“謝礼金”目的で署名活動する親子…イーロン・マスク氏“カネ配り”の実態 時給6000円以上で投票呼びかけも【アメリカ大統領選】

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11月5日に行われるアメリカ大統領選挙まで、2週間を切った。激戦州となっている7つの州では、いずれもトランプ候補がハリス候補をわずかながらリードしている状況だが、その背景の一つにあるのが大富豪イーロン・マスク氏の“お金”だ。現地を取材した。

イーロン・マスク氏がトランプ氏に多額の献金

10月14日、アリゾナ州のトランプ氏の演説会場前には、熱狂的なサポーターたちが集まっていた。隣国メキシコに接するアリゾナ州では、移民問題が大きな争点となっている。

「11月5日に私が勝利すれば、移民の侵略は終わり、わが国の復興が始まる!」

トランプ氏は13日、ハリス副大統領の移民政策を批判し支持を訴えた。

こうした政策に共感し、今、トランプ氏を強く推し上げている存在が、起業家で世界有数の富豪、イーロン・マスク氏だ。マスク氏は7月にトランプ氏への支持を表明して以降、集会に参加するなど支援を続けている。

10月5日に激戦州の一つペンシルベニア州で行われたトランプ氏の集会で、マスク氏は「ご覧の通り、私はただのMAGAではなく、ダークMAGA(熱烈なトランプ支持者)です」と語っていた。

さらに、自身が設立したトランプ氏を応援する政治資金管理団体「AMERICA PAC(アメリカパック)」に約7500万ドル(112億円余り)を献金したことも明らかになった。

マスク氏が献金した多額のお金は、一体どこに流れているのか。

署名活動する親子…目的は“謝礼金”

「皆さん聞いてください。これは僕たちの表現の自由と銃所持の権利を守るために、トランプ氏を支援するマスク氏の嘆願書です。署名をお願いします」

アリゾナ州の演説会場でFNNの取材班は、参加者に繰り返し署名を求めている親子を目撃した。

署名を集めていたのは、13歳のオリバー君と母親のアニーさん。2人が行っていたのは、マスク氏が呼びかけた言論の自由と銃所持の権利を支持する嘆願書への署名活動だ。

マスク氏は、激戦州で署名をした有権者を紹介した人に、一人につき47ドル(約7000円)を支払うと発表。署名活動の目的はその謝礼金だった。

――いくら欲しいですか?
オリバー君:
5000ドル(約75万円)から1万ドル(約150万円)くらいかな。

こうした署名に賛同した有権者はトランプ氏への投票に結びつく可能性が高く、マスク氏はこれらの名前や住所などの情報を活用し、トランプ氏を側面支援する狙いがある。

親子は4時間ほどで550人分の署名を集めた。認められれば、約390万円を受け取れる計算だ。

こうした署名は個人だけではない。マスク氏が設立した団体のスタッフも、トランプ氏の演説会場前にブースを出して署名活動をしていた。スタッフの時給は30ドル(約4500円)と破格の待遇だ。なかには州外から時給6000円以上で集まったスタッフもいて、それぞれが一日300件近く有権者の家を回り、投票を呼びかけていることが取材で明らかになった。

さらにマスク氏は19日、署名者の中から毎日1人に100万ドル(1億5000万円)を授与すると発表。署名はトランプ氏への投票を直接呼びかけているわけではないが、こうした手法に違法性を指摘する声も出ている。

アリゾナ州は過去5回の大統領選挙で共和党が4回勝利。しかし、前回はトランプ氏がわずか1万票、0.4ポイント差で破れた。

トランプ陣営が危機感を抱く理由の一つが居住者の変化だ。

民主党支持者が多い隣のカリフォルニア州から、住宅代の高騰などで毎年約7万人が移住。そのため、共和党の地盤が徐々に弱まっていて、ハリス氏とトランプ氏への支持は拮抗している。

過激な発言と影響力の大きさがよく似たマスク氏とトランプ氏。マスク氏が政治的影響力をさらに強める社会を望むかどうかも、争点の一つになっている。
(「イット!」10月23日放送より)