約5年ぶりとなるニューアルバム『HYDE [INSIDE]』のリリースに先駆ける形で、6月のZepp Haneda(TOKYO) からスタートした全国ツアー『HYDE [INSIDE] LIVE 2024』。6都市13公演を駆け抜け、好評につきアリーナ公演も追加決定。残すところ10月26日、27日の幕張メッセ2デイズのみとなった。2024年、ソロツアーと並行する形で、 “過去イチ”とも言える本数のフェスにも精力的に出演し、さらなる進化を続けるHYDEが、ライヴ開始30分前という異例のタイミングで音楽活動の原動力と自身が考えるアーティストとしてあるべき姿について語ってくれた。

【映像】HYDE、最新の独占インタビューとライヴ映像特集

「自分のときめき」に焦点を当てた長期ツアー

 10月13日(日)、神戸のワールド記念ホールで行われたライヴ2日目の開演直前にインタビューが実施された。開演時間の約30分前、今すぐにでも舞台に上がれる出で立ちで本人が登場した。限られた時間の中、ヒリヒリとした緊張感が漂う中で、まずは今年のツアーについて口を開いた。

「うん、そうですね……今回のツアーは、これまでのライヴからコンセプトを変えて、自分の好みというか、“いま自分がときめくか”ということに特化して作り上げてきました。ツアー名にも『HYDE [INSIDE]』とアルバムタイトルがついてるけど、あえてアルバムの曲は演奏しないのもあったりね。それはあえて温存しておいて、追加のアリーナ公演でお届けするつもりです」

 『HYDE [INSIDE] LIVE 2024』は幕張で区切りを迎えるわけではなく、その後ワールドツアーの続きが待っている。ちょうど取材前日には発表されていた海外公演に加え中国の上海、成都、北京の3都市で4公演を行うことが発表されたばかりだ。

「せっかく5年ぶりにアルバムが出たので、プロモーションも兼ねて色んなところに行きたいですね。ワールドツアーに関してはコロナ禍以降やってなかったし、久々に世界の皆さんともお会いしたいなと。いろんな国の人のリアクションがそれぞれ違うのが楽しいし、『待ってた』っていう声も聞くので嬉しいですね」

今年のフェス出演は国内外含め18本。「アーティストとしての宿命」を気負わず楽しむ

 2019年にもツアーでアジア、アメリカを訪れていたHYDE。「日本の文化は海外で評価されているのに音楽はあまり外に出ない」そんな違和感を覚えているからこそ、軽やかに海外でライヴを行う。目に飛び込んでくるのは新鮮な観客の反応だ。

「なんだろう、海外のオーディエンスは良い意味でだいぶ騒がしいよね(笑)。ついこの間も、中国のフェスに出演したんだけど、僕がステージに出る前からずっと“HYDEコール”をしてくれたし、ヨーロッパとかアメリカだと、毎回曲を大合唱してくれますね。日本だとよっぽどのことがないと見ない光景かなと思います」

 今年のライヴの多さに関しては「プロモーション」とHYDEは口にするが、自身もとことん楽しんでいるように思える。ソロ以外の春、夏フェスなどイベント出演に関しては、まだ行っていないものも含めると18本。中にはL'Arc〜en〜Ciel・kenがサプライズ出演するフェスもあるなど、いま相当な「ハイテンションモード」になっているのではないだろうか。

「一般的に、普段の僕のイメージはラルクにいることだと思うから、ソロとの違いを知ってもらうには、『百聞は一見にしかず』っていうことで、フェスが一番手っ取り早いかなと思ってるんです。次のバンドのために仕方なく観る人もいるので、ファンじゃない人にも届くわけで、その中で興味を持ってくれる人がいたら、もっと広がってくれるわけですし。好き勝手やってるのでコアファンにだけ新しいHYDEを届けても、好き嫌いが分かれて縮小していくだけなので。それが僕のポテンシャルなら納得しますが、聴いてもいないのに決めつけられるのは腑に落ちないですよね。やっぱり作品をなるべく外に広げていくのが、HYDEソロとしての宿命なのかなと思いますね」

「涙が出てきたね」コロナ中に配信ライヴを見て新体験

 冒頭でも伝えた幕張メッセ公演はPPVでも配信される。購入者特典として、新たなコンテンツが付いてくることを先にここでお伝えしておくが、HYDE自身はPPVの醍醐味をどこに感じているのだろうか。

「配信ライヴって、家以外でどこで見るんだろうね? 僕はやっぱり家で、大声で歌いながら見たいよね。裸になって(笑)。これは前も答えたと思うんだけど、コロナ禍中にGASTUNKの配信を家で酒呑んで歌いながら見てたの。そしたら、なぜか涙が出てきたんだよね。その時お酒が入ってたこともあるんだけど、懐かしいのと、音楽って素晴らしいなって改めて気づかされて……結構それは印象深いですね」

 笑い話のように聞いてしまいそうだが、実際に何かしらの事情があって会場に行きたくても行けないという人もいるだろう。そんな人が、幕張でHYDEの初期の曲を聴くと涙するのでは……と返すと

「それはもう、家だったら自由にぜひやっていただきたいですね。幕張公演はツアーの集大成だと思っていて、ファンのみなさんも伸び伸びと、大暴れすることができるんじゃないかっていうセットリストを用意しています。これまで以上に盛り上がれると思うし、このアルバムの完成系を、その日見てくれるファンの皆と構築できたらいいですね」