便秘女性を救った「おからドーナツ」。料理家・飛田和緒が「生おから」で絶品レシピを考案

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半数近くの女性が便秘経験あり

料理家・飛田和緒さんの暮らしの中から、食材を無駄なく使っておいしく食べきる知恵を綴ってきた連載「始末の料理」。今回はたびたび登場するフードスタイリストのKさんの提案で始まりました。

実はKさん、長年便秘に悩まされてきました。早寝、早起き、自家栽培している野菜で自炊という健康生活で、便秘とは無縁かと思っていましたが、ひどいときは2週間も苦しむのだとか。

水分を摂り、食事にも気を遣って……で最近はかなり改善してきているけど、油断できないそうです。

Kさんだけでなく、便秘は多くの女性の悩みのようです。厚生労働省が行う国民生活基礎調査によると、便秘を気に病む女性の割合はなんと43.7%(2022年国民生活基礎調査の概況:厚生労働省より)。女性の半数近くが経験しているのです。

そんなKさんの便秘の特効薬が「おから」だったのです。中でも国産大豆、にがり、水だけで作る昔ながらの豆腐屋さんで売っていたおからドーナツは、食べると効果てきめんで、びっくりしたのだそう。

「おからの繊維と油が私には効くみたい」と豆腐以上に、ドーナツ目当てに通うになりました。

そんな話から、「ぜひ簡単に作れるおからを使ったドーナツレシピが知りたい」となり、「始末の料理」第18回は、「おから」となりました。

おからに含まれる“水に溶けない”食物繊維

でも、なぜおからがそんなにも「便秘」にきくのでしょう?

豆腐は豆乳を絞って作りますが、おからはその時に出る絞りカス。カスと言っても、たんぱく質や食物繊維、マグネシウム、カルシウム、ビタミンB2などの栄養素が豊富で、とくに食物繊維の量は100g中11.5gと、ごぼうの約2倍に当たります。しかも、おからの食物繊維はセルロースという水に溶けないタイプであるため、腸のぜん動運動を促し、便秘の解消となるのです。腸内の残留物を掃除にもなり、大腸ガンの予防にもつながるそうです。

特に便秘の悩みはない飛田さんも、おからの栄養素とそのお値段に注目。Kさんリクエストのおからドーナツ以外にも、改めておからの活用に目覚めたと言います。

FRaU web 連載中「飛田和緒が一人暮らしを始めて気づいた『祖母が煮物の残り汁を捨てなかった』理由」では、煮魚やすきやきをした後の煮汁でおからを炊くレシピを紹介しています。

「生おから」を冷凍保存

「私は普段はスーパーで買っています。大抵、豆腐や油揚げの横に並んでいますよ。おいしい豆腐が食べたいときに行く豆腐屋さんでは、豆腐を一丁買うと、おから一袋がサービスでもらえます。やはり豆腐屋さんのおからはできたて、絞りたてでしっとりして香りがいいのですが、毎回は買いに行けないので、時間があるときのお楽しみです」と飛田さん。

おからは、しっとりした「生おから」と、日持ちがするよう製品化された「おからパウダー」がありますが、飛田さんおすすめは「生おから」。ただしこちらはあまり日持ちがしません。飛田さんはどうしているのでしょう。

「冷凍保存しています。汁ものや鍋ものに使いやすいよう、50gずつくらいに小分けにして冷凍庫へ。1カ月くらいは持つし、使うときは凍ったまま調理にも使えます」(飛田さん、以下同)

豆腐屋が減ってしまい、なかなかできたてのおからを手に入れるのは困難ですが、見つけた時が買い時。すぐに使わない時は、冷凍しておきましょう。

ベスト配合のおからたっぷりドーナツが完成

飛田さんはおからドーナツも何度も試作したそうです。

「ドーナツといえば本格的なものはイースト菌を使って発酵させて膨らませますが、ここは“作りやすさ”と“おからの効果”を優先。手軽なベーキングパウダーを使います。

効果を考えると、できるだけおからを入れたいのですが、ただ増やすとおからが水分をどんどん吸って、ぱさつきがちに。粉との割合をいろいろ試し、やっとたどり着いた配合です」

生地をまとめるのに何を使うかなど、様子を見ながらいろいろ試してみたそう。

「栗を入れてみたり、バナナを入れてみたり、甘さもグラニュー糖や黒糖にしたりと、楽しかったですね。今回は“今のところの私のベストレシピ”を紹介しますが、すっかりはまってしまったので、もしこの先さらにいい配合を見つけたら、またお知らせします」

おから使いにハマりだした飛田さんは先日も、キンメの煮付けのあとに、卯の花を作ったそうです。卯の花のような、おから煮以外にはどんな料理に使いますか?

