「痛風の初期症状」はご存知ですか?治療法や予防法も解説!【医師監修】

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痛風は、中年男性に起こりやすい生活習慣病です。痛風について、歩けないくらいの激痛を連想する人が少なくないのではないでしょうか。

痛風の原因となる尿酸値は健康診断の血液検査項目にも反映されており、定期的に健康診断を実施していれば発症予防が可能な病気です。

本記事では痛風はどのような病気なのか、原因や初期症状だけでなく治療や予防法などを詳しく解説していきます。

≫「痛風性関節炎」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

監修医師:
眞鍋 憲正(医師)

信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

痛風の原因や初期症状

痛風とはどのような病気ですか?

痛風は血液中の尿酸値が限界を超えて上昇し、結晶化したものが関節で炎症を起こす病気です。風が吹いただけでも痛みを感じるくらいの激痛だとの例えから痛風と呼ばれていますが、医学的には高尿酸血症ともいわれています。痛風は足の親指の関節が痛むと思われていますが、足の親指の関節だけではありません。足首の関節や膝関節、手の関節など身体中の関節で痛みが発生します。また生活習慣病との関連性も指摘されており、脂質異常症や動脈硬化などを併せ持っている可能性があります。

原因を教えてください。

痛風の原因は生活習慣や腎機能の低下がんや白血病です。身体のエネルギーの材料であるプリン体は、肉や魚などの食べ物を通じて摂取されたり運動によって自然に人間の身体で合成されたりします。合成されたプリン体は必要に応じて肝臓で分解され、その際に出る不要なものが尿酸です。尿酸自体は無害なものの、蓄積量が多かったり肥満や運動不足だったりすると尿酸が分解されず、結晶化して関節や腎・尿管に貯まります。身体に溜まった尿酸を白血球が外敵とみなし攻撃すると、尿酸結晶が蓄積している場所で炎症が起こります。腎臓病などによって腎機能が低下している場合、腎臓が尿酸をうまく処理できず体内に蓄積されるため高尿酸血症が起きるのです。がんや白血病に罹患し治療している場合、抗がん剤などの作用により腫瘍が死滅した際に体内の尿酸や電解質が増えてしまうケースがあります。腎疾患やがんなど尿酸値を高くする原因となる疾患に罹患している場合は、その病態に応じた治療が必要です。

痛風の初期症状を教えてください。

痛風には、以下のような初期症状があります。

関節の違和感

関節の発赤

関節の腫脹

軽度~中程度の痛みが持続する

急な関節の激痛が7~10日程持続する

痛風の関節炎は、足の親指や中指の関節で起こる場合が少なくありません。ほかにも膝関節や手首の関節に炎症が起こるケースもあり、どこの関節で炎症が起こるかは個人差があります。痛風発作を発症すると、いきなり歩行できなくなるような激痛に襲われるケースがほとんどです。痛風発作は一般的に7~10日程続き、発作が治ると次の発作が起こるまでの期間は無症状で経過します。

症状は突然出るのですか?

痛風発作は突然起こるのが一般的なものの、前述したように発作の前触れとして関節の発赤や腫れ、違和感を覚える方もいます。また痛風発作とは異なり、関節炎として軽度~中程度の痛みが持続したり関節が変形したりする方もいます。一般的に血液検査で尿酸値が8.0~9.0mg/dL以上だった場合、高尿酸血症と診断され尿酸を下げるために内服治療が必要です。生活指導や内服治療によって尿酸値が下がると症状の予防が可能ですが、痛風発作が起きているときは尿酸を下げる薬は使用せず炎症を抑えるための治療を開始します。

痛風の診療科や治療方法

痛風が疑われる場合はどの診療科で受診すればよいですか?

痛風は内科的疾患のため、内科を受診するとよいです。痛風の検査は内科以外に外科などでも検査は可能なものの、内服治療を開始する場合は定期的な受診が大切です。かかりつけの内科がある場合は、かかりつけ医に診察してもらうと通院しやすく治療も継続できます。痛風は動脈硬化などの生活習慣病と関連しているだけでなく、痛風腎や尿管結石など腎疾患が起きている可能性もあります。動脈硬化や脂質異常症を指摘されている人は循環器内科、腎機能の異常や尿管結石の既往歴がある方は泌尿器科や腎臓内科を受診するとよいでしょう。

どのように診断されますか?

