「大学は何も知らなかった」はおかしい…!日大陸上部<不正徴収問題>、被害者の現役学生が抱く「強烈な違和感」

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監督から虚偽の説明

日本大学の重量挙部の監督が、奨学生から免除されているはずの入学金・授業料など学費を不正に徴収していた問題。同大が調査した結果、陸上競技部、スケート部でも同様の不正徴収があったことが明らかになった。日大によれば、陸上競技部では4143万円、スケート部では約2336万円あまりの被害が生じていたという。

前編記事『日大陸上部が奨学生から439万円をダマし取っていた…!「なぜ母子家庭の我が家をターゲットにしたのか」<被害者が怒りの告白>』では、不正徴収されていた陸上競技部OBの「怒りの声」を紹介したが、学費をダマし取られていたのはOBだけではない。現役の学生Bさんもその一人だ。

「籍を置いているため不利益が生じることも考えられますが、大学側の対応には納得できない」として、Bさんが取材に応じてくれた。

「9月中旬に大学側から『陸上競技部における不適切な金員徴収のお詫びと返金手続きの御案内について』という文書が届き、初めて学費をダマし取られていたことに気づきました。

私の場合、もともと奨学生ではなく普通に学費を払っていました。ただ、大学3年時に好成績を残せたことを受け、陸上競技部の井部(誠一)監督から『頑張っているな。成績を評価して、4年時の施設費(約10万円)を免除してやる』と言われました。

ところが、実際は4年時の前後期の学費も免除の対象になっていたのです。

3年までは在籍する学部から振込用紙が届き、指定された口座に振り込んでいました。しかし、奨学生になった途端、監督名義の口座が記された学費納入の案内が郵送で届き、その口座に学費を振り込む形になりました。

疑問に思った母親は大学の会計課に『なぜ振込先が学部ではなく監督の口座なのか』と問い合わせましたが、『こちらではわかりません。直接監督とやりとりしてください』と取り合ってもらえませんでした。

結局、余計なことを言うと息子の立場が悪くなるかもしれないと考え、母親は監督に確認することはできませんでした」

一人でも多く優秀な子を入学させるため

9月中旬に陸上競技部の不正徴収が発覚した後、Bさんの母親は改めて不正徴収問題の窓口になっている日本大学競技スポーツセンター事務局に問い合わせた

「本部の職員という担当者の回答は『(振込先が監督の口座になっているとは)まったく知らなかった』『本来、学費は学校に収めることになっています。監督が学部の会計課に振込用紙を取りに行き、保護者に送付する。それが行われていなかったとは……』というもの。終始『悪いのは監督。大学は何も知らなかった』という態度だったとのことです。

教育機関においてこんないい加減なことがあるのか。母親は怒りを通り越して、呆れていました」

金銭面の不透明さについては、以前から陸上競技部内で問題になっていたという。

「先輩によると、ここ6、7年の間、部費の会計報告がなかったそうです。昨年、部員から『会計報告を出さないのはおかしいのではないか』という声が出て、井部監督がようやく決算報告書を出してきましたが、適当に作成したようなシロモノであり、さらに部員の怒りを買いました。

今回の不正徴収について、大学は『奨学生ではない部員の学費や施設設備資金に充てられており、幹部の私的使用は認められていない」と説明しています。不正徴収発覚を受け、母親が問い合わせたときも、スポーツセンター事務局の担当者は『一人でも多く優秀な子を入学させるための行為だったようです』と弁明していました。

奨学生から本来納入しなくていいお金を入金させ、そのお金で新たに学生を取ることは普通なのでしょうか。部の強化のための行為だったという言い訳は通用しないと思います」

陸上部監督を直撃

Bさんは「なぜ自分が不正徴収のターゲットになったのか知りたい」と訴える。

「私は無名校の出身であり、陸上競技部には高校のOBもいません。つながりがないから狙い撃ちされたのかな、いう思いです。

これは詐欺ですよね。まさか大学にダマされるとは思いませんでした。学費を払ってくれた両親も同じ思いです。

母親はスポーツセンター事務局の担当者に『今後、学生や保護者への説明会を予定しているのか。ぜひ開催してほしい』と求めましたが、『いまのところありません』との回答でした。

大学は不正徴収した分に加え、遅延損害金を加えた額を返金するとしていますが、返せばいいという問題ではありません。ちゃんと説明してほしい」

Bさんは練習場所で異常な光景を目のあたりにして困惑している。

「当事者である監督、コーチは何食わぬ顔で競技場に来て指導しています。謝罪も説明もありません。どういう神経をしているのか。理解できないというか、その感覚が気持ち悪い。恐怖です」

取材に対し、同部の井部監督は「本部に連絡してください。そう言われておりますので」と繰り返すのみだった。

一方、10月15日に質問書を送ると、日大の広報担当者は次のように回答した。

納得できる説明をしてほしい

――授業料などが免除されている陸上部の学生から不正徴収した金銭の使途は?

「9月18日付け『重量挙部事案の対応及び悉皆調査のご報告とお詫び』において、『主として奨学生でない部員の授業料・施設設備資金等の本学への納付金の半額・全額ないし一部等に充てられており、幹部の私的使用は認められていません』と公表したとおりです」

――返金のために大学側が立て替えた金銭は、陸上部の幹部に請求するのか。また立て替え金について、どのように会計処理するのか?

「関係した幹部については、さらに調査を継続して、背景等も踏まえて、厳正に責任追及を行います。立替金については、回収可能性の判断を含め、独立監査人と協議したうえで適正に会計処理する予定です」

――不正徴収に関与した陸上部幹部の人数、また不正徴収に関与していた陸上部幹部への処分は?

「関与した幹部の範囲については、保護者からの聞き取りも含めて、調査を継続中です。関係した幹部については、さらに調査を継続して、背景等も踏まえて、厳正に責任追及を行います」

Bさんはこう訴える。

「私は覚悟をもって行動しています。大学はこれ以上裏切らないでほしい。きちんと調査して、納得できる説明をしてほしい」

Bさんの言葉通り、返金すればいいという問題ではないことは明らかだ。被害に遭った学生および保護者の切実な声は大学側に届くだろうか。

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