「最近気に入っているのはキムチ鍋に入れる、豚汁に入れること。自然なとろみがついて、汁まで美味しくいただけます。先日は、残っていたおから煮をみそ少なめの具なしみそ汁に入れてみたら、それもまた美味しかった」

「ほかにはポテトサラダに入れたり、パン粉の代わりに肉だんごやハンバーグなどのひき肉だねに入れたりしてカサ増しにしています。体にもいいし、節約にもなりますね。小分けにして冷凍保存しておくと、使い勝手がいいですよ」

最強の「卯の花」レシピ

低カロリー、低糖質、栄養豊富でかさましにもなるし、何よりお値段が嬉しいおから。飛田さんでなくても、使ってみたくなる食材ですが、日本豆腐協会によると食品として食べられているのは、全体の1%以下だと言います。

その理由は、水分が多くて、足がはやい、から。おからの活用に目覚めた飛田さんが、こんなもったいない話を放っておくわけがありません。

「以前仕事で食べた豚バラ塊肉をおからでゆでて、そのおからで作った“おから煮”がおいしかった」というKさんの話を聞いて、さっそく試作しました。

「豚バラだと脂っぽくなるのが心配で、まずは肩ロースで試してみました。

ところが、心配をよそにバラ肉の脂をたっぷりと吸い込んだはずのおからのほうがおいしいのです! バラ肉をゆでて、一晩置いた時の、鍋一面の白い脂の層はどこにいったのでしょう。不思議でしょうがありません」

「豚塊肉をゆでただけで、やわらかくなって十分おいしかったのですが、もうひと味欲しいなと、豚肉に塩をすり込んで一晩おき、塩豚にしたものを同じようにおからで煮てみました。

塩豚にしたからといっておからが塩辛くなることもなく、いい具合にうまみだけを吸っています。

ゆでた豚肉は、その後角煮を作るなら、豚肉の表面のおからと水分をふきとって調味料と香味野菜で煮ます」

やわらかくなった豚塊肉は、おからつきのままか、拭き取るかしたら、食べやすい大きさに切って、お好みの調味料でお召し上がりください。

さて、主役は鍋に残ったおからです。“卯の花”を作りましょう。実は、今回の「バラ肉を煮た後のおから」から、飛田さん史上、最強の卯の花レシピができたというのです。

「肉好きで、はっきりした味を好む夫は、普段おからにはあまり興味を示さず、一口、二口くらいしか食べないのですが、この豚のゆで汁を吸ったおからは別。丼いっぱい食べました。

本人いわく、“年をとっておからの味がわかるようになったのかも”。いいえ、豚のうまみがよかったんです。

後日、キンメの煮汁で作った優しいお味のおからの方は、“あれ? この前とずいぶん違うね”と、全然箸が進みませんでした。まったく!」。

「あれから何度も作っていますが、夫好みはきのことしょうが入り。ごぼう入りも美味しかったです。あの豚のうまみがあれば何を入れてもおいしくできる。最強の“卯の花レシピ”になりました!!」

スタイリストKさんは、飛田さん考案のレシピでさっそくおからドーナツを作っています。たくさん冷凍保存し、調子がよくないときに解凍してオーブントースターで焼いて食べると翌日すっきり。冷凍庫におからドーナツがあると安心するそうです。

後編「『おから』で絶品ゆで豚までできる!飛田和緒が発見した”史上最強の卯の花レシピ”」では、効果抜群のおからドーナツと、飛田さん史上最強の卯の花レシピを紹介します。

取材・文:相沢ひろみ

「おから」で絶品ゆで豚までできる!飛田和緒が発見した”史上最強の卯の花レシピ”