数個の約数を持つものは90個もあるというのはちょっと面白いですよね。ぜひ、約数に対する理解を深めてみてください!

(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)