【4次元空間は誰にでも見えます!】高次元を見るための入口「4次元空間」の考え方と高次元視力を鍛える「トポロジー的準備運動」

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宇宙はどんな形をしているのか? その謎に迫るために取り入れられているのが「トポロジー:位相幾何学」と呼ばれる数学です。このトポロジーの中でも、超弦理論との関係から近年注目されている「結び目理論」や、宇宙空間を考えるうえで重要になる「高次元幾何学」を中心に、この不思議な世界を紹介する新刊『宇宙が見える数学』。その中から、この記事では高次元の世界を見るための入口として、4次元空間を考えてみたいと思います。

*本記事は『宇宙が見える数学』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

4次元空間とはなにか

以前の記事で、「クラインの壺」は3次元空間ではどうやっても自己接触しますが、4次元空間では自己接触せずに実現できることを紹介しました。

どうすればよいか、もう思いつきましたか? 思いつかなくても当然です。なぜなら4次元空間について、皆様にまだきちんと説明していないからです。

私たちの住んでいる世界では、小さい点状の物体の位置は「たて・よこ・たかさ」の3個の数字がわかれば決まります。とりあえず、ふだん暮らしているぶんにはそうです。

この世には時間もあるじゃないか、と思われた方もいらっしゃいますか。いいところに気がつきました。

3次元空間から4次元空間へ

まずは、ある時刻の一瞬のことを考えるとします。もしくは、時間をある一瞬に止めたとしましょう。本当に止められるかということは考えず、想像上、時間をある瞬間に止めたと考えてください。こうやって空想することはとても大事です。

ある点の位置が3個の数字で決まります(図2の右)。また、その3個の数字はお互いに関連なく自由に決められるとします。そういう世界を、3次元空間、もしくは「3次元空間R3(アールスリー)」(*Rは二重線、3は肩付き)と呼びます。また、この「次元」は「自由に決められる数字の個数」という意味に考えてください。

4次元空間 R4 を考えてみよう

ここで、ある一瞬、ある一点が光ったとします。

これは、たて・よこ・たかさの位置と「時間」の4個の数字で特定できます。このように、4個の数字でひとつの事件あるいは、位置を決められる世界を「4次元空間R4(アールフォー)」(*Rは二重線、4は肩付き)といいます。

当然、時間も考えた我々の日常の空間は4次元空間R4と見なせます。4次元空間R4の概念的な図を描くと図3のようになります。

3次元空間R3とは別に、もう1本軸があります。この軸は、たて・よこ・たかさ、とは別の方向を向いています。この軸が時間の流れを表していると思えば納得できる方は、ここではそう考えてかまいません。

4次元空間にはたくさんの3次元空間が存在する

また、図2では、3次元空間 R3は1個しか描きませんでしたが、図3のようにたくさんの3次元空間を描いてもかまいません。当然、各時刻に3次元空間R3があるので無限個あるわけですが、無限個は描けません。

図4でのひとつひとつは、それぞれの時間における3次元空間を表していると考えることができます。もちろん、4次元空間R4の4番目の数字は、時間ではなく、温度や湿度でもいいです。

図4では、もう1本の軸を時間と見なします。図中の3個の3次元空間は、左から昨日の正午、今日の正午、明日の正午を描いたものです。時間は連続で流れますが、ここでは3つの瞬間を取り出しています。

4次元空間R4は、3次元空間R3が、4つめの軸の方向に動き、その通った「跡」と見なせます。

4次元空間R4の中で光る点の跡は?

さて、次のことを考えてください。たて・よこ・たかさ・時間で位置が決まる4次元空間R4を考えます。

ちょうど、時刻1秒のときに点光源が光り、そのままの位置で2秒間だけ光ったとします。そして、時刻3秒にその光は消えました。これを図にすると図5のようになります。

さあ、このとき「光っていた状態」は、4次元空間R4中でどういう図形になっているでしょうか?

そうです、線分になります。読者の皆様にも見えたと思います。そうです、4次元空間 R4の中の図形が見えた、ということです。

次元を1次元下げて類推すると

これの次元を1個下げた類推は以下のようになります。

たて・よこ・たかさで位置が決められる3次元空間R3の中に棒を置きます。その空間をよこ軸に垂直に切っていった断面を考えましょう。

左から切り口を順に見ていくと、最初は何もありません。ちょうど、棒の端の位置で切り口に点が現れてしばらく続きます。やがて、また点がなくなります(図6)。

このように1個次元の低い場合を類推し、逆に、そこから1つ次元を上げたものを空想するというのは、高次元を見るために大事です。

ここでひとつ注意してください。上述の、たて・よこ・たかさ・時間で決まる4次元空間の場合に説明します。今の場合、物理用語の「空間」は、時間を考えない、たて・よこ・たかさで決まる3次元空間のことです。

今の場合は、4次元空間を「4次元時空」と言います。時間と空間を合わせて「時空」です。ということは「4次元時空」は、数学でいう「空間」の一種です。空間という語の定義が2種類あるということです。

この記事で空間というと、おもに数学用語の意味での空間を指します。数学で空間というものは、もう少し広い意味で使われることもあります。

では、以降の記事で、「クラインの壺」がなぜ4次元空間の中では「自己接触しない」で作られるのかを見ていくことにしましょう。

3次元空間の中で「自己接触」しないで「クラインの壺」を作る方法はあるのか?その考え方が「4次元への入り口」だった!