蕁麻疹

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監修医師:
大坂 貴史(医師)

京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

蕁麻疹の概要

蕁麻疹(じんましん)は、皮膚に突然現れる赤みを帯びた盛り上がり(膨疹)が特徴的な皮膚疾患です。この膨疹は通常、かゆみを伴い、数分から数時間で消えることが多いですが、再び別の場所に現れることもあります。蕁麻疹は非常に一般的な疾患で、人生のどこかで誰もが一度は経験する可能性があるとされています。急性の蕁麻疹は短期間で治まることが多いですが、慢性的に繰り返す場合は、原因や治療法の特定が必要となります。
蕁麻疹は、急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹に分けられます。急性蕁麻疹は短期間で治まることが多いですが、慢性蕁麻疹は6週間以上続くものと定義されますが、数ヶ月から数年続くことがあります。慢性の場合、日常生活に支障をきたすことがあり、適切な診断と治療が重要です(参考文献 1)。

蕁麻疹の原因

蕁麻疹は、皮膚の血管が拡張し、皮膚の下に液体が漏れ出すことで生じます。この反応は、さまざまな要因によって引き起こされる可能性があります。以下に、蕁麻疹の主な原因を挙げます(参考文献 1)。

アレルギー反応

食品(卵、牛乳、ナッツ、魚介類など)、薬物(抗生物質、鎮痛薬など)、動物の毛や花粉など、アレルギーを引き起こす物質が体内に入ると、免疫系が反応し、ヒスタミンなどの化学物質が放出されることで蕁麻疹が発生します。

物理的刺激

寒冷や熱、日光、圧力、運動などの物理的な刺激が原因で、特定の場所に蕁麻疹が現れることがあります。これは「物理性蕁麻疹」と呼ばれます。

ストレス

精神的なストレスや緊張が引き金となって蕁麻疹が発症することがあります。ストレスが免疫系に影響を与え、体内でのヒスタミンの放出を促進することがあるためです。

感染症

ウイルスや細菌の感染が原因で蕁麻疹が発生することがあります。例えば、風邪やインフルエンザ、胃腸炎などが原因となることがあります。

特定の病気

自己免疫疾患や甲状腺機能の異常、癌などの疾患が原因で蕁麻疹が現れることもあります。これらの場合、蕁麻疹はその疾患の一つの症状として現れることがあります。

薬剤

一部の薬剤が蕁麻疹の原因になることがあります。特に抗生物質や鎮痛薬が関与することが多いです。

食物

特定の食物に含まれる成分がアレルゲンとなり、蕁麻疹を引き起こすことがあります。特に、甲殻類やナッツ、卵などが一般的な原因です。

その他

原因不明の蕁麻疹も多く存在し、これを「特発性蕁麻疹」と呼びます。慢性蕁麻疹の多くはこのタイプに分類されます。

蕁麻疹の前兆や初期症状について

蕁麻疹の初期症状は、突然の皮膚のかゆみや赤みを伴う膨疹の出現です。膨疹は大きさは直径 1 cm未満から数センチメートルまでさまざまで、しばしば皮膚の表面が浮き上がったように見えます。これらの症状は体のどの部位にも現れる可能性がありますが、特に顔や手足、体幹に現れることが多いです(参考文献 2)。

主な初期症状

かゆみ: かゆみは、蕁麻疹の最も一般的な症状です。かゆみの強さは個人によって異なり、軽度のものから非常に強いものまでさまざまです。

膨疹: 赤みを帯びた盛り上がりが皮膚に突然現れます。これらは短時間で消えることもあれば、再び別の場所に現れることもあります。

腫れ: まぶたや唇、喉など、特定の部位が腫れることがあります。これは「血管性浮腫」と呼ばれ、場合によっては緊急の治療が必要です。

このような症状がある場合には皮膚科を受診しましょう。

蕁麻疹の検査・診断

蕁麻疹の診断は、主に患者の症状や病歴に基づいて行われます。以下は、蕁麻疹の検査や診断方法の例です(参考文献 1)。

問診

医師は、発症の状況や持続時間、引き金となった可能性のある要因について詳しく尋ねます。また、過去のアレルギー歴や薬の使用歴、家族の病歴なども確認します。

皮膚試験

特定のアレルゲンが疑われる場合、皮膚試験が行われることがあります。これは、疑わしいアレルゲンを皮膚に少量塗布し、その反応を見る検査です。

血液検査

アレルギー反応を示す免疫グロブリンE(IgE)や、その他の関連するマーカーを測定するために血液検査が行われることがあります。

除去試験

特定の食品や薬剤が原因と考えられる場合、疑わしい物質を一時的に除去し、その後再び摂取して症状が再現されるかを確認する試験です。

その他の検査

慢性蕁麻疹の場合や、特定の基礎疾患が疑われる場合には、さらに詳しい検査(例えば、甲状腺機能検査や自己免疫疾患のスクリーニング)が行われることがあります。

蕁麻疹の治療

蕁麻疹の治療は、症状を緩和し、発症の頻度や重症度を軽減することを目的とします。以下に、主な治療方法を紹介します(参考文献 1)。

抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン薬は、蕁麻疹のかゆみや膨疹を抑えるために使用されます。これらの薬は、ヒスタミンの作用をブロックすることで、症状を緩和します。市販のものから処方薬までさまざまな種類があります。

ステロイド薬

重症の蕁麻疹や、抗ヒスタミン薬で効果が得られない場合には、ステロイド薬が処方されることがあります。これにより、炎症やかゆみが抑えられますが、長期間の使用は副作用のリスクがあるため、注意が必要です。

生物学的製剤

慢性蕁麻疹の一部に対しては、オマリズマブという生物学的製剤が使用されることがあります。これは、IgEに結合してアレルギー反応を抑制することで、症状を軽減します。

緊急治療

血管性浮腫やアナフィラキシーショックなど、蕁麻疹に伴う重篤な反応が発生した場合、迅速な医療処置が必要です。エピネフリンの自己注射や救急車の手配が必要となることがあります。

蕁麻疹になりやすい人・予防の方法

蕁麻疹になりやすい人

蕁麻疹は様々なことが原因として起きますのでそのすべてで起きる可能性があります。過去に蕁麻疹を経験した人でそれと同じ状況になった場合や、過去に特定の薬剤で蕁麻疹がおきた人がもう一度その薬剤を使用した場合には再度蕁麻疹を引き起こす可能性が高いです。
また、特定の疾患に伴って起きる蕁麻疹の場合、一旦治療し蕁麻疹も収まっていたとしてもその疾患が再発した場合には蕁麻疹が再発する場合もあります。

予防の方法

蕁麻疹の予防には、原因の除去・回避が重要です。以前に蕁麻疹の原因として考えられる薬剤、状況などはできる限り避けましょう。しかし、特発性の蕁麻疹では,薬物療法を継続しつつ病勢の鎮静化を図ることが大切であり、薬物療法を継続することで皮疹の出現を予防できる事が多いため、処方された内服は医師の指示通りに継続的に服用する事が重要です(参考文献 2)。


参考文献

1.蕁麻疹診療ガイドライン

2.Up To Date 新規発症蕁麻疹