痛風を診断するためには、以下のような検査を行います。

血液検査

関節レントゲン検査

超音波検査(エコー)

尿検査

痛風と診断するためには、血液検査で尿酸値を確認します。痛風発作が起こっている最中は必ずしも血中尿酸値が高いわけではないため、痛風以外の疾患との鑑別が必要です。痛風の発作が起きている場合は診断のため、痛みや腫れのある関節を超音波で観察し尿酸結晶の有無や量を確認します。尿検査は尿に尿酸がどのくらい含まれているかを計算するために、血液検査と一緒に行います。痛風結節が関節に蓄積していると、関節レントゲンで結晶化した尿酸の確認が可能です。初期の痛風である場合はレントゲンでわからないため、関節液を採取して関節液に結晶が含まれているか確認するケースもあります。

痛風の治療方法を教えてください。

痛風の治療方法には、尿酸値を下げる治療法痛風発作の沈静化を図る治療法があります。どちらの治療も薬物療法が基本です。痛風発作を引き起こす可能性がある場合、発作が起こる前の前兆期にコルヒチンやグルココルチコイドなどのNSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛薬)を使用します。発作が起こる前にコルヒチンをはじめとするNSAIDsを服用すると、発作の勢いを弱めたり痛みを和らげたりする効果があるのです。NSAIDsは痛風発作がすでに起きている場合の治療にも用いられており、発作の前兆期と発作時では薬の投与量や期間が異なります。消化管潰瘍などがありNSAIDsを利用できない方や慢性的に関節炎を起こしている方は、ステロイドを用いた治療をするケースもあります。痛風発作や症状がなくても血液検査で尿酸値が8.0~9.0mg/dL以上だった場合に行う治療は、痛風発作や関節炎の予防です。基本的には薬物療法が選択され、尿酸を排泄させる役割のある薬や尿酸の生成を抑える薬が処方されます。

痛風の予防法

痛風予防のために生活習慣で注意するべき点はありますか?

痛風の発症を防ぐために大切なのは、規則正しい生活習慣です。血中の尿酸値を上げないような食生活を送るために、過剰にプリン体を含む食材を控えて栄養バランスが整った食事を摂りましょう。肥満は血中尿酸値が高くなりやすいと指摘されており、体重が減少すると血液検査での尿酸値も改善するとの報告が挙げられています。そして食生活のほかに大切なのが運動と水分摂取です。無酸素運動は血液中の尿酸値を高めるため、減量のために運動するのであればウォーキングなどの有酸素運動を始めるとよいでしょう。運動後は、十分な量の水分摂取も欠かせません。運動によって汗をかいた後に水分摂取を怠ると、血液が濃縮され血液の尿酸の濃度が高くなります。運動後は十分な休息を確保する習慣をつけ、規則正しい生活習慣をつけていくのが大切です。

痛風予防のための食事のポイントを教えてください。

食生活は痛風と大きく関係しており、内蔵脂肪の蓄積と尿酸の蓄積の関連性が指摘されています。プリン体を多く含む白子や干物などは極力摂取を控えた方がよいですが、肉や魚は身体にとって貴重なタンパク源なため適正量の摂取が大切です。ビールも尿酸値を高めるため、痛風を予防するためには飲酒を控える必要があります。乳製品は血液中の尿酸値を低下させる作用があるといわれているため、適切な量を食生活に取り入れるとよいでしょう。また果糖をはじめとする糖類は、血液中の尿酸値を上昇させる作用があるため摂りすぎには注意が必要です。糖尿病や脂質異常症などの疾患を指摘されている方は、かかりつけの医療機関で食生活について相談してみるのもよいでしょう。

痛風予防のためには肥満を解消した方がよいですか?

痛風予防のためには肥満を解消し、適正体重を維持するのが大切です。肥満になると糖代謝が弱まったり、脂質異常症や高血圧を引き起こしていたりする場合があります。いずれの疾患も高尿酸血症と密接に関係しており、痛風の発症リスクとなるのです。肥満を解消し通風を予防するために、自分自身の標準体重を目標の体重に設定し減量するとよいでしょう。一般的に標準体重はBMI:18.5~25までとされており、標準体重は身長(m)×身長(m)×22で算出します。自分で定期的に体重を測定する習慣を付け、標準体重に近づけられるような食生活や運動習慣を心がけましょう。

編集部まとめ


本記事では痛風の原因や症状、治療法から予防法などを解説しました。

痛風はプリン体を多く含む食べ物の摂取だけでなく、腎機能障害や肥満などが原因となるケースもあります。

痛風の治療は薬物療法が主体となりますが、薬物療法は処方された薬の容量・用法をしっかり守って服薬しましょう。

痛風を防ぐためには、尿酸値を高くしないような規則正しい生活習慣を心がけ、健康診断などで日頃から自分の身体をチェックする機会を設けるのが予防の第一歩です。

健康診断を受けた経験が無かったり、心配な症状があったりする場合は内科を受診してみてはいかがでしょうか。

参考文献

「痛風」(日本整形外科学会)

痛風(日本リウマチ学会)

慢性腎臓病と高尿酸血症