【闇バイト】から“家族を守る方法”とは? 元警視庁捜査官・刑事が解説
2024年8月以降、首都圏で「闇バイト」を使った一連の強盗事件が相次いで発生しています。これまでに「実行役」や「見張り役」、現金の「回収役」など30人以上が逮捕されています。「闇バイト」への対策などについて、防犯事情に精通する日本カウンターインテリジェンス協会代表の稲村悠さんが解説してくれました。
SNSで「高額案件」「即日払い」と言って引き込ませる
最近の「闇バイト」の募集方法は、犯人たちの供述などによると、SNSなどで「ホワイトな高額案件があります」「引っ越し即日払い10万円」「高額案件 タクシー業務 書類運搬受け取り 日給5万円から」などという書き込みを見つけ、募集したという報道がありました。
「闇バイト」の募集方法について、稲村さんは「警察庁が2023年7月に発表した『犯罪実行者募集の実態』によると、闇バイトへの参加経路は主に、(1)自身で応募(2)知人に誘われた(3)SNSのつながりから誘われた、といった3つのパターンに分類されている」と言います。
大手求人サイトで、「『高収入』をうたい、高額、即日現金、高額即金、副業、ハンドキャリー、書類を受け取るだけ、行動確認・現地調査のアルバイトなどと称して募集していたこともわかっています」。
また、犯罪グループの募集時の募集文言として、「高額収入・高額バイト・安全に稼げます・1件10万〜・犯罪ではありません・学生可能・初心者大歓迎・国対応・保証金なし・営業で地方へ出張する仕事・リスク無し・詳しくはDM・ホワイト案件・高校生でもいける・詐欺ではありません・誰にでもできる簡単な仕事」などとうたっていることもあるということです。
知人に誘われたパターンでは、「仕事を探していたら先輩・知人などから『闇バイト』を紹介された」「先輩から金銭トラブルをふっかけられ、借金返済のため『受け子』の役目を強要された」などがありました。
SNSでは、「SNS で知り合った人に『金を貸してほしい』旨の相談をしたら『銀行協会の委託の仕事を紹介する』などと言われ、犯行グループを紹介された」というものもありました。
こういった募集の実態がある上で、「犯罪グループから応募者の個人情報を要求されたり、犯行から抜け出したいという少年たちに対し、本人や家族、交際相手への危害などを匂わせ脅迫するなどグループから“抜け出させない手口”」が存在しており、これが昨今の粗暴かつ雑な犯行の大きな特徴を生み出しています。
家族を「闇バイト」に参加させないためには… 「侵入」対策とは
稲村さんは、警察庁の資料から、闇バイトに加担した少年たちの声として「闇バイトが犯罪実行役の募集であることやその仕組みや個人情報を握られ、自分だけでなく家族も脅迫されることで、犯行グループから抜け出せなくなってしまうことを知っておきたかった」「警察に捕まるリスクや、刑の重さ、罰金額、逮捕されれば少年院に行かなければならないことを知っておきたかった」と紹介してくれました。
続けて、「少年たちは、このような当たり前の情報を知らなったという事実」に驚いたといい「警察としては、闇バイトに関連するSNSの投稿の削除や、広報活動を通じてその危険性を周知してもらう取り組みを行っていますが、身近にいるご家族がその実態を説明してあげることに尽きます」といいます。
家族を闇バイトに加担させない方法として、「強盗の実行役は必ず捕まる」「楽に高額が稼げるバイトは存在しない」「金銭問題の解決について、一人で決断しない(相談させる)」「特殊詐欺・強盗に関する犯罪組織の手口を詳細に理解させる」、そして、「捕まった後の悲惨な人生を理解させる」などと、「具体的な言葉で想像力を喚起するように、伝えてほしい」といいます。
自宅に押し入られた時の対処法についても聞きたいところ。稲村さんは「(1)『個人情報』に関する対策、(2)家への『侵入』に対する対策、(3)侵入しにくい『地域』の構築(主に強盗事件を念頭)の3つの観点での対策が重要」といいます。
次に、家への「侵入」に対する対策として「防犯ステッカーの貼り付け」「防犯カメラ/センサーライトの設置」「インターホンでの対応」「窓ガラスを割れにくくする防犯フィルムの貼り付け」「補助錠の設置」「在宅時の施錠(マンションの高層階があえて狙われる事例も多い)」「置き配を放置しない」と挙げてくれました。
しかし、「いわば実行犯を使い捨てする昨今の強盗犯の組織構造から見れば、抑止が働くはずの防犯カメラやセンサーライトが意味をなさない事例も出ています。過去には、防犯カメラの位置は気にしつつも、絶対に映らないようにという工夫を一切行わない犯行も見られます。そのため、特に、物理的に入れない環境を構築する必要があります」。
また、「5分の犯行に耐えれば犯人の大多数が諦めるというデータもありますが、現在の強盗犯の構造のうち、『実行犯は使い捨て』と『実行犯が脅されている場合もある』という部分から極めて粗暴かつ雑な犯行が行われ、これまでの防犯常識が一部通用しないこともあり、現在の強盗犯の構造が、これまでの防犯認識のギャップを生み出している状況にもあります」と続けていました。
そして、犯罪を起こさせない地域作りについては「近所であいさつをする」「近所と情報共有(不審な下見や訪問の情報など)をする」と明かしてくれました。
最後に、強盗に遭遇した際の対策も説明します。「抵抗しない(可能であれば外に逃げ出すのが最善だが、実際は難しいケースが多い)」「無理してその場で通報しない(犯人に逆上される可能性が高まる)」「時間と相手の言動や特徴を記憶する(話し方やなまり、衣類・靴、行動など)」「強盗が去ったことを確認した後、速やかに110番し、記憶している内容をメモなどに残す」。
不安に駆られる日々を過ごしている人も多いと思います。今一度、防犯意識を高めて、自身の周辺での対策を真剣に検討してみてください。